タレントのマツコ・デラックス(50)が7月8日放送の『マツコ会議』(日本テレビ系)で番組終了を匂わせた。この日の番組にはフランス・パリ在住の女優・杏と父の渡辺謙が現地からの中継で出演。2人の多拠点生活の充実ぶりに「決めました! 私はどこかに行きます。あなたたちともそろそろお別れですよ」と番組スタッフに発言したのだ。
4日付の「日刊スポーツ」でも『マツコ会議』が「9月末で終了する見込み」と報道されたばかりだったため、ネットでは《やっぱり終わってしまうのか……》と残念がる声が上がっていた。もしマツコがあらゆるテレビ番組を降板した場合、その枠を担う“ポスト・マツコ”はいるのだろうか。
1位は女装家の枠では“戦友”のアノ人
「マツコ・デラックスさんはテレビで活躍する要素をすべて兼ね備えている唯一無二の存在です」
そう語るのはメディア研究家の衣輪晋一さん。
「バラエティーやドラマで活躍するタレントは、女性からの支持がなければ生き残りにくいといわれています。マツコさんも『私の支持層は圧倒的に女』と公言されていますし、女性ウケは大事なポイント。そしてマツコさんの魅力は的を射る率直なコメントを言えるところですが、強くズバッと言えて、なおかつ女性からの好感度も高い人というのは少ない。ただ、部分的に重なる要素を持つ人が、マツコさんのように活躍する可能性はあるでしょう」
“ポスト・マツコ”に近い有名人は誰なのか。女性からの支持が高いことが条件ということから、女性600人にアンケートを行った。そこで名前がもっとも挙がったのは盟友とも呼ぶべきミッツ・マングローブ(48)だ。
「育ちの良さもあるのか、ズケズケ言っても嫌みにならない」(千葉県・54歳)、「ひとつひとつの言葉を大切にしていて、発言が常に感慨深かったり含蓄のある言葉で心に響くから」(埼玉県・55歳)
衣輪さんも「同じく女装家という枠では“戦友”ともいうべきミッツさん。名前が挙がるのはしかるべき」と太鼓判を押す。
「芸能活動をする前はマツコさんとも営業で全国を一緒に回っていたこともあるという近い存在。マツコさんと同様に、冷静かつ客観的に物事が見られる方ですし、『マツコ会議』のような番組をするとしてもソツなくこなせるでしょう」(衣輪さん)
さらに、女装家であることはテレビでは大きなポイントだという。
「マツコさんは常々自分をテレビの中の“異形”だとおっしゃっています。テレビは見世物小屋からの延長で、ちょっと変わっている人を見る場所なのだ、と。そういう意味で、マツコさんやミッツさん、ナジャ・グランディーバさんのように独特の存在感がある人にスポットライトが当たるのは必然かもしれません」(衣輪さん)
ドラァグクイーンで歌手のドリアン・ロロブリジーダ(38)など、次世代“女装家”もポスト・マツコ候補になりうるだろう。
女装家に限らず、ゲイの人の毒舌は冗談として受け入れられ、女性に支持されやすい面があることも指摘。
「テレビでそこまで消費されすぎていない人のほうが今後の伸びしろはある。そういった意味で私が注目しているのは、ABEMAなどでも活躍するカマたくさん。歌舞伎町のゲイバー店員をしながら10年ほど前からSNSで配信しています。現在Twitterのフォロワー数は137万人以上。YouTube配信も人気で、視聴者からの悩み相談などではユニークで鋭い回答をされています。6月に大阪でカマたくさんが出演したイベントには、中高年の女性が多く集まっていました。ブレイクの条件がかなりそろっていると思いますね」(衣輪さん)
と、これからの地上波での活躍に期待する。
正論を言うマツコに対し、ヒコロヒーは物事を切り取る角度が独特
アンケートでは、的確な発言ができるという点でカズレーザー(39)の名前を挙げる人も。
「忖度なしに的確に発言する。頭がキレるところもいいと思う」(茨城県・53歳)、「誰にも臆することなく自分の意見を自分の言葉で伝えられる人」(徳島県・53歳)など、クイズ番組で見せる知識量やコメンテーターとしての活躍ぶりを評価する声が多く上がっていた。
「知識の豊富さや頭脳明晰さ、コメントを求められたときに的確かつ印象的な切り返しができる点で、カズレーザーさんはタレントの中でも傑出しています。金髪&真っ赤な衣装といういでたちで、キャラクターも際立っている。今も多くのテレビ番組に出ていますが、今後は『マツコ会議』のような番組のMCも務められるのでは」(衣輪さん)
同じく歯に衣着せぬ発言で人気のヒコロヒー(33)もアンケートで名前が挙がった。
「なんでもずばずば思っていることを忖度なく言っている感じがするけど、実はすごく細やかに気配りしている感じがする」(岡山県・48歳)、「ちょっとやさぐれているけど、優しそうな雰囲気と聡明さを感じる」(宮城県・42歳)、「ナチュラルな存在感が好ましい。彼女の『マツコ会議』のような番組が見てみたい」(大阪府・33歳)など、好意的な意見が多かった。衣輪さんもヒコロヒーの発言力には注目しつつ、マツコと違う点もあると補足する。
「マツコさんは正論を言うのに対して、ヒコロヒーさんは物事を切り取る角度が独特。新しい見方が提示できるので、そういう意味では新しいタイプのMCになれるかもしれません」(衣輪さん)
ヒコロヒーの他にも女性芸人の名前は多く挙がった。
「物おじしない感じと周囲への配慮のバランスがちょうどいい気がする」(長野県・31歳)という理由で大久保佳代子(52)や、「水谷千重子でトーク番組の司会をしてほしい」(新潟県・57歳)という意見で友近(49)を推す声も。
そして、衣輪さんが意外と共通点が多いと注目するのはテレビプロデューサーの佐久間宣行氏(47)。「マツコさんのサブカルに精通している部分や、言語化する能力の高さなど、佐久間さんにも共通する部分は多いと思います」(衣輪さん)
マツコも佐久間氏も、“テレビ愛”という共通点があると衣輪さんは注視する。
「マツコさんは制作側と視聴者、両者の俯瞰的な目線がある。僕がある番組を取材したときにも、マツコさんが制作陣に『こんなやり方していたらつまらない番組になる、視聴者にはすでにバレている』と忠告をしている場面に遭遇したことがありました。マツコさんは、テレビへの愛が反転したような、テレビ批判を番組内でも口にします。佐久間さんも、そうした視点はテレビマンだからこそあるでしょう」(衣輪さん)
さまざまな“ポスト・マツコ”の候補を挙げてきたが、今回アンケートを取った中では「マツコさんの代わりはいない」という声が目立った。
「それだけマツコさんのすごさが認知されているということ。前述してきたマツコさんの特徴である“的確な発言”や“テレビ愛”、“異形”という立ち位置からのオリジナリティーあふれる発言。すべてをカバーできるような人はなかなか出てこないでしょう」
マツコにはまだまだテレビで活躍して、たくさん毒舌を聞かせてほしい!!
衣輪晋一 メディア研究家。雑誌『TVガイド』やニュースサイト『ORICON NEWS』など多くのメディアで執筆するほか、制作会社でのドラマ企画アドバイザーなど幅広く活動中
取材・文/諸橋久美子