「何百年後かに“古典歌舞伎”としてみなさんに愛され、後輩たちがやりたいと思ってもらえるような作品として残ることを意識しながら作っていきたい」
世界的大ヒットゲーム『刀剣乱舞 ONLINE』を原案とする新作歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』が、7月2日から東京・新橋演舞場で上演される。中心的キャラクターとして出演するだけでなく舞台の演出も担う尾上松也は公演に向けた意気込みを語っているが、一部からは不満の声が上がっていた――。
歌舞伎特有の“ルール”
『刀剣乱舞』は、昨今の刀剣ブームの火付け役となったオンラインゲーム。プレイヤーは名だたる刀剣が戦士に姿を変えた「刀剣男士」を率いて、歴史改変をもくろむ敵と戦う“刀剣育成シミュレーションゲーム”だ。
「舞台作品やアニメ化・映画化もされていて、女性ファンを表す“刀剣女子”という言葉は2015年に新語・流行語大賞にノミネートされるなど、以前から女性を中心に絶大な支持を集めています。特に舞台はいわゆる“2.5次元”作品で、出演する俳優陣もアイドル的人気を誇っています」(演劇雑誌ライター)
そんな人気作品の歌舞伎化は、略称から「とうらぶ歌舞伎」とも呼ばれ大きな話題となっているが、いったい何が不満の種になっているというのか。
「“とうらぶ歌舞伎”は、歌舞伎ファンと刀剣乱舞ファンの両方が観劇を望む舞台。当然、チケットには両方のファンが手を伸ばすことになりますが、そこで歌舞伎界特有の販売方法に対して困惑の声が寄せられているんです」(イベント制作会社関係者)
特有の“ルール”はというと……。
「騙し討ち」「ドブ席」「ハズレくじ」
「通常、刀剣乱舞の舞台作品の場合、チケットはまず各種ファンクラブなどの先行販売、次にチケット販売サイト等の先行販売、そして最後に一般発売という形で売り出されていきます。席の良し悪しはランダムで、値段によってある程度のランクは選べるものの、細かい指定はできない。なんとしても公演を見たい人は、より早い先行からチケットを購入しようとします。
ところが、歌舞伎の公演では“売れ残りやすい席を、せめてそのぶん早く確保できるよう先行販売する”という通例があります。また、一般販売では残っているところから席を指定できます。今回はあくまで歌舞伎作品なので、販売方法はこちらのルール。その結果、刀剣乱舞のファンがいつもどおり張り切って先行で購入したところ、後ろや端のほうの席が多く、逆に一般販売から参加した歌舞伎ファンにとっては“後ろや端ばかり埋まっていて、あまり取り合いにならずいい席が取れた”という事態に。怒りを覚えた刀剣乱舞ファンから“歌舞伎ファンはコネでいい席を取っている”という声が上がるなど、状況は混迷を極めています」(同・イベント制作会社関係者)
ツイッターでは刀剣乱舞ファンから、
《騙し討ちされた気分。新規には難しい…高い勉強代でした》
《先行なのにドブ席。取り方は最低限わかるようにしてほしいし、今後歌舞伎を観に行こうと思えない》
《初見がみんな先行で申し込むの分かってて、ハズレしかないくじ引かされてたって事でしょ? ただの金ヅルとしか見てないし、歌舞伎にはもう刀剣乱舞に関わってほしくない》
などの声が上がり、大炎上。これには歌舞伎ファンも反応したが……。
「当初は歌舞伎ファンも今回の事態をよく理解できておらず、一部の人が刀剣乱舞ファンに“いい席がまだ残ってるけど、なんで取っていないの?”と声をかけてしまい、怒りを買うことに。また、中には後ろや端の席にもそれぞれの魅力があることを説く人もいましたが、これも“席の格差”による不満を逆撫でして火に油をそそぐ結果になりました。歌舞伎の世界に関する刀剣乱舞ファンの“予習”が足りなかったことも原因でしょうが、運営側もチケットの販売方法をもっとわかりやすく事前に説明するべきだったかもしれません」(前出・イベント制作会社関係者)
松也の望むように「語り継がれる」のは、作品のクオリティか、それとも――。