かもめんたる・岩崎う大が、注目のお笑い芸人の今後を予想する連載企画。今回の芸人は囲碁将棋。
「この2人は面白い人間だ」と直感
先日フジテレビで行われた『THE SECOND』という大会で、活躍した囲碁将棋を紹介したいと思います。まあ、お笑いファンや業界の人間で囲碁将棋を面白くないという人はいないと思います。
もちろん芸人も含めての話です。僕も初めて囲碁将棋のネタを見たときから「ああ、この2人は面白い人間だ」と直感しました。2人は完全に漫才師でコントをやってるところは見たことがありませんが、最近ではツッコミの根建くんの奇人ぶりなどがバラエティー番組でもハマり始めています。
漫才のスタイルとしてはボケでネタの制作者である文田くんが屁理屈をこねていくようなネタなのですが、とにかく着眼点が素晴らしいのです。
例えば、このあいだ『THE SECOND』でやっていたネタですと、文田くんが「芸人たるもの、モノマネのひとつぐらいできたほうがいいと思うので、モノマネひとつもやったことないんだけど、ちょっとやらせてみてください」という内容から始まります。
ツッコミの根建くんが「たしかにおまえのモノマネ見たことないや」と、その提案を受け入れると、文田くんが「じゃあ、やります。『街で買い物している様子がとても毎日がスペシャルとは思えない竹内まりや』」と言ったところで、「生意気だわ」とツッコまれます
なかなかすごいですよ、これは。わずかな間に面白さがたくさん詰まっています。すごすぎるので解説しましょう。まずツッコミの対象となっている初心者のくせに生意気なモノマネをしようとしているボケ、しかし、実はその前に、「凝ったモノマネする前の気の利いたタイトルコールちょっと笑っちゃうよね」という視点が入っていて、そしてさらにその「タイトルコールの大喜利」というトリプル、細かく言うとタイトルコール時のちょっと抜いた感じの言い方とかもちゃんと入っているのです。
それを「生意気だわ」のひと言でツッコむという、いきなり面白さトップギアのスタートです。そもそも「生意気なモノマネ」なんて概念なかったですよね。それがこのわずかなやりとりのうちに共有されちゃうわけです。
同業者からすると「あ、やばい」これはちゃんと見ないといけないネタだとセンサーがビンビンに働くと思います。
「見逃しちゃいけないやつだ」という、気持ちが働くと同時に、
「ここからちゃんと面白さをキープできるのか??」
と心配な目線も入るかもしれません。しかし心配無用、彼らはそれをしっかりキープして超えていくのです。
気になった方は、彼らの公式YouTubeチャンネルでご確認ください。そこで上がっている絶景漫才という景色の良いところでネタをやる姿はアートのようであります。とにかく笑いのセンスが抜群です。
囲碁将棋のネタは本当に丁寧に作られていると思います。情報量もとても多いです。だから一度見たネタでも、毎回面白く見ることができます。本とかでいうとリサーチをたくさんかけて作られた文献のような、重厚さがあります。
ネタを見ながらこんなのどれだけ時間をかけたら作れるんだろうと、その背景に手を合わせたくなることがあるぐらいです。
囲碁将棋のネタでしか味わえない深い面白さをぜひ体験してほしいです。また、そんなネタをやる2人ですから面白くない人間のはずがありません。
お笑い界の新たなパイオニアとなりうる2人の活動から目が離せないと宣言しておきましょう。
岩崎う大 1978年東京都生まれ。早稲田大学卒。かもめんたるとして槙尾ユウスケとコンビを結成。キングオブコント2013年優勝。お笑い芸人だけでなく、脚本家、放送作家、漫画家として多彩に活躍中