かつては左利きでも家庭や学校などで“お箸は右手、お椀は左手”などと教えられ、右利きに矯正させられることが多かった。しかし、最近は芸能界を見ても、食品のCMで小栗旬や小池栄子が左手で箸を持ち食事をする場面が。
夏ドラマでも、『真夏のシンデレラ』(フジテレビ系)主演の森七菜や、『18/40〜ふたりなら夢も恋も』(TBS系)の福原遥などの朝ドラ出身の若手女優も左利きだったりと、以前よりもサウスポーが見受けられるようになった。
右利きへの矯正率の低下
「20〜30年前と比べると確かに左利きの人は増えています。お箸は右手だけど、それ以外は左手など、そういう両利きの人を含めると、人口の約10パーセントが左利きだといわれています」
こう話してくれたのは、『日本左利き協会』発起人で、自身も左が利き手だという大路直哉さん。左利きの人が増えている理由は、右利きへの矯正率が下がってきているからだという。
「私たちが調べたところによると、50歳以上の左利き・両利きの人で、右手への矯正を受けたことがある人は約8割。特に女性は昔、右手で字を書くようにしつけないと母親の怠慢と思われたり、お見合いのときに左利きだから破談になったなんて話も昭和40年代くらいまであったと聞きます。それが30年くらい前から矯正率が減り始めて、いまの15〜24歳では37パーセントと、多い時代の半分くらいに。文字や箸を左手でというのは確かに増えていると思います」(大路さん、以下同)
不便なシーンは?
矯正率が下がっているものの、左手から右手へ変えさせようという例はまだあるそう。
「学校など教育の現場でも、まだありますね。例えば書道ですと、1クラス40人の中で左利きが1人となると、その子だけ特別扱いするわけにはいかないから、右手に変えさせられたという記事を最近でも見ます。東京書籍が発行している小学校の書写の教科書で、鉛筆を正しく持っている写真を、右利きと、左利きの両方載せていたりと、そういうものも出ていますが、まだ配慮が少ない感じですね」
では、左利きだと生活のどういう場面で不便を感じることがあるのか?
「例えば銀行のATM。タッチパネルでも操作できますが、暗証番号を押すテンキーが金融機関によっては、まだ右側にあるので左利きは操作しづらいですね。あとは、駅の改札機の読み取り部も右側なので、うまく通れずもたついている人を見かけたりします」
一方で、左利きの人向けの新たな商品も増えてきていると大路さん。
「左利き専門の文房具屋さんがあったり、インターネットでも昔より手軽に買えるようになってきました。100円ショップでも置かれるようになって、右端に0の目盛りがついていて、右から左に線を引くときに長さがわかりやすい定規などがあります。
文房具店では、右利き、左利き両方の人が使えるハサミも売られるようになって、こういったアイテムが公共機関などに置かれるようになると利便性がさらに上がる。ユニバーサルデザインの道具が、もっと普及する世の中になるといいなと思います」
右利きも左利きも住みやすい世の中になる日は、そう遠くないのかもしれない。