柏原芳恵 撮影/佐藤靖彦

 アイドル歌手全盛期の'80年にデビューし『ハロー・グッバイ』などのヒット曲で知られる柏原芳恵。歌手・女優として活動を続けてきた彼女が令和の今に音楽番組の初冠MCに挑戦した。自らを“微笑みプレゼンター”と語る柏原の“これまでとこれから”を聞いてみると―。

DVDとか見ても覚えていない映像ばかり

私、けっこうボーッとしてることがあるのですが、気がついたら日本テレビ系の『スター誕生』に出て、スカウトされて、デビューしてって感じなんです。それでも続けられたのはファンの方々や、これまで出会ったスタッフに支えられたからだと思います。感謝しかありません
 
 アイドル全盛期とされる1980年代を駆け抜けた柏原芳恵は、デビューからこれまでをこのように振り返る。
 
 当時10代でありながら『ハロー・グッバイ』や『春なのに』など、切ない失恋ソングを歌い、大人の魅力も持ち合わせていた柏原は多くのファンを獲得。今なお語り継がれるアイドル歌手の一人だが、今年1月からケーブルテレビJ:COMで『柏原芳恵の喫茶☆歌謡界』のMCに挑戦している
 
「単独レギュラーMCは初かもですね。特番や音楽祭でやらせてもらったことはありましたけど」
 
 番組で柏原は喫茶店のオーナーとして、歌謡曲世代のミュージシャンをゲストに迎え、トークと歌を披露。本人いわく、慣れないながらも“ワクワク、ドキドキ”
の連続だという。
 
「企画が楽しそうと思ったし、視聴者の方に楽しんでいただきたいと思いました。番組のキャッチフレーズが“こんなMC見たことない”なのですが、みなさん新鮮でおもしろいと言ってくれています。楽しみながら精進していきます(笑)」
 
 この番組は、目まぐるしく変わる昭和の芸能界を生き抜いた彼女にとって、ゲストとゆっくり話せる貴重な機会でもある。
 
ゲストのみなさんとは面識はあるんですけど、収録やテレビ局ですれちがった際の挨拶程度で、ほとんど話したことのない方ばかりなんです。当時の芸能界って忙しすぎて、ひとつひとつの仕事を覚えていないって方が多いんですよ。私も自分の記念DVDとか見ても、覚えていない映像ばかりです
 
 ずっと話したかった大先輩とも交流を深められた。
 
「ゲストのみなさまは素敵な方ばかりでしたが、山本リンダさんのかわいさや迫力、純真さには刺激を受けました。海援隊のみなさんもゲストで来てくださって、大先輩なのにすごくアグレッシブで“私もまだまだだなー”って思いました!
 
 柏原の歌に対する熱い思いは今なお尽きない。
 
「女優としてサスペンスドラマにたくさん出ていた時期もステージに立ち続けていましたからね。歌からは離れたことはありません。サスペンスドラマって撮影期間が短く、その分ハードスケジュールでしたが、コンサートの日程と重なるときは、撮影現場から飛んで帰って、コンサートに出てまた撮影に戻るみたいなスケジュールでした。コロナ禍を除けばディナーショーも続けていますから、ずっと歌中心の活動なんです
 
 歌手以外にもマルチに活動を広げていった経緯も話してくれた。
 
私の場合はマネージャーから“次は女優ね”って。もう決まっていたんですよ。私の意見を聞かれもしない(笑)。15歳でコンサートを経験してから、これまでドラマ、映画、Vシネ、写真集とか、いろいろやらせていただきました。頑張ってた芳恵ちゃんを褒めてあげたいです(笑)

『春なのに』をお気に召していた陛下。コンサート後には、柏原と懇談も(本人提供写真)

若かりし天皇陛下がピンクの薔薇を持参

 さまざまな肩書を持つ柏原ではあるが、自身を“アイドル”と語るのには躊躇しているという。
 
私の中ではアイドルとは自分で言うべきではないと思っているんです。わが家のアイドルとか、学園のアイドルとか、自分以外の方が言ってくれるのがアイドルだと思っています
 
 とはいえ、アイドルとして多くの人を魅了した柏原。若かりし天皇陛下もそのお一人で、'83年の記者会見では彼女のファンを公言。'86年の10月に新宿で開かれた柏原のコンサートには陛下自ら足を運ばれ、その際に東宮御所の庭からピンクのバラを持参して柏原に贈られたことは大きな話題を集めた。
 
「中学生だった当時の私でも天皇は国の象徴ということは教科書で知っていましたが、雲の上の存在というか遠すぎて実感が湧きませんでした。

 テレビ局の皇室担当の方から“(当時の)皇太子さまは芳恵ちゃんのファンでシールを私物に貼ったり、本とかエッセイも買われているそうだよ”と聞かされて“買い物とかされるんだ”と思ったことを覚えています。コンサートにはラフな格好で来てくださって。“開かれた皇室”というのを身近に感じることができました。プレゼントでいただいたバラは今でも大切にしています
 
 そんな柏原だが、デビュー当時と変わらないスタイルを今でもキープ。いったいどんなプライベートを過ごしているのか。恋愛面については“ご想像にお任せします”としながらも、現在の私生活を明かしてくれた。
 
健康に気をつけなきゃとは思っているんですが、最近はダラダラしているんですよ。以前はスポーツクラブに通って、スカッシュをやったり、ランニングマシン、筋トレ、プールなどひと通りやっていたんですけどね。コロナ禍になってから休んじゃって
 
 一時は新型コロナウイルスの影響により、仕事面でも思うような活動ができなかった柏原だが、新しいことにチャレンジする意欲は衰えない。
 
「この番組MCみたいに、初挑戦になるような仕事もまだまだやりたいです。ファンの方をいい意味で裏切りたいし、それで喜んでくれる方もいるんじゃないかなと思います。私に何ができるかはわかりませんが、いつまでも“夢と微笑みと遊び心”を持ち続けたいですね
 
 7月15日には、神奈川県のハーモニーホール座間にて、『喫茶☆歌謡界』の名を冠したコンサートの開催を控えている。
 
これまでのコンサートと違って、番組の世界観でのステージは初めてですから楽しみです。ゲストに錦野旦さんやりんごちゃんが来てくださるんですが、どんなトークが飛び出すか期待していてください!
 
 自身を“微笑みプレゼンター”と語る柏原。彼女の歩みはまだ止まることはないようだ。

 

陛下から贈られたバラとともに。処理をほどこして'23年現在も厳重に保管しているそう(本人提供写真)

 

最近は運動をしていないと語るも、スマートな体形を維持 撮影/佐藤靖彦

 

『春なのに』をお気に召していた陛下。コンサート後には、柏原と懇談も(本人提供写真)

 

『柏原芳恵の喫茶☆歌謡界』の収録後に、インタビューに応じた柏原 撮影/佐藤靖彦

 

'86年10月、ファンだったという歌手・柏原芳恵のコンサートを鑑賞された浩宮さま(当時)。花束を用意して、柏原と懇談された。
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