時代劇界のスターでありながら、「みんなが笑顔になって、喜んでくれるなら」と新ジャンルに挑戦し続ける、俳優の松平健さん。「マツケンサンバ」は「キラキラがかわいい〜!」と若者の間でも一大ブームに! その誕生秘話から、ここぞというときの意外なテンションアップ法までを直撃!
幅広い世代に愛されている曲なんだと実感する
昭和世代もZ世代も、老若男女を巻き込んで大人気のマツケンこと松平健さん(69歳)。2004年に発売された『マツケンサンバII』のヒット後、19年の時を経て再ブレイク。『マツケンサンバII』の誕生秘話やマツケンブームについて、ご本人に語ってもらった。
日本レコード大賞特別賞や『NHK紅白歌合戦』出場など、2004年を象徴する曲となった『マツケンサンバII』。もともと、松平さんが舞台のフィナーレで披露していた楽曲で、派手な和服衣装やキレッキレのダンスパフォーマンスに度肝を抜かれた人も多いはず。
「幼稚園の運動会などで、子どもたちがリズムに合わせて踊ってくれたと聞いてうれしかったですし、老人ホームに行かせていただいたときも、『マツケンサンバII』が流れると、みなさん身体が自然と動いてらっしゃる。幅広い世代に愛されている曲なんだと実感する毎日でしたね」(松平さん、以下同)
平成から令和に移りゆくなか、新たなファン層も取り込んで人気が再燃。「コロナ禍という閉塞感を明るいサンバのリズムが吹き飛ばして元気をくれる」と、注目され、2021年の『第72回NHK紅白歌合戦』に出場。『マツケンサンバII』が、大みそかの夜を盛り上げてくれた。
さらに『マツケンサンバII』はSNS界隈も席巻!
「TikTok上で『マツケンサンバII』のエフェクトを使うと、誰でもマツケンに変身できるというもので、赤ちゃんまでマツケンになって踊っていたのにはつい笑ってしまいました(笑)」
今年話題となっているのが『マツケンサンバII』の世界観を表現したコラボレーションカフェ「ビバ~マツケンサンバIIワールドカフェ~オレ!」。
歌の情熱的できらびやかな世界観を反映したフードメニューが楽しめたり、併設のグッズショップではステッカーやTシャツなどを購入できるとあって、東京・渋谷会場の事前予約整理券はソールドアウト。愛知、大阪への巡回開催も決まった。
この空前の“マツケンフィーバー”に当の松平さんもうれしそうに笑顔を浮かべながら、「マツケンが勝手に歩いてる感じがしていて、なんでこうなったのか、僕にはわからないんだけど(笑)。『おーい、ちょっと待ってくれよ』って感じかな」と少し困惑ぎみ。
ただ、小さな子どもたちから親しみを込めて「マツケン」と呼ばれたり、「大好きです」と手紙をもらうのは、うれしいと目尻を下げる。
マツケンサンバII誕生のきっかけ
そもそも松平さん×サンバが誕生したきっかけは?
「もともと、松健音頭やマツケンマンボ、マツケンロックなどのマツケンシリーズがあって、僕の舞台で歌っていたんです。その流れにマツケンサンバがあって、時代とともにテンポのいい曲に変わっていき、いきついたのが2004年に発表した『マツケンサンバII』でした。なので、最初はわりと気軽なノリで歌っていましたね(笑)」
マツケンサンバは最初、日本舞踊の先生が振り付けをして和装で手拭いやもみじ、桜の枝などを持って踊っていた。
それが1990年代中ごろにハワイで海外公演を行うことになり、松平さんのアイデアで旧知の仲だったマジーこと真島茂樹さんに振り付けを依頼。こうして、和洋折衷ダンスパフォーマンスの『マツケンサンバII』が生まれた。
「せっかくの海外公演ですから、ショーのフィナーレでみなさんに最後、盛り上がって帰っていただきたいという思いで、リオのカーニバルのような明るくて派手なイメージでお願いしたんです」
「最初は驚いて、引いてる方もいましたよ(笑)」と言う、きらびやかでド派手な衣装も、マツケンサンバには欠かせないコスチューム。衣装の生地は、松平さんご本人が海外で買い付けしてきた。
「ニューヨークへ行ったときに、生地の専門店でスーツの生地を買ったりしていたのですが、そのときにお店の奥に光るものを見つけて。引き寄せられるように近づいていくと、スパンコールの生地があったんです。日本には、ラメやスパンコールの生地があまりなかったんですよね。これを衣装にしたらいいんじゃないかとピンときました(笑)」
常に「みなさんを楽しませたい」という気持ちが強い松平さん。エンターテイナー魂に火が付いた。その原点は、
「昔、有楽町に日劇という劇場があったんです。そこでは歌と踊りのショーを専門にやっていて、僕がまだ劇団にいたころ、よく見に通っていました。マジーともそこで出会ったんです。自分自身、そういう華やかなイメージを『マツケンサンバII』に持っていたのかもしれません」
見る人にパワーを与える、ゴールドに輝く着流し姿のマツケンは、今や歩くパワースポットといっても過言ではないだろう。そこで週刊女性では、マツケンサンバとコラボした「開運ステッカー」付録を企画し、このたび実現した。
見ているだけで幸運が舞い込んできそうなテンションアゲアゲのステッカーは、スマホに貼るのにぴったりなサイズから、メッセージや願いを書き込めるもの、手帳やハガキなどに貼れるミニサイズまで、18カットがセットに。
明るく前向きでいるコツ
できあがった見本を松平さんに見ていただくと「ほぉ」とひと言発した後、
「いろいろな種類があって楽しいですね。読者のみなさんにも見てもらって、元気が出ればうれしいなと思います。僕だったら、携帯や台本にでも貼ろうかな(笑)」
とニコリ。そんな松平さんご本人は、開運祈願や験担ぎをするのだろうか?
