とにかく明るい安村が復活した。
英国の公開オーディション番組『ブリテンズ・ゴット・タレント』に出場。「TONIKAKU」の芸名であのハダカ芸を披露して、決勝まで残り、優勝すれば国王の前で披露できるという快挙まであと一歩と迫った。
それこそ、大谷翔平の二刀流が米国で通用したように、安村のハダカ芸も英国でウケたわけだ。
お笑い好きの米国人、デーブ・スペクターは、決めゼリフの「物足りない英語」が幸いしたと分析。英国バージョンでは「Don't worry(安心してください)」のあと「I'm wearing(はいてますよ)」と続けられるが、これだと目的語がないため、観客が「Pants!」と叫んで完成させるというスタイルに変わった。おかげで会場が一体化する効果が生まれたのだという。
大スターのように帰国も
なお、あの芸はもともと、安村が渡辺麻友(当時、AKB48)の写真集表紙から思いついたもの。AKBが生み出した一発屋はキンタロー。だけではなかったのだ。
そして、微笑ましく感じられたのが帰国後の姿だ。14日には『ラヴィット!』(TBS系)に登場して、海外の大スターみたいに振る舞うことで笑わせようとしたが、それほど面白くはない。ハダカ芸以外はいまひとつになってしまうあたりが、いかにも一発屋らしさなのである。
ちょうど同じ日、裏の『DayDay.』(日本テレビ系)には、にしおかすみこが登場。介護についての本を出したということで、
「母が認知症で、私は一発屋」
と、笑いにしていた。自分がどこまでも一発屋なことを本人が認めているところが、なかなか清々しい。
そういう意味で、安村の生き方(というか、扱われ方)も一貫している。
日本でブレイクした翌年には、元カノとの不倫が発覚。地元・北海道で再会して盛り上がり、ホテルに行ったところを文春砲に撃たれ「安村がパンツを脱いだ!」などと書きたてられた。
さらに連日、不自然なポーズをとり続けていたことから腰を痛め、椎間板ヘルニアで入院。それもあって、16キロ減量したところ、あの芸にはややそぐわない体形になり「芸も減量した?」と皮肉られてしまう。
一発屋の法則
ただ、彼の不倫は忘れられるのも早かった。折しも「ゲス不倫」の年で、ベッキーやら宮崎謙介やら、彼よりもインパクトのある騒動がめじろ押し。また、ヒマになったことで、元の体形に戻っても、腰への負担は軽減した。
ちなみに『一発屋芸人列伝』(山田ルイ53世)には不倫騒動について、
「正直、2016年はまだ普通にテレビに出られるだろう、その次の年からが勝負、と考えてたら、いきなり出鼻をくじかれた」
という安村の言葉が出てくる。
が、実はこれもよかったのだ。ブームが短いと、そのぶん消費されないで済む。その点、今回のブームも長続きはしないだろうし、なにぶん、遠い異国でのことだ。
時々ちょっと思い出してもらえるくらいが長持ちするというのが、一発屋の法則なので、安村もしばらくは安泰だろう。
しかも、あの芸が海外でもウケることがわかった。といいつつ、米国ではパンツのことを「アンダーウエア」と呼ぶので英国バージョンは使えないとか、韓国ではハダカがNGなので全身タイツでやらなくてはならないとか、いろいろ難しいようだが─。
とりあえず「世界の一発屋」も夢ではない。
ほうせん・かおる アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。