今年2月、JR千葉支社が大網白里市にある外房線永田駅の構内トイレを閉鎖した。利用者も少なく、維持費削減がその理由。閉鎖する前にJRは公衆トイレ化するため市への譲渡を提案したものの、財政負担の大きさなどを理由に断られたという。
昨年には、兵庫県西宮市の鷲林寺で、檀信徒のためのトイレが長年ハイカーによって使われ、汚されてきたことから撤去されたこともあった。管理の問題で各施設のトイレが閉鎖されるケースが相次ぐが─。
トイレマナーの向上が必要
「公衆トイレと民間の公共トイレを区別して認識しておきたい」と話すのはトイレ研究家の白倉正子さん。
「公衆トイレは公園などにある、行政が管理するトイレ。駅や商業施設にある民間が管理する公共トイレは基本的にその施設の利用者のためのもので、なくなったとしても文句は言えない。
前出の鷲林寺にしても善意で管理されており、マナーの悪さに悩まされていたのであれば、お寺側がうんざりするのも頷けます」(白倉さん、以下同)
白倉さんは日本でのトイレマナー向上が必要だと指摘。
「海外では有料の公共トイレが多いですが、日本では無料で提供される感覚が当たり前。むしろ、きれいでなかったり、トイレットペーパーがなかったりすることで、不満を漏らす人もいるくらい。非常に残念に感じます」
何か画期的な対策はあるのだろうか。
「コンビニのトイレを公共化しようという取り組みがあります。いつでも利用できて、公衆トイレよりも衛生的です。例えば、神奈川県大和市では公共化に協力する店を募っていました。市は店に対して資金援助はないものの、トイレットペーパーを支給するとしています」
こうした取り組みは公共トイレを増やしてほしいという市民からの要望でもある。
「私も大和市の件で地元の方に話を伺ったのですが、高齢の方が散歩などで使用される際、コンビニで使用したいけど、毎回何か買わないといけないのはハードルが高い。堂々と使用できるようにしてほしいという意見もありました」
問題解決への取り組み
誰もいない公園の公衆トイレなどは安全性の面が懸念される。だが、コンビニにとっては「迷惑の押しつけ」といった批判の声も。
「店側としては集客につながることも考えられますが、それでも負担は重い。公共トイレとしてなら、車いす用や多機能型トイレも求められることもあるでしょう。
そうなれば、スペースを広く取らなければならない。補修や改修に補助金を出したり、清掃スタッフの派遣などを検討することも必要かもしれません」
コンビニのトイレの公共化以外にも、問題解決に取り組む動きはある。渋谷区で実施されている「THE TOKYO TOILET」プロジェクトだ。
「デザイン性の高い“透明トイレ”など、何かと話題になっていますが、清掃やメンテナンスもしっかり行われています。トイレ診断士という専門のコンサルタントが入り、こまめにトイレの状況をチェックし、情報共有や問題解決の会議も行っているそうです」
この渋谷区の公共トイレを舞台にした役所広司主演の映画『PERFECT DAYS』も話題だが、白倉さんは「トイレマナーについて、さらに議論することにつながってほしい」と期待する。
日本のトイレはきれいといわれるが、管理する人がいてこそだと肝に銘じたい。