旅エッセイが話題の料理家・山脇りこさん

「50代からが最強にして最後の“ひとり旅適齢期”だと思います」

 と話す料理家の山脇りこさん。旅行が好きで、50歳を過ぎた今、好きな時に好きな場所を自由に巡るひとり旅の楽しさに目覚めたという。

自由なひとり旅でごきげん貯金を!

 京都や金沢への1泊2日の旅行から、パリやバンコクへ家族旅行の前乗りでのひとり旅まで、国内外、合わせて20か所以上を旅してきた。

「酸いも甘いも経験している50代以降は無鉄砲な行動はほとんどしませんし、自分の身の丈に合ったお金の使い方もわかっています。それに、何か起きた時の対処法も自分で判断できますし、体力もまだあるので、ひとり旅にはピッタリの年代だな、と思うのです」

和菓子好きが絶賛する奈良の有名店『樫舎』でひと休み(山脇さんのインスタグラムより)

 実際、山脇さんがひとり旅をするようになって感じたのは、ひとりで過ごす時間の楽しさと安らぎ、そして充実感。

「家族がいる場合、そちらを優先して、自分の時間をなかなか持てなかったりしますよね。仕事が休みでも、ごはんを作ったり、完全な休日ってそうそうない。

 でも旅行に行けば、まるっとお休みになります。それに、家族と一緒の旅だと、何だかんだで面倒をみちゃう(笑)。一方で、ひとり旅はすべてが自分の時間。ほっと落ち着ける、“心の凪に”欠かせない貴重な時間だな、と」

 また、50代は更年期症状などで心身共にストレスをため込みやすい。ひとり旅を満喫することは、こうした負の感情をため込まないことにも役立つという。

「日常生活の中で不機嫌になった時に、旅の思い出の引き出しからごきげんな気持ちを取り出して、“よし、もうちょっと頑張ろう”と思える。

 旅先だと自分と向き合う時間もできるから、悩みも解消できたり。鬱々(うつうつ)とした気持ちが晴れるので、家族にも優しくなれる気がします」

ひとり旅の魅力は「失敗がない」こと

 とはいえ、根は「大変なビビリ」だという山脇さん。若い時にひとり旅をした経験はあるものの、ひとりでの食事やお酒は今も苦手だそう。

 また、結婚後はいつも夫婦で旅をしていたので、久々のひとり旅は、まさに恐る恐るのスタートだったのだとか。

「まずは、自分の長崎の実家からの帰りに京都に一泊だけ寄り道をしました。ほかには、夫との旅行の時に“ちょっとだけ先に行く”ということも。行き先も夫や友人と過去に行ったことがある場所を選んでいます」

 山脇さんのひとり旅の楽しみ方のひとつが、「歩いて回る」こと。その街の観光スポットだけを飛び石のように訪れるのではなく、気の向くままに歩き、目に留まった店をのぞいたり、その街の日常に触れるような旅が好きだという。

 移動は基本、公共交通機関のみを利用し、疲れる前に休み、無理な冒険はしない。そして何事もポジティブに受け止める……旅を重ねる中で、そんなマイルールもできた。

「予定を立てて行っても、結局は一か所しか回れなかったとか、最初に行った美術館が気に入って、一日中そこで過ごしてしまった……なんてことも珍しくありません。それでも自分が楽しければOK。

 自分だけの時間ですから、好きなことを思いっきり満喫します。そういう意味では、ひとり旅には“失敗はない”。ケガや事故がなく無事に帰ってこれたら、そして自分が楽しかったら大成功です」

山脇さんの故郷、長崎をひとり旅で訪れた時の一枚。饅頭屋さんの春の名物「桃饅頭」

ちょっとのワザで旅は楽しくお得に!

