6月12日が「恋人の日」にちなんで、週刊女性は「昭和生まれ・平成生まれが選ぶ、歴代ドラマ“理想のカップル”」を緊急アンケート。
時代の変遷とともに移り変わる恋愛観は?テレビドラマ、演劇、映画に精通する、フリーライターの横川良明氏に話を聞く。
昭和生まれ(35歳〜64歳)が選ぶ「理想のカップル」1位は『ロングバケーション』から、山口智子&木村拓哉。
「人気絶頂だった主演2人の自然な掛け合いは、まるで本物の恋人のようでした。あのころは今よりずっと女性の年齢に対してシビアだった時代。今でこそ定番となった“年下男子モノ”ですが、当時はまだほとんど前例がなく、女性が年上でも恋愛は成立するんだという斬新さもあったように思います」(横川氏、以下同)
欲望に正直に生きるヒロインたちが好まれるように
昭和生まれのアンケート結果は、往年の名作『東京ラブストーリー』が続く。
「3位の『GTO』を除くと、どれも女性が男性を振り回す構図なのが共通点です。描かれるカップルはみんな等身大で、視聴者は自分を重ねて見ていたように思います」
1986年に男女雇用機会均等法が施行され、女性の自立と社会進出が進む中での変化があったと分析する。
「ドラマでも、男性にかしずく旧態依然とした女性像ではなく、女性主体の恋愛が積極的に描かれるようになりました。そんな中、自分の欲望に正直に生きるヒロインたちが好まれるようになり、自然と相手役の男性は見守り系に設定されるようになったのかもしれません」
圧倒的に男性のステータスが高いのが特徴
一方、平成生まれ(15歳〜34歳)が選ぶ「理想のカップル」の1位は『花より男子』井上真央&松本潤の結果に。
「松本さんが演じた、唯我独尊の俺様キャラでありながら、好きな女の子にはめっぽう弱くおバカな道明寺司のキャラクターは、現在の“ポンコツ”ブームにもつながるところがあります。“おバカな男はかわいい”という新たなジャンルを開拓することに成功。新しい時代のシンデレラストーリーであった点も、同世代の女性たちからの支持を集めたのだと思います」
平成生まれが理想とするカップルに傾向はある?
「平成生まれは“現実は現実、ドラマはドラマ”という思考の切り分けがはっきりできているのでしょう。現実には起こり得ない“非日常の夢物語”としてドラマに陶酔しているように思えます」
たしかに、より少女漫画的な設定のカップルがランクインしている。
「2位の『逃げ恥』を除くと、圧倒的に男性のステータスが高いのが特徴です。'90年代と比べて、より男女平等が進み、経済的に自立する女性も多くなりました。それでもやっぱりどこかで“男性には自分より稼いでほしい”という本音や、時には男性に振り回されたいという願望が見てとれます」
女性が自分の意思で自由に人生を選び取れるようになったがゆえ、今度は逆に有無を言わさず引っ張ってくれる強い男性を求めてしまうのが人間の本能だと続ける。
「こういったお金があってグイグイ引っ張る男性たちに女性が夢を見るのは、優しくフラットだけれど高収入は望めない現実の男性たちに対する裏返しというか、ドラマくらいは強くてお金のある男性にキャッキャしたいという願望の表れと言えるのではないでしょうか(笑)」
理想と現実は違う!
横川良明 フリーライター。1983年、大阪府生まれ。テレビドラマ、映画、演劇などエンタメに関するインタビューやコラムの執筆を幅広く手がけている。著書に『人類にとって「推し」とは何なのか、イケメン俳優オタクの僕が本気出して考えてみた』(サンマーク出版)、『役者たちの現在地』(KADOKAWA)