金属バット(写真左:小林圭輔、右:友保隼平) 写真提供/吉本興業

 かもめんたる・岩崎う大が、注目のお笑い芸人の今後を予想する連載企画。今回の芸人は金属バット

2人から滲み出るパンク精神

 先日『THE SECOND』という新たな漫才賞レースが開催されました。M–1グランプリは、コンビ結成15年以内という芸歴の縛りがありますが、それを卒業した芸歴16年以上の漫才師たちが出場できる大会です。その第1回大会の決勝1発目にネタを披露したのが今回ご紹介する金属バットです

 ロン毛の友保くんと丸刈りで背の高い小林くんのコンビで、2人とも目がランランと輝いた若者です。

 実際、『THE SECOND』出場者の中では、最も若手にあたるコンビなのですが、2人からはそれ以上の若さが感じられます。この若さが彼らの魅力だと思うのですが、それはいわゆるはつらつとしたスポーツマン的な若さとは違うのです。

 というのも金属バットの2人は魔界の漫才師のような姿をしていて、イラストで描くなら死に神と骸骨のような、汗とは無縁のイメージです。

 では、なぜそんな印象のアラフォーの2人の魅力が「若さ」なのかというと、2人からは滲み出る、パンク精神が匂い立っているのです。金属バットのネタは、発想がメチャクチャすごいとかトガっているとか、そういうものではありませんし、内容も伝わりやすく作られています。構造で見るとちゃんとボケるし、ちゃんとツッコんでいます。

 また、金属バットというコンビ名自体に危険な響きがあるように、彼らのネタには、ドキッとするワードが出てきたりします。

 この間で言うと、コロナワクチンの話などが出てきました。しかし、パンクな精神はそこに宿っているわけではないのです。彼らは決してツッパっているわけではなく、むしろその逆で脱力しています。

「なんや。おもんないから、ネタでもやりまひょか」

「なら、こんなんおもろいんちゃう?」

 という声がネタ中に聞こえてきそうな脱力感があります。

 そう、彼らのパンク精神はそのネタへの温度にあると思うのです。彼らのネタ自体が面白いですから、簡単に生み出されているはずがないのですが、彼らはそのネタをなんでもないようにやってしまいます。普通は、あれだけの完成度のネタですから、思いの丈を込めた演じ方をしたくなるものです。なるべく良い状態で届けたいという、下心が出てしまうものです。

「しょせんはネタですやん」

 という半笑いの温度でネタを演じるスタイルが、たまらなくパンクで輝いているのです。

 もちろん、そんな芸風は老若男女に受け入れられるスタイルではありません。しかし、お茶の間の知名度はまだ低い彼らですが、多数の熱狂的なファンを獲得しているのも事実です。彼らのファンはネタというよりも、その彼らのスタイルに魅了されているのではないでしょうか。

 そんな彼らのファンの中には、お笑いはそんなに興味ないけれど、あの2人の雰囲気に惹きつけられているという層がかなりの数、存在していると僕は推測します。

 これはなかなかの強みで、お笑いファンの外からも味方を引っ張ってこられる力が彼らにはあるのです。つまり実は潜在的なターゲットが広いのです。

 彼らは15年以上ネタを磨くとともに、それ以上にそのスタイルを磨いてきたともいえます。そのスタイルに説得力を持たせてきたという表現のほうがしっくりくるかもしれません。

 何が起こるかわからないお笑いの世界ですから、いつ金属バットが老若男女を魅了する時代が来てもおかしくなく、そんなときが来ても15年以上熟成されたそのスタイルはブレないであろうことを断言します。

岩崎う大 1978年東京都生まれ。早稲田大学卒。かもめんたるとして槙尾ユウスケとコンビを結成。キングオブコント2013年優勝。お笑い芸人だけでなく、脚本家、放送作家、漫画家として多彩に活躍中

 

 

マシンガンズ滝沢秀一の妻・友紀さん。大会後、夫は有吉弘行のラジオに出演。有吉からお祝いにと贈られたドンペリと、応援に来た友人が作ってくれたというジャニーズ風うちわ

 

お笑いコンビ・マシンガンズ2人との記念撮影をSNSにアップする鈴木亜美(本人のインスタグラムより)

 

滝沢の妻・友紀さん

 

金属バットの同期には見取り図が

 

東京の同期には渡辺直美がいる('17年2月)
東京の同期にあたるジャングルポケット(『キング オブ コント2016』大会開催会見)