《息子の車掃除してたら未開封の去年のパン出て来た 恐ろしい事に開けて見たらカビも生えてないし今買ってきた状態(汗マーク)恐っ》
5月末に投稿されたツイートがバズり、物議を醸している。ツイートには山崎製パンが製造・販売する食パン『ロイヤルブレッド』の写真が添えられていた。
山崎製パンからの「正式回答」
食パンは“新品”として棚に並んでいる商品とたいした違いは見られない。しかし、写真に写り込んでいる“消費期限”は《22・8・11》とある。つまり昨年の夏までに食べるように製造された食パンだ。ひと夏、そしてひと冬、車内に放置された状態だったにもかかわらず、新品同様の状態が保たれていたことでこのツイートと写真は耳目を集め、そこにはネガティブなものも少なくなかった。
《去年のパンがカビない!?》
《常温で1年後もカビ生えないのはあまりに不自然》
《これぞまさに添加物のオンパレード》
といった声が寄せられた(当該ツイートについたリプライより引用)。
「一部でネガティブな意見が寄せられた要因としては、“ヤマザキのパンは腐らないように添加物がたくさん使われている”といった都市伝説、陰謀論のようなものがあったからでしょう」(食品ジャーナリスト)
とはいえ、1年車内に放置されたのにカビない理由は。山崎製パンに、その訳や噂を問い合わせると以下の回答があった。
「食パンに付着するカビ胞子の数は、焼成後の製造環境の清浄度合、清潔度合で違いがあり、カビ胞子がまったく付着しないものにはカビの発生がありません。今回のツイートの件については、カビ胞子がまったく付着していないものであったと思われます。
また、食パンは、ロングライフ製品に使用するようなバリア性のある包装紙を使用していないため、日数の経過とともに食パンの水分が徐々に包装紙から蒸発し、カビが生えない水分活性値以下になったことも要因として考えられます」(山崎製パン広報・IR室、以下同)
カビなかった理由は不自然ではない?
では都市伝説的に語られていることについては……。
「食品の腐敗や変敗の原因となる微生物の増殖を抑制し、食品の保存性を高めるために使用される添加物としては、保存料と日持向上剤があります。食パンのカビ発生を抑える保存料としては、プロピオン酸カルシウム等がありますが、当社では食パンの風味等への影響があるため、保存料は使用していません」
日持向上剤については……。
「保存料ほど微生物の増殖を抑制する効果は大きくありませんが、食品の品質を保持する効果があります。食パンの種類によって、使用する原材料の種類、配合の違いから保存性に影響が表れることがあるため、保存試験の結果から、一部製品では日持向上剤を使用していますが、多くの食パンには使用しておらず、ロイヤルブレッドにも使用していません」
カビなかった理由は不自然ではなく、必然的な理屈があり、噂のような添加物の使用もなかった。今回の回答の一部は山崎製パンのホームページにも記載されている。当然、添加物の使用の有無も。にもかかわらず、噂を盲信し、さも製造元が悪い・怖いというようなツイートが散見された。
SNSによって一個人の意見であっても広く流布するこの時代。一般人であろうとその発言には責任を持たなければならない。それは時にいわれなき風評被害につながるかもしれないのだから─。