7月22日、23日に放送されたフジテレビ系『FNS27時間テレビ』の目玉企画の一つだった、「100キロサバイバルマラソン」でのゴールシーンをめぐって論争が起きている。
参加者18人中で完走したのは6人と文字通りのサバイバルとなったのだが、30度を超える過酷な条件の中で、女性走者として唯一100キロを走り切ったのが井上咲楽だった。
持ち前のガッツで見事に4位でフィニッシュした井上だったが、足元から崩れ落ちるようになるも何とか両手をついて倒れるのを堪える様子。後続者の邪魔にならないようにゴール地点から離れようとしたのか、自ら立ち上がろうとするも身体が言うことを聞かずにうずくまってしまう。
その間、カメラは意識もうろうとする彼女を捉え続けるも、時間が押していたのだろうか、実況担当の倉田大誠アナウンサーは井上のゴールにも触れずに、「楽しみでなりません。軽部(真一)さん、永島(優美)さん、お返しします」と番組フィナーレを飾る漫才企画に言及。そのまま井上が“放置”されようとした、その時ーー。
ゴール地点で倒れ込む彼女を前に、ただ立って見ていた他のマラソン参加者やスタッフを押しのけるように駆け寄ったのが、自身も参加者ながら深夜に脱落していたお笑いコンビ『東京ホテイソン』のたけるだった。
井上に近寄っては肩をポンポンと叩くと、氷のうを手渡してはジェスチャーをしつつ「首の後ろ冷やして」と声をかけたのだろう。すると、ようやく顔を上げて「ありがとうございます」と感謝するリアクションを見せる井上。
介抱した2人に「かっこよすぎて惚れた」
さらに同じく演者である女性野球選手・片岡安祐美も駆けつけて、井上の首にタオルをかけて介抱すると、それまで心配そうに見ていた中継リポーターの『コットン』きょんも寄ってきては「大丈夫?」と声をかけたのだった。このシーンにネット上では、
《井上咲良ちゃんに駆け寄ったのたけるさんだったのか!見てたけどゴールした後誰も来なくて心配してたから1番にたけるさんが助けに来て優しい方なんだなって思った》
《井上咲良ちゃんの走りに感動したし、ゴールの後動けなくなってしまったところに駆け寄ってくれた東京ホテイソンのたけるさんと片岡あゆみさんがかっこよすぎて惚れた》
真っ先に駆け寄ったホテイソン・たけると介抱に当たった片岡を称賛する声が上がっている。その一方で、
《たけるくんと片岡さんがやったことは賞賛に値すべきだけど、美談にしちゃいけないわ。安全対策どうなってんの?下手すると死ぬよ?》
《テントの用意もゴールした人に氷や水の用意もなくて、本当にかわいそう、、、走った人が氷あげてるし、フジテレビスタッフ何やってんの?》
《フラフラでゴールの床に倒れ込んでも誰もタオルも水も渡さ無いじゃん… あんな炎天下の床なんか黒くて火傷するだろ、マットとか日陰ぐらい設置しろよ、無能なスタッフばかりやな》
命の危険をともなう炎天下でのマラソン企画を実施しながらも、安全対策や演者へのフォローができていないように映った現場の対応に疑念が持たれている。
女性だから手を出せなかった
またゴール地点にいた出演者たちが、他のゴールした男性走者を支えたり、抱き合ったりしたにも関わらず、井上だけを介抱することなく“放置”し続けたことにも議論が起きている。多く見受けられるのが「女性だから手を出せなかった」という論調だ。
バラエティー番組に携わる放送作家も「下手すればセクハラ問題になりかねません」との、テレビ界に渦巻くコンプライアンス問題を論じる。
「ゴール地点にいた出演者やスタッフのほとんどが男性だったと見受けます。SNS監視にある昨今のテレビではセクハラ扱いされないために、タレントや芸人は“女性タレントに安易に触れてはいけない”という風潮もあり、過剰に気にするあまりに“動きたくても動けなかった”との意識があったのかもしれません」
2017年12月、AED(自動体外式除細動器)を男性から使われた場合、「“セクハラで訴える”と答える女性が多かった」などといったアンケート結果を公開するツイートが拡散され、SNSでは「何もしない方がマシ」「もう女性を助けられない」などの声が上がった。
ところが、アンケートも含めたツイート内容がデマであることが発覚して投稿者が謝罪。それでも2022年6月、倒れた女性に対してAED使用を試みようとした男性に、その女性が「危うくAEDをやられそうになった」との投稿が再び物議に。善意から女性を助けようとしたところ、逆にセクハラや痴漢の疑いをかけられるリスクが訴えられた。
女性スタッフを待機させるべきだった
「あのゴールシーンにおいて、井上さんを介抱したことで“セクハラ”と騒ぎ立てる人はいないでしょう。それでも“助けなきゃ”という気持ちよりも、リスクの方が頭をよぎって勇気を持って踏み出せなかった出演者もいたのかもしれません。
とはいえ本当に命に関わりかねない場面。スタッフではなく出演者が動かなければならなかった、気を遣わせたこと自体がすでにアウトでしょう。危険が伴う企画を実施するのであれば医療班は言わずもがな、介抱担当する女性スタッフを待機させることも念頭に入れておくべきでした」(前出・放送作家)
心配された井上だったが、マラソン終了後に自身のインスタグラムを更新。スタッフに両腕を抱えられて現場を後にする満身創痍な姿を投稿し、
《27時間テレビ、100キロマラソン完走しました!長かったーー16時時間半!一生の糧になります。素敵な経験をありがとうございました!!》
ポジティブに綴った彼女のもとには「感動しました」との温かなコメントが寄せられている。