猛暑疲れにスプーン1杯のあずきの驚き健康パワー(※画像はイメージです)

 あずきといえば、和菓子やぜんざいなど、スイーツのイメージが強い。それに対して、「あんこになってしまっているものは、あずき本来の栄養成分の多くを無駄にしてしまう、もったいない食べ方なのです

 と語るのは、「あずき博士」として知られる名寄市立大学副学長で農学博士の加藤淳教授。問題は、あずきを煮た際の「煮汁」を捨ててしまうこと。一般的にあんこを作るときは、沸騰したらすぐに煮汁を捨ててアクを取る「渋切り」という作業を行う。

あずき=スイーツのみでは栄養が台無しに!?

あんに渋みやえぐみがつくことを防ぎ、和菓子の繊細な味を出すために、渋切りは必要な作業です。しかし、それは和菓子用途の場合であって、あずきの調理すべてに必要なわけではありません。あずきに含まれる栄養成分の多くは水溶性のため、7~8割が煮汁に溶け出しています。日常的にあずきを食べて健康効果を得るためには、煮汁も一緒に摂取することが大切です」(加藤教授、以下同)

 実はあずきは、さまざまな健康効果を持つスーパー食材。それを昔の人は知っていて、あずきを食べることで病気の予防や回復に活用していた。

「具体的には、ポリフェノール、ビタミンB群、カリウム、鉄、食物繊維などを含みますが、他の豆と比較しても突出しているのは、ポリフェノールの多さです」

 ポリフェノールは、体内に増えすぎると老化やがんの原因にもなる「活性酸素」を消去する力、「抗酸化活性」に優れた成分で、赤ワインに多く含まれるとして少し前にブームになった。

ポリフェノールの量は赤ワインの1・5~2倍

「日照時間の影響などから、北海道産のあずきには、赤ワインの1・5~2倍ものポリフェノールが含まれているものもあります。人間の身体にも、紫外線をはじめとする活性酸素を発生させる要因に対して、細胞の酸化を抑える抗酸化活性が備わっていますが、その働きは20代がピークで、40歳以降は急速に衰えます。40歳を過ぎた方は、食品から抗酸化力に優れた成分を摂取しないと、老化が促進されてしまいます」

 抗酸化成分として知られるのが、ポリフェノール、ビタミンE、ベータカロテンなど。

「これらの成分が豊富に入った食品を積極的に食べることで、アンチエイジング効果が期待できます。その代表例としてあずきは、日常にある食品の中でも、ポリフェノールが非常に多く含まれています」

 紫外線の量が増加する夏場は、特に意識して抗酸化成分をとることが重要だ。

「ポリフェノールをたっぷりとることで身体の酸化を防ぎ、シミやシワといった紫外線による肌ダメージを軽減することにつながります」

「煮あずき製法」で成分をまるごと摂取

 あずきのポリフェノールを逃さず摂取するためにはどんな食べ方がいいのだろうか。加藤教授が考案したのが、煮汁を一切捨てない“煮あずき製法”。

「あずきは重量の2倍まで水を吸います。一般的にあずきを煮る際には、重量の3~5倍の水を使いますが、私が考えた煮あずき製法では、重量の2倍の水しか使わないことで、煮汁を出さずにあずきのすべての成分を閉じ込めることができます。ポリフェノールの他にも、むくみ解消や高血圧予防に有効なカリウム、冷え予防に役立つビタミンB1なども保持されます」

 完成すると、300グラムのあずきから約660グラムの煮あずきができる。すぐに食べない場合は、一度に使う分ずつ小分けにして、フリーザーバッグなどに入れて冷凍保存するのがおすすめ。

「2、3日で食べ切れる場合は冷蔵で大丈夫ですが、4日以上後に使う分は冷凍庫へ。冷凍の場合も、1か月以内には使い切るようにしましょう」

 この冷凍煮あずきは、さまざまな料理に使用可能で、サラダやご飯にトッピングするだけでもOK。

「私がよく作っているのは、あずきご飯。ご飯を炊くときに、研いだお米にパラパラと冷凍煮あずきを入れて、通常どおりの水の量で炊くだけ。炊いていく過程であずきの成分が溶け出し、ほんのり赤みのついた豆ごはんになります。もちろん、餅米を使えば、お赤飯に。簡単で続けやすく、おすすめです」

