「容疑者が笑ったところを一度も見たことがない。不気味だったんですよね……」
容疑者と被害者が行きつけだったレストランの店主はそうつぶやいた−−。
神奈川県警鶴見署は6月29日午後1時41分、同県横浜市鶴見区の自称会社員・伊藤龍稀(はるき)容疑者(22)を殺人の疑いで緊急逮捕した。容疑者は同日午前10時15分ごろ、かつて交際していた同区内の大学生・冨永紗菜さん(18)を自宅マンションの駐車場で、刃物のようなもので複数回刺して、殺害したという。
容疑者と被害者はおよそ2年前から交際していた
「母親が駐車場で倒れている紗菜さんを発見して110番通報。病院に緊急搬送されるも約1時間後、紗菜さんの死亡が確認された。その後、容疑者は殺害に使用した凶器を持って鶴見署に自首。警察の取り調べに、“家から出てくるところを待って、刃物で傷つけた”と供述しています」(全国紙社会部記者)
容疑者と被害者はおよそ2年前から交際していた。2021年10月以降、同県警が2人の喧嘩の仲裁に計4回介入している。しかし、ストーカーやつきまとい被害の相談、被害届までには至らなかったというが、
「一部報道によると、紗菜さんは友人に“容疑者に馬乗りになって殴られるなどの暴力を振るわれた”“容疑者から一方的にDMが何件も来て怖い”“アルバイト先まで来た”などと相談していたようです」(同・社会部記者)
被害者となった紗菜さんは、元子役俳優。14歳のころまでは東京内の劇場で上演される舞台などで活躍していた。
紗菜さんと家族が住むマンションは報道規制が敷かれていて、事件現場である敷地内の駐車場にもたどり着くことができない状態。
献花に訪れた同マンションの若い男性住民は、
「(被害女性の)お兄さんと同じ職場でアルバイトとして働いています。ご家族の心の傷を軽くできるかどうかはわかりませんが、少しでも癒せたらと思って、花を供えに来ました」
容疑者の自宅は事件現場から2.5キロメートルほどのところにあった。築6年の2階建て、1Kで家賃月6万円ほどのアパート。聞き込みをするも、容疑者を知る住人はいなかった。
アパートからそれほど遠くないところに、2人がよく通っていたレストランがある。
冒頭の店主は、
「1年ほど前から20回くらいは2人で来ていました。うん、男性の仕事が終わってからだから、夜の9時か9時30分ごろかな」
被害者の紗菜さんについては、
「テレビで紹介されている写真よりも化粧っけがなくて、もっと美人だよ。愛想がよくて、いい子だった」(店主、以下同)
容疑者のほうは、大体、黒っぽい服装をしていて、
「いつも会計はすべて男性。ちょっと亭主関白というか、主導権を握っているように見えた。ええ、もちろん、仲のよさそうなカップルでしたよ」
事件1か月前、2人の間に漂っていた“不穏な空気”
だが、今年5月下旬ごろ、一度、不穏な空気になったことがあったようで、
「互いに低いトーンでしたが、何かを言い合っていて、こちらが近寄れないほどの険悪な雰囲気になっていたんです。だから、離れて、そのままにしておいた。いつもは30分もしないで帰るのに、そのときは1時間ぐらいいて、ずっと不穏な感じだった。でも、6月になったら、また2人で仲良く来ていましたけどね」
逮捕時の容疑者の姿は痩せていたように見えたという。
「店に来ていたときは、もう少しふっくらしていたと思う。彼女に別れを告げられて、彼もそれなりに思い悩んで、げっそりしたのかもしれないですね。とはいっても、この事件は誰がどうみても、容疑者のほうが悪い。彼女がかわいそうですよ」
店主は商売柄、あまりこんなことを言ってはいけないとしながらも、
「長年、この接客業をしているとわかるんですが、容疑者はオラオラ系の感じがしたんですよ。2人っきりになって、気にくわないことがあれば、暴力的になっていたんじゃないでしょうか」
愛情の裏返しが、悲しい事件の引き金となったのか。紗菜さんの冥福を祈るとともに、伊藤容疑者の謝罪と償いを待ちたい。