メジャーリーグのトレード可能期間も終わり、正式に今季のエンゼルス残留が決まった大谷翔平。日本時間8月4日には、2年ぶりとなる40本目のホームランを記録した。
そうした成績だけでなく、人間性も日米のファンや同じプロ野球選手からも愛されているが、その秘訣は、“コミュ力”の高さにあった─。
「日本人メジャーリーガーとはやはり仲がいいですね。特に、同級生の鈴木誠也選手と会うと、よくふざけあっています。6月には大谷選手が釣り竿を投げ、リールを巻くようなジェスチャーをすると、鈴木選手も餌をくわえるような動きをしていました。《大谷がスズキを釣り上げた》と話題になると、その2日後には役割を交代。今度は、鈴木選手が大谷選手を釣り上げていました」(スポーツ紙記者、以下同)
“レジェンド”とも交流
年齢の近い選手だけでなく、“レジェンド”とも親交がある。
「イチローさんとは日本にいるときから面識があったようです。大谷選手がメジャー移籍1年目のオープン戦で結果を残せなかったときには、大谷選手からお願いして、わざわざイチローさんの自宅に行ってアドバイスをもらったようです。その年の5月にグラウンドで再会し、大谷選手があいさつをしようと近づいたところ、イチローさんが走って逃げるというイタズラをされていました。
その後、大谷選手があわてて追いかけると、イチローさんが振り向いて握手をしていました。現在、イチローさんは、マリナーズの会長付特別補佐兼インストラクターの役職に就いているので、グラウンドで顔を合わせることもあります。そのときは、大谷選手が試合前のルーティンの途中でも駆け寄って、丁寧にあいさつをしています」
WBCでも、大谷流の謙虚なコミュニケーションが垣間見えた。
「大谷選手は'18年からアメリカに渡っていたため、侍ジャパンで初対面の選手も多かったんです。年上か年下かわからない人には、敬語で話しかけて“何歳ですか?”と丁寧にコミュニケーションを取っていました」
年下選手とはこんなエピソードも。
「オリックス・バファローズの宮城大弥選手が同級生で仲のいい佐々木朗希選手と大谷選手を間違えて、7歳年上の大谷選手にタメ口で話しかけてしまったんです。謝ってきた宮城選手に大谷選手は“おもしろかったからタメ口でいいよ”と伝えたそう。それ以降、宮城選手は“翔平、おはよう”などと、タメ口で話しかけていました」
語学力もバッチリ
異国の地でもその能力は発揮されているようだ。
「ベンチではチームメートとヒマワリの種の殻を投げ合ってふざけていたり、相手選手やチームメートのモノマネをしたり。昨年のオールスターでは、ヤンキースのアーロン・ジャッジ選手がフェンス際で打球をキャッチしたときのマネを、本人の目の前で披露。ジャッジ選手や近くにいた選手は爆笑していました」
メジャー6年目と、アメリカでの生活も長い。水原一平通訳もいるが、ジョークを言える英語力も備えているよう。
「同僚のサンドバル選手に英語で、“スタジアム正面に飾られていた写真がほかの選手に変わっていたぞ”と言うと、“本当か?”と驚いて聞き返された直後に“冗談だよ”とジョークを言って笑い合っていました。また、試合中に頭部付近に相手ピッチャーの投球が来たときには、相手の捕手に“次は君だよ”と英語で言ったり、デッドボールを受けると、相手の一塁手に“Tomorrow(明日な)”と言うなど、“二刀流ならでは”のジョークで、相手チームの選手を試合中に笑わせることもありましたね」
アメリカでは大谷の社交性について、どう思われているのか。現地で取材をするスポーツライターの梅田香子さんに話を聞いた。
「エンゼルスのエステベス選手は大谷選手について、“実はスペイン語がうまい。初めて会ったときにスペイン語で話しかけてきてびっくりした”と話していました。
エンゼルスの投手陣はドミニカ共和国など、公用語がスペイン語の国から来た選手が多いです。英語を理解できなかったチームメートに、大谷選手が通訳するということも。大谷選手は英語もスペイン語も勉強しています」
つまり大谷は、3か国語を使いこなす“トリリンガル”ということだ。
6月にトレードで加入したマイク・ムスタカス選手のデビュー戦では、6歳年上のムスタカスと握手をすると、そのままハグするというシーンもあった。そうした新しい仲間への気遣いもあるという。
「ベンチではトレードで加入してきたばかりの選手の隣に座って、よくコミュニケーションを取っています。これまでの日本人メジャーリーガーはベンチでは端のほうにいることも多かったのですが、大谷選手は新加入の選手に早くチームに溶け込んでもらおうと、積極的に話しかけていますね」(梅田さん、以下同)
動物にも“コミュ力”発揮?
こうして話しかける行動には、ある思いがあるようだ。
「自分がリーダー格だという自覚があるのだと思いますね。現在、エンゼルスはプレーオフ進出を狙える位置にはいますが、微妙な順位。球団も大谷選手を残留させて、トレードで補強し、今年は本気でプレーオフを狙うという熱意を感じます。大谷選手にとってもエンゼルスに来てからいちばん充実しているからこそ、チームを引っ張ろうと盛り上げているのだと思います」
大谷の“コミュ力”は人間以外にも……。
「通訳の水原さんの飼っている犬も可愛がっているみたいです。水原さんがよく車に乗せて連れてくるそう。ピッチャーは万が一、指をかまれたら投球に支障が出るため、犬を嫌う選手も多いですが、大谷選手の場合は気にしていないようですね」
反対に大谷が“猫”になったこともあった。
「6月に、メジャー13年目で34歳のエスコバー選手がトレードで加入してきました。エスコバー選手は猫が大の苦手。写真や映像、ぬいぐるみなども含めて嫌いのようです。
そんなベテラン選手に対して、大谷選手はウォーミングアップのときやホームランを打った後に、手首を曲げて“猫ポーズ”を本人の目の前で行っています。この行動に猫嫌いのエスコバー選手も思わず“おもしろい”と笑っていましたね」(前出・スポーツ紙記者)
野球での偉業だけでなく、こうした“人たらし”な部分が世界で愛される要因なのかもしれない。