「香水がランジェリーを纏うように日常になれば素敵だなと思いました」
最新作『魔女の香水』(6月16日公開)で謎めいた調香師・弥生を演じている黒木瞳。希望を見失った恵麻(桜井日奈子)に香りで人生の指針を示し背中を押していく。
「女性が前向きになれて応援できるような映画を作りたいと宮武(由衣)監督から伺っていて、どのような脚本になるのか楽しみにしていました。香水がモチーフの今までになかった作品で斬新だと思いました」
宝塚時代につけていた香水
“何事も楽しむ”“相手の心を想像する”“無限の力”“恋愛は学び”“伝説を作れ”“時代に革命を”“目先の利益より未来の財産”“ピンチはチャンス”“愛する人のために”をテーマにした9つの香りが登場する。
「“勝負香り”みたいに香水によってその日を彩ることができるのは面白いと思います。ランジェリーみたいでエロチックさもこの映画で感じました」
弥生は、シルバーヘアの見た目とともにミステリアスな雰囲気を漂わせている。
「これまで演じたことがないキャラクターで容姿も含めて新鮮でした。人のことを思い、アドバイスができる素敵な女性ですが、実は心に傷を抱えている。そういうバックグラウンドがあるから導ける言葉を言える人だと思います」
アンティークなショップも魅力だ。
「貴重なビンテージの香水がディスプレーされていて圧巻でした。香水の持つ神秘性さやパワーを感じました」
香水が人を幸せにする作品だが、経験したことは?
「香水が好きなので、ずっとつけています。宝塚時代はイヴ・サンローランのリヴゴーシュ。その香りをかぐと宝塚時代を思い出します。退団後は別の香水をつけていたのですが廃盤になったので、自分にフィットするものを探してつけています。甘い香りが好きです。香水をつけ忘れたときは、忘れ物をした感じになります」
自身が魔女っぽいと思うことは?
「ないですね(笑)。自分で言うのもなんですが竹を割ったような性格なので、ミステリアスな役をいただくと、どうしようと思ってしまいます」
宮武監督とは、ドラマ『ファーストラヴ』(NHK)で組み、信頼を置く。黒木も監督として『嫌な女』『わかれうた』『十二単衣を着た悪魔』『線香花火』の4作品を手がけている。
「監督という特別な捉え方はしていません。監督の機会に恵まれたなかで、スタッフや製作サイドの大変さを女優のときよりも肌身に染みて感じましたし、今まで以上に感謝するようになりました」
「完璧じゃなくてもいい」
宝塚の娘役トップから転身して38年。人気女優として活躍するとともに家庭や子育てを両立させてきた。
「両立はできていないですよ。家族やスタッフに支えてもらいながら、そのときの優先順位を考えてやってきました。大正時代の歌人の三ヶ島葭子さんは結婚して子どもを産み、働くのもいいと。
そのためにはどうするのがいいのか。24時間ではなく1時間が無限に広がっていると思えばいいと本に書いていました。例えば夫や子どもと1時間しかいられなくても、その1時間が自分にとって100時間だと思えば質のいい1時間になる。
そういう考えや意識を持てば完璧じゃなくてもいいと思えるようになりました。三ヶ島さんは子どものためだけに生きるお母さんではなく、自分のために生きることが、子どものために生きることにつながるという考え方をしていて、すごいと思いました」
良妻賢母が標榜された大正時代の女性に、現代女性の黒木が背中を押された。
●この夏いちばん行きたい場所は?
写真撮影中にフォトグラファーがかけた言葉に「ハワイ。海がいちばんきれいで気候も過ごしやすいからです。泳げないけど素潜り(シュノーケルも足にフィンもつけない)をします。海中になかなか沈まないので難しいですよ」と黒木。
●映画に登場する香水が商品化
9つの香水のうち“相手の心を想像する”“無限の力”“恋愛は学び”“伝説を作れ”“目先の利益より未来の財産”“ピンチはチャンス”の6つが販売される(各3000円税抜き)。
「私も楽しみです。状況に合わせて試してみたいです」(黒木)
撮影/渡邉智裕 ヘアメイク/在間亜希子(MARVEE) スタイリスト/大迫靖秀