「終わりよければすべてよし」――春ドラマが相次いでラストを迎える中、振り返ってみれば名作と呼ばれるドラマはすべからく心に残る最終回があった。逆に最終回ががっかりだったら、それまでがどんなに盛り上がっていても作品の印象は悪くなる。そこで、全国30~60代の男女1000人に「平成以降に放送された連ドラの中で、最終回が最高だった作品は?」というアンケートを実施。数々の名作の中から、支持を得た作品とは……?
やはり歴代最高視聴率(平成以降)作品は強かった。
最高な最終回のドラマ、1位は『半沢直樹』
1位は誰もが納得の『半沢直樹』('13年、'20年 TBS系)だ。「シーズン2の最終回で7年越しの伏線が回収されたのは素晴らしかった」(神奈川県・56歳女性)、「なんといっても大和田常務(香川照之)の土下座でしょ」(兵庫県・43歳男性)という声が寄せられるなど、シーズン1、2それぞれの最終回が印象的だった。ドラマウォッチャーで漫画家のカトリーヌあやこさんは、
「『倍返しだ!』という決めゼリフがあって、最後にちゃんと倍返しする爽快感が一番の魅力です。特に1作目の最終回は大和田常務が土下座するのかどうか日本中が注目する中で、ためにためた土下座が炸裂!
香川さんの歯ぎしりが聞こえてきそうな渾身の演技が素晴らしかった。ただ、続編が期待されますが、現実世界で香川さんにはセクハラ土下座案件、『詫びろ詫びろ詫びろ』でおなじみ伊佐山役の市川猿之助さんもまだ渦中ですし、 “どうする半沢直樹!?”状態になってしまっているのが残念」
と、現実との妙なリンクを悔しがる。
2位は恋愛ものの不朽の名作『東京ラブストーリー』('91年 フジテレビ系)がランクイン。名作を名作たらしめているのは、皆の心に残るあの最終回があったから。「後ろ髪を引かれつつ、それぞれの道を歩んでいくラストがいい」(神奈川県・50歳女性)、「電車の中でのリカ(鈴木保奈美)の号泣でこっちの涙腺も崩壊しました」(大阪府・55歳女性)
「結局、カンチ(織田裕二)は“おでん女”と呼ばれたさとみ(有森也実)と結婚し、別れたリカは前を向いて新たな一歩を踏み出す。恋愛の成就だけがラブストーリーの結末じゃないんだというのが新しかったし、何より鈴木保奈美さんが可愛くて……みんなが応援していたからこそ、ラストの切なさが心に刻まれました」(カトリーヌさん)
3位に入ったのはタイムスリップものであり、医療ものであり、ラブストーリーでもあるという贅沢で複雑な題材を見事にまとめ上げた『JIN-仁-』('09年、'11年 TBS系)。
「奇想天外な物語だったが最後は落ち着くべきところに落ち着いた」(東京都・49歳男性)などアンケートでは評価する声が多かった。
「歴史改変ものなのにラブストーリーとして見事に着地。ドラマは原作よりも南方先生(大沢たかお)と咲(綾瀬はるか)の純愛部分を膨らませたからこそ、名作として愛され続けているんだと思います」(カトリーヌさん)
2、3位と切な系の最終回が続いたが、ラブストーリーの王道は、やはりハッピーエンド! 4位の『101回目のプロポーズ』('91年 フジテレビ系)は数多くの名ゼリフ・名シーンを生み出したラブストーリーの大傑作。「浅野温子さんがウエディングドレスで走ってきて、武田鉄矢さんに逆プロポーズするところが最高でした!」(岐阜県・44歳女性)など称賛する人も多かった。
「『僕は死にましぇん!』という武田鉄矢さんのセリフが印象的ですが、あれは“100回目”のプロポーズなんですよね。で、最終回の温子さんからのプロポーズが101回目。工事現場に落ちていたナットを指輪代わりにして、そこでガツンと主題歌『SAY YES』が流れる……ロマンチックかつ、とてもきれいにまとまったラストでした」(カトリーヌさん)
視聴者の心に深く刻まれる最終回とは!?
