第28回 鳥羽周作氏
女優・広末涼子とフレンチレストランシェフ・鳥羽周作氏とのW不倫報道を受けて会見を開き、「自分の幸せは、自分の子ども達と自分の妻がいる家が一番幸せです」と涙を見せた夫のキャンドル・ジュン氏。心のきれいな人は「なんていい人」と思ったことでしょうが、その後「週刊女性」がキャンドル氏の元従業員男性への暴力や不倫を報じます。裏切られたと思う人もいるでしょうが、心のねじくれた私は「そういうこともあるだろうな」と思ったのでした。
キャンドル氏にそういう二面性があると思っていたわけではなく、人の印象というのは“見せ方”で変えられることは、心理学が証明しています。キャンドル氏は平和を祈ってキャンドルをともすという活動をしていますが、一般常識でいうのなら、ろうそくを作って火をともしても、ビジネスになるとは考えづらい。にも関わらず、ビジネス化に成功し、芸能界のトップにいる女優と知りあうまでの人物になるのは「自分の見せ方」に長けていて、「この人はいい人だ」と周囲に思わせるのが、とてもうまいのだと思うのです。こう書くとけなしているようですが、「自分をよく見せる能力」は、自分の名前でビジネスをする人には必須です。
具体例をあげてみましょう。会見で、キャンドル氏は「まず初めに、私の妻、広末涼子が多くの方々にご迷惑をおかけしてしまい、大変申し訳ありませんでした」と深々と長いお辞儀をしてみせたのでした。「そして、相手方のご家族、親戚、ご友人関係者のみなさんにもご迷惑をおかけして、大変申し訳ありませんでした」と再度深々と頭を下げていました。そして感極まったのか、大きくため息をつくと「みなさんにお伝えしたいことの一番は、妻・広末涼子は育児放棄をしたことは今まで一度もありません。私にとってもよき妻ですし、何よりも子どもたちにとって最高の母であり、家族や親せきの中でも最も頑張るすてきな女性です」と述べました。
会見で作り上げた「妻を赦し、愛し続ける悲劇の夫」イメージ
キャンドル氏は被害者ですから、広末を責めることだってできたはず。けれど、責めないどころかうちの広末世界一、完璧だとほめてみせ、涙すら浮かべていた。日本の男性は概して妻をほめませんから、いい印象を受けた人は多いのではないでしょうか。会見が始まってたった2分40秒で、キャンドル氏は「不貞を犯した妻を赦し、愛し続ける悲劇の夫」というイメージを作り上げたのです。この後に、広末の不倫は今回が初めてではなく示談にしたことがあると、子どもたちが知りたくない、もしくは広末の芸能人としてのイメージをさらに落とす大暴露をさらっとするわけですが、これも上手だなと言うしかない。キャンドル氏が会見をはじめてすぐに広末の過去の不倫を暴露したら、おそらく「こんなネチネチした夫だから、広末だって不倫したくなった」という意見も出てくるでしょう。しっかり、“いい人”の土台を作って暴露に及んだために世間も信用してくれたのでしょう。
広末の不倫相手、鳥羽周作氏も自分の名前でビジネスをしている人ですから、きっと自己PRはうまいはず・・・と思っていたのですが、東京スポーツの記者に対しての鳥羽氏の激白に関してはヤバいの一言に尽きるのでした。鳥羽氏はキャンドル氏に対して「あいつは抹殺されたほうがいい」「(キャンドル氏は)ちょっと頭悪いから喋りすぎちゃってさ、俺にムカついてんだとは思うけど」など言いたい放題。友達同士での会話なら何を言ってもかまいませんが、「自分の名前でビジネスをする人」がマスコミに対して話すときの鉄則は「自分のイメージをあげること」です。まして、今の鳥羽氏は不倫中でイメージがいいとは決して言えないわけですから、こういう時こそ、話の内容はもちろん、言葉遣いにも気を付けないとさらにイメージが悪くなってしまう可能性があります。
広末の芸能界復帰が案外早い理由
鳥羽氏は「(キャンドル氏のことを)調べたほうがいいと思いますよ。俺にもめっちゃ(情報が)集まってるし」と、キャンドル氏の“ウラの顔”続報を待ちわびているようです。しかし、広末と鳥羽氏の不倫は、二人してキャンドル氏の貞操権を侵害していることが問題なわけですから、キャンドル氏の暴力や不倫が事実であったとしても、広末と鳥羽氏の不倫が正当化されるわけではないのです。一般常識に欠けるのか、頭に血が上りやすいのか、言われたら言い返さないと気が済まない噛みつきグセがあるのかはわかりませんが、鳥羽氏のおかげで、広末の芸能界復帰は案外早いのではないかと思いました。
広末の今後を占う際に、不倫のセンパイ、女優・斉藤由貴の名前が挙げられることがあります。
