国際ロマンス詐欺という言葉を耳にするようになって約3年、被害はどんどん拡大している。
増加する国際ロマンス詐欺の被害者
国民生活センターによると、国際ロマンス詐欺に関する相談件数は'19年度の72件から'20年度には678件、'21年度には1701件へと跳ね上がった。
「イケメンや美女の写真をネットで拾って勝手に使用し、インスタグラムなどの偽アカウントを作る。メッセージのやりとりを重ねて相手を信用させ、詐欺の入り口に立たせるのです」
と、明かすのはノンフィクションライターの水谷竹秀さん。水谷さんは自身の著書『ルポ 国際ロマンス詐欺』(小学館)で、詐欺にあった複数の被害者を取材し、自身も詐欺グループと対峙した経緯を書いている。水谷さんは続けて、
「なぜ会ったこともない人間にお金を渡すのかと不思議に感じますが、人生でうまくいかないことが重なったタイミングで犯人からアプローチをされ、心の隙間につけ込まれる。そして気がついたら引き返せなくなっている」
と被害者の心理を明かす。
都内近郊で夫と大学生と小学生の娘の4人で暮らす主婦の陽子さん(仮名・40代)もその被害者のひとりだ。
モラハラ気質の夫と離婚を悩む日々の中、インスタグラムにコメントが届いた。
「ジェスと名乗る男から“君の料理は美しい”など歯の浮くようなメッセージが届きました。相手のインスタにいくとフランス人のイケメンで、共通のフォロワーさんがいたことで信用しちゃって」
その日のうちに2人はやりとりをLINEに移していく。
詐欺犯人の巧妙な手口
詐欺犯に多い手口として矢継ぎ早にLINEなどでメッセージを送り、相手を麻痺させていくという手法がある。陽子さんも出会って1日目だというのに、数分おきに交わされるLINEで、男を近い存在だと感じるように。
「3日目には最初の5万円を振り込んでいました。投資話を持ちかけられたんです」
なぜ?と言いたくなるが、男性からは投資の手続きが完了すればデートができると持ちかけられたためだという。
「会えばどうにかなると思いました。その日までは相手の言うことを信じようと思ったんです。さらに生命保険のお金を解約するよう言われて、650万円を振り込んだんです」
最初のコンタクトからわずか1週間以内の話である。大金を振り込んだ結果は……。
「私からこれ以上お金を引き出せないとわかったのか、急に“会えない”と言われて」
気づいたらジェスのLINEアカウントは退会。連絡はとれない状態に。
「騙された私が悪いけれど、相手のことは許せない」
と、傷は癒えないままだ。
なぜこんなお粗末な詐欺にひっかかってしまうのか。前出の水谷さんは、
「パチンコの感覚に近いのかもしれません。負けてるけど引き返せない。損を認めたくないから、相手の要求どおりに振り込み続ければ、回収できると錯覚させられる。だから振り込んでしまうのです。私が取材した被害者も最高額で4600万円をわずか2週間で失っています」
国際ロマンス詐欺を見抜く方法はあるのか。
「まず彼らは絶対に会おうとしません。やりとりの最中に第三者も必ず出てきます。あと彼らはボロが出るからか、電話でのコミュニケーションは極力とりたがらない。
冷静になればおかしいことだらけですが、それでも被害者が生まれるのが国際ロマンス詐欺なんです」