「役者は験担ぎをするイメージがあるかもしれませんが、僕は意識してしまうと逆に縛られてしまうような気がするので、これといって決まったことはあまりしていませんね。ただ、地方で公演があるときは、その地域の氏神様が祀られている神社へ舞台の成功を祈願して、初日と千秋楽は必ず手を合わせるようにしています」
今年の11月に古希を迎えるとは思えない、若々しさをキープし続けている松平さん。その若さの秘訣を伺うと「睡眠、運動、食事には気を使ってます」というシンプルな答えが。
「睡眠は7時間前後です。やっぱり質のいい睡眠が大切なので、枕はずいぶんと替えましたよ。なかなか理想の枕に出合えなくて、結局、美容整体師の井上剛志先生とコラボして『健眠枕』を開発しました(笑)。それからはぐっすり眠れるようになりましたね」
この枕は通販で購入可能で、次は「地方公演にも持ち運べる携帯型のものがあれば……」と思案中だという。
「運動は毎朝1時間のウォーキングを欠かしません。食事は、暴飲暴食をしないように気をつけて、昼間はしっかり食べて夜を軽くしたり。お肉、魚、野菜をバランスよく食べています」
そして、心の健康のためにリラックスする時間を大切にしているそう。松平さんはシャワーではなく、毎日湯船につかり、その日の疲れはその日のうちに取るようにしている。必須なのが入浴剤。意外にも、好きな香りはローズ系やフルーツ系なんだとか。
いつもハツラツとしたエネルギーを発している松平さんに、明るく前向きでいるコツを聞くと、「自分にとって楽しいと思うことを見つけること」と即答。
「何でもいいと思うんです。趣味に没頭するのもいいし、旅行に行くのでもお笑いを見るのでも……。ペットを相手に癒しの時間を過ごすのでもいいですよね。僕はみなさんが何をしたら喜んでくれるのか、考えることがすごく楽しいんです。どうしても仕事の話に関連しちゃうな(笑)」
また松平さんが、仕事場に向かう前にテンションを上げるためにするのが、車の中で大声を出すこと。
「車の中は誰もいませんからね。発声の練習も兼ねて歌ったりもしますよ。車外に声が漏れていないか心配になって、信号待ちのとき横の車をのぞいたりするけど(笑)」
YouTubeチャンネルを開設した理由
2020年には公式YouTube『マツケンTube』を開設し、今では登録者数16万人を突破、間もなく17万人に届く勢いだ。
「YouTubeを始めたのはコロナ禍で舞台の仕事ができなくなってしまったときに、ファンの人がふさぎ込んでいないか、じゃあ元気が出る動画を撮って見てもらおうというところからスタートしたんです。ドラマと違って、自然な自分を見てもらういい機会かなとも思いましたし。だから、見る方が楽しんでくれているのがいちばんうれしいんですよね」
YouTubeチャンネルでは、手料理披露からギネスチャレンジ、おもしろグッズのお試しまで、視聴者を飽きさせない内容の動画を配信中だ。一番人気はもちろん、『マツケンサンバII』の公式ミュージックビデオ。1400万回以上再生されている。
そのほか、お笑いコンビのチョコレートプラネットとのコラボ曲も配信。常にチャレンジする姿勢が新しいファンを次々に取り込んでいる。
時代劇からマツケンサンバ、YouTubeまでさまざまな顔を見せてくれる松平さんだが、年末からは片岡愛之助主演舞台『西遊記』に妖怪の首領・牛魔王役で出演。来年はデビュー50周年、当代無双・マツケンの快進撃はまだまだ続く。オレ!
取材・文/花村扶美
まつだいら・けん 1953年愛知県生まれ。1978年、時代劇『暴れん坊将軍』で徳川吉宗役に大抜擢。2004年『マツケンサンバII』が大ヒット。2021年マツケンブーム再燃。11月3日~大阪を皮切りに片岡愛之助主演舞台『西遊記』の出演を控えている。