2021年10月31日の夜、凄惨な事件が起きた。
7月21日、東京・調布市を走行中の京王線の車内で乗客を刺し、さらには車内に火まで放ったとして殺人未遂などの罪に問われた服部恭太被告(25)の裁判員裁判で、検察は被告に懲役25年の求刑をした。
ハロウィンの夜、“ジョーカー”の衣装を身にまとい凶行に走った服部被告。SNSでは、乗客がパニックに陥って逃げ惑う様子や、誰もいなくなった車内で服部被告が悠然とタバコを吸う動画が瞬く間に拡散され、日本中を震撼させた。
週刊女性PRIMEは凶行直後、緊迫の事件現場を取材していた。
(以下は、2021年11月3日に配信した記事の再掲載です)
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《娘を助けてほしい……》
A子さんに友人のB子さんから切羽詰まった様子で連絡が来たのは、10月31日。ハロウィンの夜だった――。
京王線の車内で乗客が刺されるなどして十数名が重軽傷を負う事件が発生した。住所・職業不詳の服部恭太容疑者(24)が殺人未遂の疑いで現行犯逮捕された。
「放心状態で震えていた」
「容疑者は『バットマン』に登場する悪役のジョーカーのような派手なスーツとネクタイという出で立ちでした。京王八王子駅発、新宿駅行きの特急の列車内で、容疑者は刃物を振りまわした」(全国紙社会部記者)
70代の男性が胸部を刃物で刺されて重体になり、そのほか16人にケガをさせた。
「さらに容疑者は油とみられる液体をまいて火をつけています。車内のシートが焼けるなど30分近く燃えていたそうです」
そんな騒然となった列車内に、B子さんの高校生になる娘がいた。
《うちの娘が京王線に乗っていたら、車内で事件が起きた。パニックになっている。国領駅で降りているみたいだから、娘の服装を教えるので、助けてほしい……》
国領駅に列車が緊急停車すると、乗客は列車ドアが開かなかったため窓から次々と脱出した。A子さんはこの国領駅に隣接するタワーマンションの住民だった。B子さんは藁にも縋る思いだったのだろう。
A子さんが慌てて外に飛び出して、B子さんの娘を探した。駅周辺はまだそれほど普段と変わりはなかった。彼女に会うのは十数年ぶり。服装を頼りに何とか探し出すことができた。
「娘さんの無事を伝えると、B子さんが“よかった”と喜んでくれました。ですが、彼女は放心状態で震えていました。彼女も停車した電車の窓から逃げ出したようです」(A子さん、以下同)
B子さんは“これから車で迎えに行く”と言ったが、
「“こちらから送っていったほうが早いから”と車で娘さんを家まで送り届けました。すれ違う車がほとんどタクシーで迎車だったことを覚えています。電車が止まっていますから、乗客が帰宅するためのタクシーを呼んだんでしょうね」
学校に通えないほど心の傷を
A子さんは帰宅するために再び国領駅近くまで行くと、警察官、消防隊員、救急隊員などでごった返していた。そのため、マンションの駐車場にはなかなかたどり着けなかった。近くにいた警備員に尋ねても、
「こちらも情報がなくてね。わからないんですよ」
などと言われたという。駅周辺を何度もグルグル回って帰宅できるタイミングを待っていた。そのうちに、容疑者が目に入ってきた。
「紫色のスーツ、緑色のワイシャツという異様な姿で、堂々と歩いていました。その周りを警察官が囲むようにしていましたけどね。あとで列車内の映像を見ましたが、容疑者は車両内のシートに座って、ふてぶてしくタバコを吸っていましたよね。でも、ふかしているだけで、虚勢を張っているように思えました」
B子さんの娘はあの日、高校の文化祭だったという。
「役員か何かやっていたようで、あと片づけなどで帰りが少し遅くなったそうです。それで、あの列車にたまたま乗ってしまった……。しかも犯人と同じ車両にいたんだそうです。娘さんのショックは大きいようで、学校にはまだ通えていないようです。本当にかわいそうで……」
警察の取り調べに対し服部容疑者は、
「仕事や友人関係がうまくいかず、人が多いハロウィンの日に大量殺人を計画した」
と供述。容疑者のあまりにも身勝手な犯行に、心を傷つけられた人が多くいる――。