少量ずつ続けてとるとしっかり吸収できる

 ポリフェノールなど水溶性の成分は、一度にたくさんとっても必要以上は体内に蓄積できず、尿とともに排出されてしまう。

「少量ずつこまめに摂取し、継続するのが食べ方のコツです。また、あずきには日本人が不足しがちな食物繊維も豊富に含まれています。その不足分を補える量として、1日30グラムを目安にとることが推奨されています」

 さらに、組み合わせ食材としておすすめなのがトマト。

「トマトとの相性は非常に良いです。栄養面でも、トマトにはあずきには含まれていないベータカロテンやリコピン、ビタミンCが豊富に含まれており、あずきに多いビタミンB群と合わさることで、補い合うことができます」

 また、近年、加藤教授の研究で、あずきのさらなるパワーが明らかになりつつある。

「免疫学の先生との共同研究として、一昨年から行っているラットを使った実験で、栄養成分をまるごと残したあずきを摂取することで、腸内環境を整え、免疫機能を高めることがわかりました」

 コロナ禍のピークを過ぎたとはいえ、小さな不調を重篤な病気に発展させないためにも、免疫力をサポートしてくれる食材が身近にあるのは、かなり心強い。さっそく毎日の食卓に加えて、生活習慣病やがん、夏老け防止に、あずきパワーを活用しよう。

農学博士・加藤教授おすすめ夏のあずきアレンジメニュー

 相性のいい食材を使った、加藤教授直伝のあずきレシピをご紹介。ポリフェノールによるアンチエイジング効果だけでなく、豊富な食物繊維のおかげで満足度が高く、メタボ予防もサポートしてくれるあずき。これからは和菓子以外の食べ方も取り入れて、毎日30グラム程度を習慣化させてみよう。

No.1:トマトの組み合わせで抗酸化力がUP!

冷製でもOK!煮あずきミネストローネ

煮あずきミネストローネ(撮影者:加藤 淳)

 ほっくりした食感が酸味のあるトマトのスープによく合う。普段作るミネストローネに煮あずきをたっぷり入れて、栄養面でも特に夏に食べたい一品。

No.2:乳製品を組み合わせることで渋みがマイルドに

きな粉あずきヨーグルト

 ヨーグルトに煮あずきを混ぜ、お好みで、オリゴ糖を加えたら上からきな粉をふりかけるだけで完成。さっぱりスイーツ感覚で、ヘルシーに取り入れられます。

No.3:ひき肉代わりに煮あずきをたっぷり

ひき肉代わりのあずきミートソースパスタ(撮影者:加藤 淳)

 大豆ミートのように、肉に置き換えても食べ応え十分! ひき肉、またはインゲン豆の代わりと考えて、カレーやスープ、グラタンなどにも入れて、アレンジは無限大。

教えてくれたのは加藤淳先生

農学博士・加藤淳先生

農学博士。名寄市立大学副学長・保健福祉学部栄養学科教授。豪州クイーンズランド大学、北海道立中央農業試験場などで豆類の品質、加工適性、健康機能性などについて研究。豆類の普及や技術支援など幅広く活動。主な著書に『最強のあずき力 無限の可能性を秘めたスーパーフード』(KKロングセラーズ)など。

<取材・文/當間優子>

 

ポリフェノールを逃さない!煮あずきの作り方

 

食品に含まれるポリフェノール量(100g中)あずきは食品全体でも抗酸化成分量はNo.1!

 

ひき肉代わりのあずきミートソースパスタ(撮影者:加藤 淳)

 

煮あずきミネストローネ(撮影者:加藤 淳)

 

ご飯や玄米に煮あずきをパラパラと入れて炊く。日常で気軽にたっぷり食べられる

 

日本のあずき一大産地北海道のおすすめあずきは「きたろまん」中国産などに比べ、北海道産のあずきは、煮えやすく、ポリフェノールが豊富で抗酸化活性に優れていることがわかっている。その中でも「きたろまん」は味はもちろん、栄養価も抜群