彼女は独身時代から、尾崎豊さんや川崎麻世と、2017年には「週刊文春」に医師との不倫を報じられました。なぜ複数回不倫をしても、彼女は復帰できるのか。それは彼女が「不倫をしても、略奪婚はしていない」からだと思うのです。不倫がバレれば女性芸能人のイメージは確実に下がるわけですから、不倫をしたら、妻とは別れてもらって結婚するのが芸能人としての正解なわけです。ですから、斉藤のように「何度も不倫はするけれど、略奪はしない」人というのは、「自分からイメージを落とすようなことをして、ソンばかりするお人好し、物好き」だとみなされます。大衆心理というのは勝手なもので、人気者の凋落を喜ぶ一方で、その人があまりにソンをしたり、バッシングがひどくなったりすると「そんなに責めなくても・・・」と一転して擁護する傾向があります。
女優・小泉今日子も俳優・豊原功補と不倫関係にあり、豊原は離婚しますが、小泉と結婚するには至っていない。つまり、小泉も「ソンな不倫」をしたわけです。そのため、「不倫はしたけれど、奪えなかった」「何年もオトコにふりまわされて、かわいそう」と同情票が集まる。だから、今はあまりバッシングされていないのだと思うのです。反対に「不倫をして人の家庭を壊し、妻の座に座る」、つまり「トクをする不倫」だとバッシングは長引くのではないでしょうか。
はたして広末と鳥羽氏は結婚するのか。鳥羽氏は東京スポーツの記者に対し、「例えば僕が(広末と)結婚する、しないかもしんないし、わかんないけど」と話していましたが、随分トーンダウンしたものだと感じました。「文春」が二人の不倫について報じ、記者が鳥羽氏を直撃した際には、不倫を完全否定すべきところなのに「そうですね、逆にそういうことが正式に発表できることがあれば、連絡するんで、ちゃんと撮ってもらったら嬉しいですけどね」と無駄に含みを持たせていた鳥羽氏が、わずか1か月のうちに「結婚するかどうかはわからない」という心境になっている。
広末は鳥羽氏と結婚しないほうが「ソンする不倫」
そもそも、鳥羽氏は既婚者ですから、広末と結婚するためには妻と離婚しなくてはならないわけで、まるで独身のように物を言う鳥羽氏の態度は不誠実だと思いますが、それはさておき、広末は鳥羽氏と結婚しないほうが「ソンする不倫」だとみなされるので、芸能界復帰が早まるのではないでしょうか。
二人の不倫の証拠として「週刊文春」に掲載された手紙や交換日記は物議をかもしましたが、それについて鳥羽氏は以下のように発言しています。
「あれ、普通に考えて結構近い人間にしか渡さないんですよ。で、僕、文春でも言ってますけど、手帳も手紙も一個も持っていないんですよ。相手方がスクショしたりとかあったときに、その手帳に返事書いたりとかしてる感じなんで。僕ら側から流せることじゃないとなると、一人しかいないっすよね。だって、どっちかしかないじゃないですか。当人同士は流す理由ないから。うちの奥さんか、向こう側しかないわけで。僕は何も持っていないから、家にも。だから、うちの奥さんがリークすることは難しいですよ」
つまり、キャンドル氏が「文春」に流したと匂わせています。もちろんその可能性は否定できませんが、そもそも不倫をしなければ、手紙の流出もなかったことを忘れていないでしょうか。成功者もしくは責めグセがある人は知らず知らずのうちの敵を作っていることがありますが、スキャンダルの渦中にいる鳥羽氏は、敵に「言われやすいタイミング」であることを忘れてはいけません。ノリノリでキャンドル氏を責めていると、この機会に乗じて鳥羽氏に対する暴露が起きないとは言い切れないでしょう。
広末のオトコ選び、実は正解
また、責めグセが広末に向けられると、広末とうまくいかなくなった時に、広末側が何らかの暴露にさらされる可能性も否定できません。しかし、これは広末にとっては、ラッキーなことだと思うのです。
不倫のセンパイ、斉藤由貴は医師との不倫関係を当初は否定していましたが、「FLASH」に男性との自撮りキス写真、斉藤のものであろうパンツを相手の男性がかぶっている写真が掲載されてしまい、不倫を認めざるを得なくなります。ウソをついて不倫をしていたのは悪い事かもしれませんが、パンツ写真までいくと「週刊誌はここまでする権利があるのか」と風向きが変わって、斉藤に同情票が集まるようになります。鳥羽氏がキレて広末の何かを暴露するほうが、広末にとっては芸能界復帰のチャンスとなりうるわけですから、広末のオトコ選びは実は正解と言えるのではないでしょうか。
広末は若い頃から写真週刊誌に不都合な写真をばんばん撮られてしまうワキの甘さがあり、鳥羽氏は今の自分の立場を忘れて、思ったことは何でも言ってしまうしょっぱさがある。キャンドル・ジュン氏は口に含んだときは強烈に甘いけれど、最後に苦味が残る咳止めシロップのような作り物感がある。みんな違ってみんなヤバいとまとめたいところですが、直情型の広末、鳥羽氏と比べると、敵に回して怖いのは断然キャンドル氏で、二人は到底キャンドル氏に太刀打ちできないような気がしてくるのでした。
<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」