シンシア

 在日三世として東京に生まれ、人気シンガー、クリスタル・ケイ(37)を女手ひとつで育てたシンシア(60)。米海軍横須賀基地勤務の男性と結婚し、29歳で別居。シンガーとして働き、30歳のときメジャーデビューを果たす。

当時のSMAP・木村拓哉に娘のクリスタルを預けて

「私の所属はビクターの第一制作という部署で、サザンオールスターズやkiroro、広瀬香美さんなど錚々たるアーティストが在籍していました。デビュー時に私を担当してくれた方がSMAPの担当と兼任していたので、

『SMAPに用事があるのでちょっと寄っていいですか?』と、そのビクターの担当に言われ一緒にSMAPの現場に私も度々足を運んでいます。

 SMAPは当時デビュー間もなく、テレビ東京の『愛ラブSMAP!』に出ていたころ。
 あるとき『愛ラブSMAP!』の現場で私に急用が入り、1時間ほど出なければならなくなってしまった。

 私はいつも娘を自分の仕事場に連れていて、そのときもクリスタルと一緒でした。さてどうしようかと悩んでいると、木村拓哉さんが、『僕が見ていてあげるよ』と申し出てくれた。

 用事を済ませて現場に戻ると、娘が、『ママ、これ、キムタクが描いてくれたの!』
とうれしそうに駆け寄ってきました。それは娘の似顔絵で、今も大切にわが家の家宝にしています

続けて楽曲リリースするも自分らしくないと違和感

 事務所は新人歌手・シンシアに力を入れた。シングルはすべてタイアップがつき、アルバムも立て続けにリリースしている。

「デビュー翌年の1994年5月にファーストアルバム『This Time』をリリースし、8月にリリースしたセカンドシングル『DAY AFTER DAY』は常盤貴子さん主演のドラマ『カミング・ホーム』のエンディングテーマ曲になりました。

 続いて'95年1月にセカンドアルバム『EVERY DAY』をリリースし、'96年4月にリリースした3rdシングル『おんなは負けない』はナショナル くるくるカーラーのコマーシャルソングに、'97年12月にリリースした4thシングル『つかずはなれず、恋知れず』は濱田万葉さん主演のお昼の連ドラ『これで家族』の主題歌に採用されています。テレビの歌番組で歌う機会もありました。

 歌を歌うことが純粋に好きだった。でももともとテレビに出たい、有名になりたいという欲のなかった私に、テレビで歌えてうれしい、という気持ちはありませんでした

 “歌手・シンシア”のイメージは飾り立てられ、これは自分ではない、自分らしくない、と不満が募った。

「当時は今井美樹さんが絶大な人気を集めていて、白シャツにジーンズが彼女のトレードマークになっていました。事務所は私をあの爽やかなイメージで売り出そうとしましたが、実際の私は派手なネイルにキツいロングのソバージュ姿で、今井美樹さんとは正反対のスタイル。

 サトシの影響もあり、すっかり夜の世界に浸っていました。けれど当時のポップスは明るいお日さまの下のイメージが求められ、事務所は夜のムードはダメだという。衣装は白シャツにジーンズ、時にはスーツ姿で、本来の私とは遠くかけ離れたものでした。

 事務所は良かれと思って口うるさく言い、私は違う自分を強いられるのが嫌でいちいち反発をする。きっとそこでヒットがポンと出れば良かったのでしょう。でもそううまく事は運ばなかった。さらに事務所との折り合いは次第に悪くなっていきました」(次回に続く)

<取材・文/小野寺悦子>

 

7月中旬、母と2人でクルーズ船に乗り旅行へ出かけました。沖縄、台湾などを周遊し、夏らしくリラックスした旅ができました

 

7月8日、クリスタルはLAで開催されたドジャースvsエンゼルス戦で国歌独唱を務めた(c)Los Angeles Dodgers

 

横浜のバーで歌っていたころのシンシア。娘のクリスタルには歌を教えたことはないというが、気づけばその遺伝子を継いでいたよう

 

幼少のころから才能を感じさせていた娘のクリスタル・ケイ。家には楽器などもあり音楽には慣れ親しんでいた

 

ニュージャージーで結婚式に参列したときの写真。娘のクリスタルはいつも男の子っぽい服装を好んだけど、珍しく女の子らしい服

 

アメリカのドラマに登場しそうな広い芝生の庭に大きな家。写真に写っているのは娘のクリスタル・ケイと、愛犬のデューク

 

クリスタル・ケイが1歳のときに引っ越してきたという住宅地区は、根岸にあるアメリカ海軍の専用地

 

20歳ごろのシンシア。トニーがドライブデートの際に撮った写真。ファーに白のパンツやブーツという格好が懐かしく時代を物語る

 

横浜で歌っていたころのシンシア。『マジック』や『BarBarBar』などは業界関係者がよく出入りして、デビューの足がかりの場になっていた

 

ついに待望の女児を出産。3980gで「とにかく大きな子だった」というシンシア。健康に生まれてきてくれたことにホッとする

 

20歳くらいにフィルと付き合っていたころのシンシア。横須賀にあったバーガーショップ『アンディーズバーガー』で働いていた