5位には『101回目~』と同じ野島伸司脚本の『高校教師』('93年 TBS系)がランクイン。列車の座席で真田広之と桜井幸子が肩を寄せ合い目を閉じているというあのカットは、ドラマ史上最も有名なラストシーンといっても過言ではないだろう。
「純愛を貫いた2人の衝撃のラストシーンを思い出すと、今でも胸が締めつけられます」(東京都・40歳女性)、「生きているのか死んでいるのかを視聴者の判断に任せたところがいい」(埼玉県・57歳男性)と曖昧で意味深なラストゆえ強く心に残った。
「『101回目のプロポーズ』と同じ脚本家が書いたとは思えないラストの高低差(笑)。教師と女子高生の恋愛にとどまらず、レイプあり、近親相姦ありと、今ならコンプライアンス的に絶対アウトな内容ですが、その壮絶さゆえに見る者の心にも深く刺さった。
野島さんいわくこれはハッピーエンドだそうですが、普通の感覚ではバッドエンドでは(笑)」(カトリーヌさん)
6、7位も恋愛ドラマだが、そのテイストはずいぶん違う。ドラマ黄金期を代表するロマンチックラブコメディーの名作『やまとなでしこ』('00年 フジテレビ系)と草食男子という新世代の恋愛事情を描いた『逃げるは恥だが役に立つ』('16年 TBS系)だ。
「松嶋菜々子さん演じる桜子は肉食女子であり、お金がすべてという打算的なところも時代性を感じます。
そんな桜子が最終回ではニューヨークまで堤真一さん演じる欧介を追いかけていく。『残念ながら私はあなたといると幸せなんです』という桜子の言葉は恋愛ドラマの中でも屈指の名ゼリフです。
一方、『逃げ恥』の新垣結衣さんと星野源さんの2人は恋愛に対して不器用で、理屈が先にきちゃう。夫婦とはなんだというテーマを感情ではなく、理詰めで分析していったのがすごく新しくて面白かった。
2人が現実でも結婚しちゃったというのが、これ以上ない最高のハッピーエンドでした(笑)」(カトリーヌさん)
以下、『罠の戦争』('23年 フジテレビ系)、『ロングバケーション』('96年 フジテレビ系)、『ミステリと言う勿れ』('22年 フジテレビ系)とランキングは続くが、全体を通して見ると、やはり恋愛ドラマの強さが目立つ。
主人公の恋の行方を追い続け、その結果が出るのが最終回ゆえ、そこで視聴者の思いとピタッとハマるか、予想を裏切られてもそれを超えるほどの感動が与えられれば、心に深く刻まれるということだろう。
作品数としては恋愛ドラマに匹敵するはずの医療ものや刑事ものがランクインしていないのは、1話完結という形が多く、恋愛ドラマよりも最終回の重要性が低いことが考えられる。
「どんな最終回が最高かといえば、やっぱりカタルシスがあればあるほどいいと思うんですよ。このドラマで何が描きたかったのかというテーマが明確に描かれている最終回は、見ていてすごく気持ちがいい。
最近だとバカリズムさんが脚本を書かれた『ブラッシュアップライフ』('23年 日本テレビ系)の最終回は、すべての伏線がきれいに回収されて、4羽の鳩に転生して仲よく並んでいるというラストシーンが女友達4人の物語の締めとして本当に素晴らしかった。
ずっと苦境に立たされていた主人公が最後にきちっと倍返しするとか、ずっと応援していたカップルが最後に結ばれるとか、そういう大団円が一番気持ちいいですよね」(カトリーヌさん)
最終回が最高だったドラマTOP10
1位『半沢直樹』 98票
'13年、'20年 TBS系 出演/堺雅人
2位『東京ラブストーリー』 89票
'91年 フジテレビ系 出演/鈴木保奈美
3位『JIN-仁-』 81票
'09年、'11年 TBS系 出演/大沢たかお
4位『101回目のプロポーズ』 72票
'91年 フジテレビ系 出演/浅野温子
5位『高校教師』 64票
'93年 TBS系 出演/真田広之
6位『やまとなでしこ』 61票
'00年 フジテレビ系 出演/松嶋菜々子
7位『逃げるは恥だが役に立つ』 53票
'16年 TBS系 出演/新垣結衣
8位『罠の戦争』 48票
'23年 フジテレビ系 出演/草なぎ剛
9位『ロングバケーション』 40票
'96年 フジテレビ系 出演/木村拓哉
10位 『ミステリと言う勿れ』 36票
'22年 フジテレビ系 出演/菅田将暉
(取材・文/蒔田陽平)