 ひとり旅をする際は、何から準備をすればよいのか。

「私の場合は、普段から“行きたい場所”を集めたリストを作っているのですが、それを旅の予定を考える時に役立てます。雑誌や友人に教えてもらったおすすめの場所や店をグーグルマップに保存し、『行きたい場所リスト』を作成しておくんです」

 グーグルマップには、気になるお店やスポットを「保存」しておく機能が。さらに、「京都で行きたい場所」などのオリジナルのリストを作って保存をすれば、後からまとめて見ることも。

 山脇さんはその中から、旅行先で行ってみたいお店や場所を決め、その場所へのアクセスがいいホテルをチェックし旅の計画を立てていくという。

「行きたいところを決めたら、次に宿泊先を探します。ホテルは旅の疲れを癒す場所なので、ある程度きれいで安全な場所を予約します。

 グーグルマップで行きたい場所に近い気になるホテルをタップすると、いくつかのサイトの案内が出てくるので、日付を指定すれば満室状況や価格も一目でわかります。よりお得な価格のところから見て、予約をするようにしています」

 また、ひとり旅最大の悩みでもある晩ごはんのお店も、グーグルマップでクチコミやお店の様子を確認。ひとりでも入りやすいカウンターの席があるかなどをチェックしているそう。

 晩ごはんのお店選びは、山脇さんの旅の楽しみでもある、朝ランの時に立ち寄って下見することもあるという。

旅先での朝のランニングは訪れた街の「日常」を感じることができる最高の時間! 足を延ばして気になるお店の“下見”に行くことも

「友人と旅をする時は、夜更かしをして過ごすのも楽しいですが、ひとりの時は朝、旅先で走るのを楽しみにしています。まるでその街で暮らしている気分になれますから。時には気になるお店の下見もできて、一石二鳥です」

 この夏は、大満足のひとり旅に出かけてみては。

50歳ごきげん旅【3か条】

1.疲れたらちょっとひと息。とにかく無理をしない!

 旅行中の移動は、いろんな発見があるので基本は徒歩がおすすめ。遠い場所に行きたい時や疲れた時は公共交通機関を利用する、カフェでも公園でもいいから立ち寄ってしっかり休憩を取るなど「無理をしないこと」がいちばん!

2.はじめてのひとり旅は一度行ったことがある街へ

 ひとり旅のスタートは、まったく知らない街より家族や友人と一度行ったことがある、知っている街を選ぶと◎。特に帰省や家族との旅行の時に「ひとりで先に行く」スタイルは家族への罪悪感も少なく、おすすめ。

3.グーグルマップを活用して賢く宿探し

グーグルマップを活用して賢く宿探し

 ひとり旅でいちばん大切なのは「無事に帰る」こと。そのためにもできれば安心・快適なホテルを旅行前に手配するのがベター。グーグルマップを活用すれば、各予約サイトの価格も一目で比較でき、お得に、簡単に手配できる。

『50歳からのごきげんひとり旅』著・山脇りこ(だいわ文庫)※画像をクリックするとAmazonの商品ページにジャンプします。
山脇りこ●料理家。テレビやラジオ、雑誌、Webにて作りやすく親しみやすいレシピを発信するほか、趣味である旅や食、生産者をテーマとした取材・執筆も行う。初めての旅エッセイ『50歳からのごきげんひとり旅』(だいわ文庫)が発売からわずか4か月で10万部を超え、話題に。

(取材・文/大野ルミコ)

 

大好きな台湾での一枚。家族や友人と何度も足を運んだ場所も、改めてひとりで訪れることで新たな発見・出会いも多いという

 

山脇さんの故郷、長崎をひとり旅で訪れた時の一枚。饅頭屋さんの春の名物「桃饅頭」

 

和菓子好きが絶賛する奈良の有名店『樫舎』でひと休み(山脇さんのインスタグラムより)

 

旅先での朝のランニングは訪れた街の「日常」を感じることができる最高の時間! 足を延ばして気になるお店の“下見”に行くことも

 

グーグルマップを活用して賢く宿探し

 

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