着用はヘルメットのみで、全裸で自転車にまたがる男性ら。アメリカ・シアトルのプライド・パレードにて(写真はTwitterより、編集部で一部加工)

 6月は「プライド月間」と呼ばれ、アメリカをはじめとした世界各地で、LGBTQ+(性的少数者)の権利を啓発するイベントが開催された。もともとは1969年6月28日にニューヨークで起きた、「ストーンウォールの反乱」に端を発する。当時のアメリカでは、同性愛者の性交渉などが犯罪とされていた。

 セクシュアルマイノリティーの聖地であった地域のゲイバー「ストーンウォール・イン」に踏み込んだ警官に、人々が立ち向かったことで暴動化。これが解放運動の転換期となり、翌年からニューヨークで初の「プライド・パレード」が開催され、その後、日本を含めた世界各国に広がり、今日に至る。

「なぜ脱ぐ必要が?」

 しかし、いつしかパレードの表現方法も多様化していき、いたずらに肌や性器を露出しながら街を練り歩くものも増え、「なぜプライド・パレードで、“脱ぐ”必要があるのか」「全裸の男女が公共の場で歩いている姿を子どもに見せられるのか」など、疑問の声が上がるように。

「1960年代、女性解放を訴えたオノ・ヨーコも裸になって抗議したように、歴史を見ても人間、特に西洋人は何かアピールをするときに脱ぐ傾向にあるんです」と、ジェンダー問題に詳しい都内勤務の精神科専門医は言う。

「パレードやデモをする人は、基本的には強い思想を持っているケースが多い。セクシュアルマイノリティーの中では、特にゲイとレズが比較的、強い思想を持つ傾向にあると思います。多くはその承認欲求の高さが根本にあって、社会的に認められたい気持ちが強く、結婚や就職など現行の制度に対して言いたいことがある。自分たちの性の権利を訴えている人々が、その表現方法として、自分を認めてほしいという気持ちから、自分の身体を直接的にアピールするようになったのでしょう」(精神科専門医、以下同)

不本意なイメージの一因に

 一方、LGBT法案に反対するイタリアの女性首相、ジョルジャ・メローニ氏が、ベビーカーを押しながらパレードをする「ファミリープライド」を推進するような動きもある。

LGBTを意味するレインボーカラー

「プライド・パレードを見た人や知った人が、セクシュアルマイノリティーについて考えるきっかけになるのはもちろんいいことだと思います。また、心理的・精神的な側面で当事者に寄り添う意味でも、そういった表現をしていないと自己を保っていられないところもあるのだから、パレード自体はもちろん認めてあげなくてはいけない。ただ、脱いでいるから何? 本当に脱ぐ必要ある?と周囲が思ってしまうのも当然わかります。

 また、テレビのバラエティー番組などに登場するセクシュアルマイノリティーのキャラクターの描き方や立ち振る舞いなどで、誤解されて変なイメージがついてしまっている。プライド・パレードでの度を超えた露出なども、セクシュアルマイノリティーに対してそういう本意ではないイメージをつけてしまう原因の一つになりうると思います」

 われわれは、ホモ・サピエンス。誇りを胸に堂々と歩いていく、のはいいけれど。

着用はヘルメットのみで、全裸で自転車にまたがる男性ら。アメリカ・シアトルのプライド・パレードにて(写真はTwitterより、編集部で一部加工)

 

カナダ・トロントのプライド・パレードの様子。性器を露出し練り歩く男女の姿が見える(写真はTwitterより、編集部で一部加工)

 

出典・ヒューマン・ライツ・キャンペーン財団

 

中国は今でもLGBTへの風当たりが強い

 

同性愛者のマスター「バーで親にカミングアウトする子も」

 

性的少数者だけではなく、さまざまな個性を持った人が練り歩くパレードは東京でも行われている

 

'14年には海外のゲイパレードに参加し、レインボーフラッグを振った浜崎あゆみ(公式Twitterより)

 

人混みのなか、サングラスをかけ全身ピンクの衣装で現れた浜崎あゆみ(2022年)

 

浜崎あゆみ公式インスタグラムより