6月16日に東北新幹線「はやぶさ」の車両で、貨物を大量に運ぶ「貨客混載」の実証実験が行われた。今回は約600箱の荷物を3両に分け、1車両につき約200箱前後の荷物を積載したという。この実験は、トラック運転手の不足による物流危機「2024年問題」の解決に向けた取り組みで、将来的な定期運行を目標に掲げている。しかし、鉄道ジャーナリストの枝久保達也氏によると、いくつかの課題がありそうだ。
将来性はあるが…
「新幹線での輸送は、質という点では優れています。速さを要するもの、定時に届けたいものを運ぶには合理的。鮮度が大事なものなどにもいいでしょう。ただ、トラックで運ぶよりも、料金は高くなるかもしれません。また、コロナ禍で乗客数が減った埋め合わせとして荷物を輸送し、新たな収益を見込んだという面もあった。しかし、乗客数が戻ってきたので、貨物用車両の確保ができるかも懸念されます」(枝久保氏、以下同)
2024年問題にはどう影響するのか。
「将来性はあると思いますが、すぐに解決策のひとつになることは難しいでしょう。鉄道ではトラックのように小回りが利かない。駅から目的地まで運ぶトラックとの連携なども課題になるのでは」
「2024年問題」に間に合う?
これらの問題点を、JR東日本に投げかけてみた。コロナ禍を経て、乗客数が戻ってきたことに対しては、
「2017年から列車による荷物輸送のサービスを開始しています。当初は、ターミナル駅で実施している産直市を活性化させるための取り組みでした。物流危機、地方創生、環境問題といった社会的背景を踏まえながら、ビジネスとして本格展開することを決定しました。
現状、旅客数が戻りつつありますが、貨客混載による旅客と荷物のすみ分けを、繁忙期等も考慮した上で可能な限り推し進めています。かつ、今回のようなトライアルも複数回重ねて、新幹線輸送の新たな可能性を模索していきます」(JR東日本・藤原さん、以下同)
「2024年問題」は働き方改革関連法の「自動車運転業務における時間外労働時間の上限規制」が適用されることで起こる。法律が施行される2024年4月には冒頭の新幹線による貨物輸送が可能になっているのか?
「既存の鉄道インフラを活用した今回のようなトライアルを繰り返し行うことで、現在より少しでも多くの荷物を輸送し『物流の2024年問題』等の社会課題解決の一助となるよう努めます。また、2024年以降もますます厳しくなるとされる物流業界の課題解決に向けた取り組みを引き続き行います」
新幹線による貨物輸送は、トラック輸送のように小回りが利かない点についてはどう考えているのか。
「列車による荷物輸送を主軸とし、その前後の荷主や販売箇所等へのトラック配送については、『はこビュン』事業の主体でもあるジェイアール物流との連携を現在も行っています。今後も鉄道輸送とトラック輸送のそれぞれの良さを生かした輸送を行い、事業拡大に向けて取り組んでいきます」
新たな試みはまだ始まったばかり。今後の新幹線輸送の可能性に期待したい。