2017年、ロサンゼルスの飲料水メーカーが発売した「リキッド・デス」。直訳すると「死の水」だけど、中身はミネラル・ウォーターや炭酸水

 “ソバーキュリアス”という言葉をご存じだろうか。近頃ジワジワと世間に浸透してきているライフスタイルのひとつ。「お酒は飲めるけどあえて飲まない」スタイルのことを指し、「sober(しらふ)」と「curious(好奇心)」を組み合わせた造語である。

 欧米ではZ世代やミレニアル世代の若者を中心にトレンドとなり、そこから日本にも広まった。禁酒や断酒といった、飲むのを我慢するネガティブなものではなく、あくまでポジティブに飲まない選択をするという。日本の大手ビールメーカーもこの市場に注目。ノンアルコールビール飲料の出荷量も例年右肩上がりだ。

 若者向けWEBメディアなどを運営する、株式会社MTRL代表取締役の佐野恭平氏に話を聞いた。

Z世代は『コスパ(コストパフォーマンス)』や『タイパ(タイムパフォーマンス)』を重視します。飲むことに対するメリット・デメリットを判断し、自分へのリターンを考えた上で“あえて飲まない”という選択をする若者は多い。また常にスマホが手放せない若者にとって、お酒での失敗はリスクそのもの。友人のインスタグラムのストーリーズに投稿されたり、気が大きくなりハメを外した動画がTikTokでバズって大炎上……。そんな先人たちによる失敗事例を多く見てきたためデメリットを大きく感じているのでは。みんなが監視し合うSNS社会で、他人に弱みを握られたくないと本気で思っている若者もいます

数年前まではなかった12〜13%の強・ストロング系、進む2極化

「飲みニケーション」はひと昔前の文化となったのか。

「コロナ禍によって、お酒を教えてくれる先輩に出会う機会も減りました。職場での人間関係に限らず、異性との関係でもお互いが与え合う都合のいい“言い訳”として機能していたのがお酒。20代男子の4割が異性とのデート未経験というデータもあるので、そもそも恋愛自体を必要としていない若者にとって、お酒を飲む機会自体がかなり減っているのもあるでしょう」

 ただ一方で高アルコール度数の缶チューハイも話題に。

「数年前まではなかった12〜13%の強・ストロング系飲料や、クライナーなどの“パリピ酒”も大学生〜若手社会人に人気があるので、単純に若者が飲まなくなっているという話でもないんです。これは二極化の傾向があるといえるでしょう」

 アメリカでは「リキッド・デス」という商品が2022年に売上高約190億円に達したと話題に。“ただの水”を“ビール風の缶で売る”という商品が若者に刺さった。

日本未上陸のリキッド・デスですが、日本の某スタートアップ企業が類似プロダクトを販売しましたが、結果は振るわず。“飲んでいてもダサくない水”は、本人の気分にかかわらず開催されるパーティーでシラフでいたい海外の若者にこそ需要が見込め、ヒットした商品なのかもしれません。日本の若者においてクラブに行くのは真の“陽キャ”のみ。シラフでいたい人は、お酒を飲んでいるふうに水を飲む演出なんてそもそもしませんから

 評論家の勝間和代もYouTubeで“ソバーキュリアスになろう”といった発信をしたり、オリエンタルラジオの中田敦彦もお酒との向き合い方にたびたび言及している。

 試しに“ソバキュリアン”になってみる?

 

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