2023年4月クールに放送されたドラマ作品。左上から時計回りに『王様に捧ぐ薬指』、『Dr.チョコレート』、『日曜の夜ぐらいは…』、『あなたがしてくれなくても』(『王様に捧ぐ薬指』以外は公式サイトより)

 4月期ドラマの多くが完結、一部は最終回へとまっしぐら。桜が散り始めたころには“面白そう!”“これは期待できる!”とワクワクしていたのに、フタを開けてみたら……肩透かし。そんな今期の“がっかりドラマ”をドラマに精通するライター・吉田潮さんに尋ねてみると?

小芝風花を大絶賛!

 まず、最初のがっかりドラマは『王様に捧ぐ薬指』(TBS系、放送終了)。貧しいウエディングプランナーの羽田綾華(橋本環奈)は、勤務先の社長・新田東郷(山田涼介)とお金のために契約結婚。超絶合わないふたりが距離を縮めていく。SNSなどでの評判は尻上がりだったようだが、

「私の中では尻下がりでしたけどね。橋本環奈さんと山田涼介さん、ふたりとも“コメディー筋肉”があってうまい。ただ、最初ヒロインは“どうも、悪女でーす”と言い放ち、自分がみんなから嫌われていることもわかっていて、余計なことも言うから“このヒロイン、いいな”と思ったんです。

 そのまんまいってほしかったですけど、話が進むほどにいい子というか、“貧しきものは美しきもの”みたいな方向に。結局、よくあるテンプレにはまった善人に。TBSが大好きな格差恋愛&契約結婚みたいな話で、新しいものはひとつもなくて、がっかりしましたね」(吉田さん、以下同)

 TBSの格差恋愛といえば『花より男子』( '05年)など、契約結婚といえば『逃げるは恥だが役に立つ』( '16年)が確かにパッと思い浮かぶ。

「対照的だったのが『波よ聞いてくれ』(テレビ朝日系、放送終了)の小芝風花さんが演じたヒロイン・鼓田ミナレ。最後まで毒舌で、時に致命傷みたいな悪口も言う。他人に大迷惑をかけてもテヘペロで、罪悪感もない。ただ、根っこの部分はまっとうで。ああいう突き抜けたヒロインはもっと出てきてほしいですね。なんか、きれいな女性が優秀で気を使えて……みたいなのは、もうたくさんです」

 気になる2作目は『 Dr.チョコレート』(日本テレビ系、放送終了)。利き腕を失った元医師“Teacher”こと野田哲也(坂口健太郎)と、天才的なオペ技術を持つ10歳の少女“ Dr.チョコレート”こと寺島唯(白山乃愛)がタッグを組み、ワケあり患者を救いつつ、2年前の爆破事件を追う。

秋元康ドラマは尻すぼみになりがち?

「ふたりには、医療スペシャリスト集団の“チョコレートカンパニー”がいて。古川雄大さんや小澤征悦さんなどうまい人が多くて。それぞれのテーマカラーの洋服を着て、楽しそうではあったんですけどね」

 吉田さんは、日本テレビのドラマはヒロインの洋服を含め、スタイリストがすごくいいと評価。

「だけど、そもそも闇医者で、10歳の子が難手術をして大金をせしめるって荒唐無稽にもほどがありますね。リアリティーのかけらもないし、共感ポイントゼロ。また闇医者ドラマは、1月期に『Get Ready!』(TBS系)もあったので既視感も」

 唯役の白山乃愛ちゃんはとても可愛いくてうまいが、

「これがもし高校生くらいだったらサヴァン症候群とか、メンサ入りの頭脳とか、ファンタジーながらもリアリティーを持たせられたと思うんですけど」

 さらに吉田さんは、本作の原案が秋元康であることにも注目。

ドラマ『波よ聞いてくれ』(公式サイトより)

