日本人メジャーリーガー初のホームラン王も視野に入るエンゼルスの大谷翔平。ホームラン後にかぶる兜も現地で話題になっている。
「兜は“サムライヘルメット”としてアメリカでも注目されています。実際、兜や大谷選手が兜をかぶったイラストが描かれたTシャツも応援グッズとして発売され、エンゼルスの選手が着用したこともありました」(スポーツ紙記者、以下同)
お気に入りのお菓子も有名に
大谷の活躍がアメリカで日本文化を伝えるきっかけにもなっているようだ。
「兜のセレブレーションが話題になったこともあり、その兜を製作している『甲冑工房丸武』が球団オリジナルの甲冑を寄贈。本拠地のエンゼル・スタジアムにシーズン終了まで設置される予定です。また、球団公式SNSでは折り紙での兜の折り方を紹介。5月5日にはテレビ中継で日本の“こどもの日”の説明をするなど、現地で日本文化に触れる機会も多くなっています」
さらに、大谷の活躍は日本の“食文化”も広めているようだ。
「大谷選手が日本のグミやガムなどのお菓子をチームメートに配ることもあります。特に人気なのが明治から発売されている『ポイフル』。大谷選手が大量に持ってきたことがブームのきっかけで、彼もベンチで食べていますよ。現地でも“ポイフル好き”は知られているようで、7月11日のオールスターゲーム前、レッドカーペットでインタビュアーを務めた13歳の少女から“日本食が好きで、特にお菓子は大好き。あなたのお気に入りをあげる”とポイフルを手渡されていました」
“SHOHEI売れ”の経済効果
“愛用品”まで注目される大谷。それを日米のファンが購入する現象まで起こっている。
「ポイフルをもらった映像が広まると、“大谷選手が好きだから”と買いにいく人が続出。CMに出演し、自身も愛用しているKOSEの『コスメデコルテ』の美容液は新規購入者が7割増えたそうです。兜のメーカーにも問い合わせや注文が多く寄せられていて、製作の予定は年内まで埋まっているんだとか」
こうした“SHOHEI売れ”は経済にどれほどの影響を与えるのか。理論経済学が専門で、さまざまな経済効果を算出している関西大学の宮本勝浩名誉教授に話を聞いた。
「昨年の大谷選手個人の経済効果は457億941万円と算出しました。この内訳には、アメリカでの球場にお客さんが足を運ぶ経済効果や中継の放映権料、年俸、グッズの売り上げ、スポンサーからの収入などがあり、日本からアメリカまで応援に行くファンによる経済効果、グッズの売り上げ、日本でのCM出演料などが含まれます。今年に関してはまだシーズンが終わっていないため、計算できていませんが、500億円は超えるでしょう。これは、一人のスポーツ選手としては、最高クラスです」
昨年の数字だけでも日本の阪神や巨人などの人気球団が優勝したときの経済効果と同等だという。今年はそれ以上の500億円を超えるというが、どういった要因があるのか。
爆売れの理由は“好感度”
「日本国内で大谷選手が出演しているCMの商品が売れている点が挙げられます。特に、昨年までは化粧品といったものはほとんど計算に入れていませんでしたが、今年からは入ってくることになる。それは、今まで野球のルールすら知らなかった中高年の女性がWBCでの活躍を見て、大谷選手が出ているからという理由でメジャーリーグのテレビ中継を見ており、大谷選手が出演するCMの化粧品などを購入しています。化粧品以外にも、大谷選手が持っているものや食べているものと同じ商品をファンの人が買っていて、消費は増加しています。競技にまったく関係ないものがこれほど売れることはほとんどなく、そういった点でも他のスポーツ選手とはレベルが違います」(宮本名誉教授、以下同)
この傾向は日本国内だけにとどまらないようだ。
「アメリカでも大谷選手に関係するものが売れています。それだけではなく、大谷選手を通じて日本文化や食生活にも興味を持つ人が増えています。大谷選手が持っていなくても、日本の文房具やおもちゃ、漫画、扇子などの日本文化を感じさせるものが売れているようです。イチローさんや松井秀喜さんなどもメジャーリーグで活躍しましたが、現地の人が日本文化に興味を持つまでの影響力があるのは大谷選手くらいでしょう」
大谷には直接関係しない商品だが、なぜ多くの人の購買意欲を刺激させるのか。
「大谷選手の好感度が関係していると考えられます。グラウンドにゴミが落ちていたら拾ってポケットに入れる、他の選手のバットを拾ってあげるといった人間性という部分が、消費者の心を動かしていると思います。
好感度が高いというのは、日本でもアメリカでも中高年の女性が“自分の娘や孫と結婚してほしい”と話していることにも表れています。また、企業側からしても、大谷選手をCMに起用すれば商品の売り上げが伸びて、不祥事を起こすという心配もないので、これからもスポンサーは増えていくでしょう」
“日本文化の伝道師”になっている大谷。その影響力はとどまらなそうだ。