巨人の星になれず“万引き転売ヤー”に堕ちた小野仁容疑者(写真は2002年、巨人の宮崎キャンプで、写真は共同通信)

「転売目的の常習万引きで有罪判決を受け執行猶予中、性懲りもなく同じパターンで酒を万引きして捕まった。警察の取り調べに“酒を売って生活費にあてたかった”などと素直に認めている」(全国紙社会部記者)

 横浜市瀬谷区のスーパーからウイスキー7点(販売価格計3万5302円)を盗んだとして神奈川県警瀬谷署が6月28日、窃盗の疑いで逮捕した元プロ野球選手の職業不詳・小野仁容疑者(46)のことだ。

シャンパンなど計31本の酒瓶を万引き

 犯行があったのは5月8日午後4時15分ごろ。小野容疑者をめぐっては、秋田地裁が昨年5月16日、秋田市や千葉市のスーパーなどで2021年11月~22年1月にかけてシャンパンやウイスキー計31本(販売価格計約21万円)を万引きした窃盗罪について懲役3年、保護観察付き執行猶予5年(求刑懲役3年)の有罪判決を言い渡している。

 猶予期間としては最長の5年になったのは身勝手な理由で万引きを繰り返したから。期間中、軽微な交通違反などを除き法に触れず過ごせば刑務所に入らなくて済むが、判決確定後1年もたたず犯行を繰り返した。

「昨年の事件では、警察が家宅捜索で高級シャンパン『モエ・エ・シャンドン』や高価なウイスキー、日本酒など約400本を押収している。検察側は論告で“常習性があり転売目的の犯行に酌量の余地はない”と断じ、裁判官も判決で“窃盗をなりわいとし、金は競馬につぎ込んでいる”と非難した。しかし、反省して被害店舗に弁償した点などが考慮され、社会で更生する猶予刑にとどまった。これをあっさりと裏切った事実は重く、猶予は取り消される可能性が高い」

 と前出・記者は言う。

 関係者によると、今回の犯行時、私服警備員に呼び止められた小野容疑者はまず逃げている。近くにいた男性と警備員によって取り押さえられると、隙をみて再び逃走して振り切った。

 防犯カメラの映像などから逮捕に至ったが、こんな悪あがきで元プロアスリートの身体能力を発揮してどうするのか。警察は余罪を含め詳しい経緯を調べているという。

巨人の星になれず“万引き転売ヤー”に堕ちた小野仁容疑者(写真は2002年、巨人の宮崎キャンプで、写真は共同通信)

 187センチの長身から投げ下ろす豪球左腕だった。秋田経法大付属高3年の1994年、世界選手権の日本代表に高校生として初選出。96年アトランタ五輪でも代表入りし銀メダルを獲得した。社会人野球から同年のドラフトで逆指名した巨人に入団。しかし、プロでは全く通用しなかった。

 元巨人担当記者はこう振り返る。

「精神面が弱く典型的な“ガラスのエース”だった。アトランタ五輪でもキューバ打線に打ち込まれメダル獲得に貢献できなかった。2軍や紅白戦ではうなりをあげる豪速球がズバズバ決まるが、1軍のマウンドに上がるとストライクが入らなくなる。連続四球を繰り返し、当時の長嶋茂雄監督も“小野はダメだ。気迫が感じられない”などとがっかりしていた」

 近鉄にトレードされ、2003年に戦力外通告。ミネソタツインズとマイナー契約を結ぶもメジャーには上がれなかった。

 引退後はさまざまな仕事に就いたという。

キャバクラの黒服に工場の作業員…さまざまな職種を転々としたが

「魚市場の配送や床清掃、工場の作業員、キャバクラの黒服、スポーツ選手のセカンドキャリア支援などさまざまな職種にチャレンジしたようだが、腰が定まらなかった。昨年の事件のとき聞いた話では、コロナ渦で給料が減り、貰い物の酒やゴルフ用品をネットのフリーマーケットに出品して小遣いを稼ぐようになり、手持ちがなくなったため盗品を売るようになったらしい。いかに生活が苦しくとも、ほかに手立てがあったのではないか」(前出・元巨人担当記者)

 プロ野球選手も辞めてしまえばただの人。横浜市港北区の家賃約9万円のアパートでひとり暮らし。離婚歴があり、愛車もありふれた国産大衆車だった。自宅周辺では「デカいおじさん」と呼ばれ、元巨人の投手と知る人は少なかった。

愛車の車内にはゴルフバックや真新しいシューズなどが

「キャッチボールも素振りもジョギングも見たことがない。周囲に迷惑をかけることはなかったが、接触は必要最小限であまり友好的な感じではなかった。元巨人の投手らしいところといえば髪型がスポーツ刈りだったぐらい」

 と同じアパートの住人。

人目を避けて生きるように…

 数年前、同年輩の彼女らしき女性と車で出かけるところを目撃したという。

 近所の女性はこう話す。

「夏場はTシャツに短パンなどラフな格好でした。昨年の逮捕までは挨拶を交わしていましたが、釈放されてから挨拶しなくなりました。無視するのではなく、目を合わせようとしないんです」

 こうした振る舞いも精神面の弱さをうかがわせる。近所に迷惑をかけたと詫びることもなく、心機一転出直す覚悟を示さなかった。

 かつての超高校級投手がふたたび残念なニュースで世間を騒がせるなか、高校球児の夏が地方予選から始まった。

 コロナ禍の3年前、夏の甲子園大会の中止が決まると、小野容疑者は出身地の地元紙の取材に対し、

「すぐには気持ちを切り替えられないだろうが、成長する機会をもらえたと前向きに捉えられれば必ず成長できる」

 と高校球児にエールを送っている。

 言葉と行動がどうにも一致しない。セカンドライフでつまずき、生活苦という逆境に置かれた小野容疑者の愛車には、立派なゴルフバッグや新品同様のシューズ、スポーツウェアなどが積まれていた。実情はわからないが、ゴルフを楽しみながら生活苦はないだろう。今度こそ真摯に反省し、態度で示してほしい。


 

愛車の車内にはゴルフバックや真新しいシューズなどが

 

巨人の星になれず“万引き転売ヤー”に堕ちた小野仁容疑者(写真は2002年、巨人の宮崎キャンプで、写真は共同通信)

 

巨人の星になれず“万引き転売ヤー”に堕ちた小野仁容疑者(写真は2002年、巨人の宮崎キャンプで、写真は共同通信)