「孫娘がこんな事件を起こしてしまい、申し訳ありませんでした。だけど、絶対に意図的ではなく事故なんです!」
と容疑者の祖父は声高に訴えたーー。
長野県警松本署は8日、同県松本市の配達員・斉藤優花容疑者(25)を保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕した。今年3月24日、2歳の息子・來心(らいしん)くんを油類が浸透した布団の上に一定時間、放置して、炭化水素中毒と皮膚炎で死亡させたというもの。
「容疑者は家を空けていたがその後、帰宅した夫が布団の上で倒れている來心くんを発見して119番通報。近くの病院へ搬送されたのですが、手遅れだった」(全国紙社会部記者)
容疑者は警察の取り調べに対して「ストーブを倒し、灯油をこぼした」と供述するも、容疑自体は否認しているという。
優花容疑者はもともと松本市の生まれ。地元の公立中学校を経て、公立高校へ進学して吹奏部に所属していたという。
「活発で、物事をはっきりと言う性格。見た目はギャルでしたね」(高校の同級生)
ずっと雨戸を閉めっぱなしの変わったお宅
高校卒業後はフリーターなどをしていたが、およそ3年前に結婚。トラック運転手の夫、長男の來心くん、次男とともに、同市郊外の築26年、2階建てのアパートで暮らしていた。間取りは1LDK、家賃は月6万円ほど。子育てに奔走していたためか、近隣住民との付き合いはほとんどなかった。
「たまに見かけたときは、今どきのおしゃれなヤンママという感じ。でも、ずっと雨戸を閉めっぱなしの変わったお宅だと思っていました」(同アパート住人)
深夜、まだ小さい來心くんを抱いて散歩する姿も目撃されていた。
「夜中に連れ出すなんて、常識がないわよね。雨戸が閉めっぱなしなのは、子どもを虐待する声が聞こえないようにしていたんじゃないの」(同アパートの別の住人)
この事件をきっかけに、近隣では容疑者の育児にまつわる悪い噂が広がるように。
だが、虐待や育児放棄は実際にはなかったようだ。13日に行われた臥雲義尚(がうん・よしなお)松本市長の定例記者会見によれば、
「松本児童相談所も、市役所も虐待に関する報告は受けていない」
とのことだった。捜査関係者からも、
「警察もそういった通報は受けていない」
という証言を得ている。
雨戸閉めっぱなし、背景に來心くんの持病
事件現場のアパートから4キロメートルほど離れたところに容疑者の実家がある。冒頭の祖父は“今回の事件が事故である”と言い切れる理由について、こう説明した。
「來心は生まれつき心臓病と、直射日光を浴びてはいけない皮膚炎がある子でね。優花(容疑者)は母親として、ずっと懸命に病院通いを続けていたんですよ。ものすごく可愛いがっていなければできないこと。
そんな溺愛するわが子を故意に殺すはずはない。來心が死んだときは気丈に振る舞っていたけど、心の奥底ではどんなにか泣きじゃくっていたはずです」
祖父は「過失致死が妥当な罪状」
事件は夫が仕事から帰宅しておらず、容疑者と子どもしかいないときに起きた。
「あくまで推測ですが、ストーブを倒して、床にこぼれた灯油を拭いたけども、布団にしみ込んでいたことに気づかなかったんじゃないかな。そのあと、優花は來心を置いて1、2時間ほど買い物にでも出たんだと思う。だけど、窓を閉めて切っていたし、來心の病気もあったから、あんなことになってしまった……。ただ優花のミスであることは間違いない。私は過失致死が妥当な罪状だと思う」(祖父、以下同)
だが、警察の逮捕容疑は保護責任者遺棄致死。幼い子どもなど要保護者を保護する責任があるにもかかわらず、遺棄・不保護によって要保護者を死亡させてしまう罪で、祖父のいう過失致死傷罪より重い量刑だ。
警察は來心くんの病気のことを十分理解した上で、事件発生から2か月以上を要して逮捕に踏み切っている。はたして、警察の判断が正しいのか、祖父の思いが正しいのか……。
祖父にとって容疑者は“宝物だ”という。
「孫はあの子しかいないから。“子どものおもちゃが欲しい”とか“ベッドから子どもが落ちないようにするネットを買って”とか……。よくねだられて、買ってあげていた。自分のものは一切ねだらないくせにね。とてもいい母親だったと思います」
今後の捜査で真実が明らかになっていくに違いない。