「『あなたの番です』( '19年、日本テレビ系)、『ダ・カーポしませんか?』(1月期、テレビ東京系)などで殺し合いをさせすぎたから、今度は救う方向をひらめいたんじゃないですか? ただ普通に救っても面白くないから子どもで……みたいな。とにかく時代を読む人なので、ひらめきはある。だから第1話は面白いんですけど、尻すぼみになっていくことが多いんですよね

 3作目として挙がったのは『日曜の夜ぐらいは…』(日曜夜10時〜朝日放送・放送終了)。

「私はあの女子3人が生かされていない気がしちゃいますね」

 車椅子生活の母親を介護しながらファミレスで働く岸田サチ(清野菜名)。元ヤンのタクシー運転手・野田翔子(岸井ゆきの)。祖母とふたり暮らしで工場勤務の樋口若葉(生見愛瑠)。それぞれ鬱々としたものを抱え、生きがいを見いだせずにいた。

「そんな3人がラジオ番組のバスツアーで出会って、仲よしになって、宝くじに当たって、共同生活して、カフェを始める。取ってつけたような展開というか、都合がよすぎません? そもそも3人がキャッキャする感じが、どうもね“おじさんの考えた、女子の仲よくなる感じ”がするんですよ」

テレビ朝日に残してほしい「DNA」とは?

 脚本は岡田惠和。女の友情ドラマとして、どうしても比べてしまうのが『ブラッシュアップライフ』(1月期、日本テレビ系)だという。脚本はバカリズムだった。

「安藤サクラさん、夏帆さん、木南晴夏さん、水川あさみさんが演じていた3人組、4人組。あれが本当の女子の仲よくなり方なんですよね。対して、この作品は女性を“きれい事”で描いているから、なんだか靴の中にずっと小石が入っているような感覚になる。そもそも、3人寄れば政治が始まるはずで。

 それぞれの考え方の違いも描かれず、ただただご都合主義でキャッキャやっているだけで勝ち組なんて、本当にがっかりですね

 来月からは各局の新ドラマが続々とスタート。“がっかり”ではなく、期待どおりの“やっぱり”ドラマを期待してやみません!

◆よかったドラマは?

ドラマ『unknown』(公式サイトより)

 先述のとおり、『波よ聞いてくれ』で小芝風花が演じたヒロインを絶賛した吉田さんだが、そのほかによかったドラマは?

「『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系、放送終了)ですね。ただの不倫ドラマになるかなと思ったら、夫婦の言葉にならないすれ違いや勘違い……あそこまで心理描写をきちんと描いている作品はなかなかないので。2組の夫婦(奈緒&永山瑛太、岩田剛典&田中みな実)の全員に罪の意識みたいなものを負わせていて、奥の深い夫婦のドラマでした」(吉田さん、以下同)

 さらには『unknown』(テレビ朝日系、放送終了)。こちらは『おっさんずラブ』('16年)の制作陣が再集結した。

「吸血鬼(高畑充希)と人間(田中圭)の恋は“多様性を認める”という側面もあったと思うんです。『おっさんずラブ』だってそうですよね。好きという気持ちをとても大切にしていた。『unknown』はふたりのキスシーンがすごくよくて、イチャイチャっぷりも好きでした。結末は“えー!?”という感じでしたが、コメディーに振り切ったシーンもありつつ、見せ場や主軸を失わなかった。こういうDNAはテレビ朝日にちゃんと残していってほしいなと思います


吉田潮……ライター、コラムニスト。『週刊新潮』『東京新聞』『プレジデントオンライン』ほか多数寄稿。最新著に『ふがいないきょうだいに困ってる』(光文社)

 
撮影会に参加していたころの奈緒。当時は18歳だった(イベント会社HPより)
撮影会に参加していたころの奈緒。当時は18歳だった(イベント会社HPより)

 

山田涼介 '18年のジャニーズ初詣にて

 

今ドキの丸眼鏡にオシャレな山田涼介(左)と母親(右)は店内でも目立っていた('15年)

 

アイドルグループ『Rev.fromDVL』に所属していた橋本環奈(2014年6月)