堺雅人が主演を務める日曜劇場『VIVANT(ヴィヴァン)』(TBS系日曜夜9時~)。役柄やストーリーなど謎だらけで幕を開けた初回は、無料配信再生回数(TVer・TBS FREE)約400万回を記録。第3話の放送をへて、8月3日にはTVerのお気に入り登録者数が120万人を突破。視聴率も11.5%、11.9%、13.8%(世帯/関東、ビデオリサーチ)と右肩上がりだ。
『週刊女性PRIME』でほぼ毎クール掲載している『がっかりドラマ』企画でおなじみ、ドラマに精通する辛口コラムニストの吉田潮さんは、現時点までの『VIVANT』をどう見ている?
「結構楽しんでいるので、それほどの悪口は出てこないですよ(笑)。現地警察と派手なカーチェイスはやるわ、ラクダに乗って砂漠を歩くわで。“お金をかければいいってもんじゃない”と言う人もいますけど、素直にすごい映像だと思いました。『どうする家康』の初回の馬のCG騒ぎとは大違いですね」
すべての人が礼賛するドラマなんてあり得ない
1クールのドラマにも関わらず、2か月のモンゴルロケを敢行し、製作費は“1話で1億円”とも報じられている。
「数字が上がってきていることで、逆に厳しい目で見る人も出てくるでしょうね。そもそも、すべての人が礼賛するドラマなんてあり得ませんし」
丸菱商事で起きた誤送金。1000万ドルのはずが1億ドルを振り込んでいたとあって、疑われた乃木(堺雅人)は単身、バルカ共和国へ。現地組織に“ヴィヴァン”だと間違われたことで爆発事件に巻き込まれ、現地警察に追われる立場に。第3話で命からがら帰国し、今後は舞台の中心が東京になっていくよう。
「すごくわかりやすく“緑山スタジオで撮りました!”という画になると思うので、スケールダウンは必至です。それが気にならないぐらい展開が面白ければいいなとは思っていますね。もし、机上とサーバールームだけの物語になっていったら視聴者は離れるだろうなという気はします」
誤送金事件の真相、本当に“ヴィヴァン=別班(日本が公式に認めていない自衛隊の秘密情報部隊)”なのか、謎のテロ組織・テント、そして乃木の別人格……謎はまだまだてんこ盛り。
「乃木は別人格を“F”と呼んでいましたね。私は考察班じゃないから深く考えていませんが、“おそらくA、B、C、D、Eがいるのかな”など、いろんな想像はできますね。堺さんの演技力という部分ではまったく心配していませんし、むしろ陽も陰も演じ分けられる堺さんに驚かされたいなと私は思っています」
さらには阿部寛、二階堂ふみ……まるで大河ドラマのような豪華さと言われているキャスト陣。公式サイトの“登場人物”には40人超の俳優の顔が並んでいるが、役名まで明記されているのは25人(第3話終了時点)。主要キャストである松坂桃李の出演は合間に流れる『アタックZERO』のCMのみで、役所広司&未発表キャストだった二宮和也も1シーンの登場にとどまっている。
「まだ出てきてない人、いっぱいいますよね。大物を呼びすぎた結果、それぞれの俳優の見せ場がなくなる懸念はありますね。例えば、昨年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』もかなりのキャスト数でしたが、それぞれに見せ場と役割があり、物語の根幹に全員が必要とされていた。そして納得のいく形でちゃんと収束しましたよね。もちろん、1年をかけてそれをやった大河ドラマと比較するのは酷ですが」
『VIVANT』は福澤克雄氏が原作・演出を手掛けている。堺とタッグを組んだ『半沢直樹』('13年・'20年)で42.2%の最高視聴率をたたき出すなど、数々の日曜劇場をヒットさせてきた。
『VIVANT』はややこしすぎるかも?
「福澤さんは来年の1月で60歳の定年を迎えるそうなので、いわば卒業制作ですよね。過去の日曜劇場に出演した俳優が集結しているわけです。そして、過去の役柄への先入観もおのずと働きますよね。“今回は迫田孝也を信じていいのか?”みたいな(笑)。とはいえ、堺さんだっていつまでも『半沢直樹』の話をされるのも嫌でしょうし、視聴者だっていつまでも『半沢直樹』を求めているわけではない。『半沢直樹』くらい熱狂する作品が欲しいだけであって」
では『VIVANT』はそんな熱狂を生み出せそうか?
「うーん。『VIVANT』はややこしすぎるかもしれないですね。『半沢直樹』はとてもドメスティックな、ひとつの銀行の中の話なのでわかりやすかった。でも『VIVANT』はひとつの企業の話ではなく、国家、テロリスト、闇の組織……など、だいぶ大風呂敷を広げているように感じます。これだけの要素をたった10~12話程度の1クールで、納得の行く終わり方ができるのかどうか。スケールダウンとともに、そこが懸念材料かもしれません。とはいえ、そんな懸念すら抱かせないドラマはたくさん放送されていますけどね(笑)」
第4話の放送は8月6日。誰が出てきて、どう展開していくのか?