※画像はイメージです

 各地で驚きの気温39度超えなど猛暑が続く日本列島。夏バテでお疲れぎみの身体にツルッと入ってくれる麺類は今年の夏も強い味方に!

 今回はそんな麺類にのどごしだけでなく、頭もすっきりさせてもらいましょう!まずはラーメンから。

創業70周年の老舗製麺会社

 お話を伺ったのは、生ラーメンの製造販売・外食店の開店などを手がける『西山製麺』。今年、創業70周年の老舗製麺会社だ。

「卵入りで黄色くてコシが強く、スープが絡みやすい縮れ麺という、現在おなじみの札幌ラーメンの麺は弊社が開発しました」

 とは、広報担当の西山克彦常務。

札幌ラーメンでおなじみの黄色い縮れ麺

「常温でのおみやげ生ラーメン販売も日本初、社内にラーメン店の厨房(ちゅうぼう)設備が完備されているのも全国の製麺会社の中で唯一であるなど、いろいろな“日本初”がある会社です」

 また1987年から札幌市の小学校3年生の社会科現地学習に取り上げられ、工場見学も実施。累計で40万人以上が見学しており、懐かしく感じる札幌出身の方も多いのでは?

 現在は世界35の国と地域に麺を輸出、日本のラーメン文化を世界に広めるなどラーメン愛にあふれる西山製麺から、えりすぐりのラーメントリビアを4つ教えていただいた。

約70年前に、西山製麺所(当時)が開発した

日本で初めてラーメンを食べたのは誰?

 日本でラーメンが庶民の間で食べられるようになったのは明治43年。東京・浅草の『来々軒』が日本初のラーメン店だそう。それに先立つ江戸時代に、テレビドラマでおなじみの水戸黄門(徳川光圀)が口にしたといわれていた。

「ところが、さらに200年ほど遡(さかのぼ)る室町時代に中華麺の起源『経帯麺』が食べられた記録が2017年に発見されたんです」と西山常務。

 1485年、中国の書物『居家必要事類』に、かん水(アルカリ水)を使った麺料理として『経帯麺』のレシピが紹介されていて、それをもとに室町時代の僧侶が調理し、客人に振る舞ったことが僧侶日記『蔭涼軒日録』に書かれていたという。

 麺の製法の記述はあったがスープや具材の記録はなく、「僧侶の調理なので魚や野菜を使ったあっさり味だったのでは」(西山常務、以下同)

 黄門様が食べたのは、現在のラーメンに近いスープと具材だそう。

 ちなみに黄門様は日本で初めてあんこう鍋を食べるなど、珍しい食材を試したり調理する、かなりの食い道楽。自らうどんを打つほど大の麺好きとしても有名である。

飲んだ後、ラーメンが食べたくなるのはなぜ?

 お酒を飲んですっかりいい気分♪そろそろ家に帰ろう、そんなときになぜか無性にラーメンが食べたくなったり、しかもそのラーメンがいつも以上においしく感じられることはないだろうか?

「実は、これにはちゃんとした生理学的な理由があるんですよ!」

 ラーメンスープを豚骨でとる店は多いが、秘密はこの「豚骨」に。

「豚骨スープに含まれるうまみ成分のイノシン酸には、なんとアルコールを中和する働きがあるんです」

 お酒を飲んで血液中に溶け込んだ多量のアルコールによって、身体は無意識にそれを中和するイノシン酸を欲し、お酒を飲んでいないとき以上にラーメンの香りに惹かれたり、おいしいと感じてしまうわけ。

ラーメン屋台と夜空に響くチャルメラの由来

「ドレミ〜レド ドレミレドレ〜♪」

 インスタントラーメンがまだ普及していない昭和30年代。「これを聞くと無性にラーメンが食べたくなった」と懐かしそうに語る団塊世代には「チャルメラ」でおなじみのメロディー。

昭和30年代に札幌で実際に使用されていたチャルメラ。西山製麺所蔵

 実は「チャルメラ」、曲名ではなくこの旋律を奏でる楽器の名前が由来だって知ってた?

「16世紀末の安土桃山時代、南蛮貿易が盛んだったころに、ポルトガルから渡来したオーボエの祖先といわれる木管楽器がありました。ポルトガル語で“チャラメラ”と呼ばれる楽器が、いつの間にか“チャルメラ”となったそうです」

 渡来当時は「南蛮笛」と呼ばれ、明治時代には中国人の飴売りが使っていたので「唐人笛」とも呼ばれていた。石川啄木も『一握の砂』の中で《飴売のチャルメラ聴けば うしなひし をさなき心 ひろへるごとし》と詠んでいる。

「中華そば屋台でチャルメラが使われるようになったのは、明治30年代後半の横浜が最初だとか。大正時代には東京でもチャルメラを吹く移動式屋台があちこちあったそうですが、今は見なくなり寂しいですね」

あまり見かけなくなった移動式のラーメン屋台。

ラーメン丼には、主流の4つの図柄が!その意味は?

 ラーメン丼に描かれている図柄。そういえば龍が描かれてたっけ?と、あまり気に留めていなかったが「見逃しがちなコレにも、深い意味があるんですよ」と教えてくれたのは、西山常務。

 主な図柄は「龍」「鳳凰」「雷文(らいもん)」「双喜文(そうきもん)」の4つ。

「龍」は「甘露の雨を降らし、五穀を成就せしめる」として中国では、古くから崇(あが)められる空想上の動物で天帝の使者を表す図柄。

「鳳凰」は、古代中国において最も高貴で、幸運を招く空想上の鳥。皇帝、皇后の紋章にも使われる。

上が「龍」、下が「鳳凰」

「雷文」は、ラーメン丼のトレードマークといえる、おなじみの四角い渦巻き模様。自然界の脅威の象徴である「雷」をかたどった中国伝統の文様だ。

「双喜文」は「喜」の字を2つ並べたデザイン。新郎新婦が並んで喜んでいる姿を文字にしたもので、本来は結婚式のみに使われた縁起のよい図案なのである。

上が「雷文」、下が「双喜文」

 西山製麺のホームページでは、ほかにもラーメンに関する役立つ話が盛りだくさん! ぜひご一読を。→西山製麺公式サイト(https://www.ramen.jp)

そうめんとひやむぎ、うどんの違いって?

 次はそうめん&うどんトリビア。長崎県南島原市で国産小麦100%の手延べそうめん・うどんの製造、無添加だしパックの販売・卸を手がける創業41年目の老舗製麺所『そうめんの山道』にそうめん・うどんにまつわる豆知識を教えてもらった。

 農林水産省「乾めん類品質表示基準」によると、干し麺は形状(太さ)の違いで規格が決まっており、長径が1.7ミリ以上のものを「うどん」、1.3ミリ以上1.7ミリ未満のものを「ひやむぎ」または「細うどん」、1.3ミリ未満のものは「そうめん」と表示分類される。

※写真はイメージです

 ちなみに、品質表示欄に「そうめん」と記載されるのは練り合わせた生地を平たく形成し、機械で裁断したもの。

「手延べそうめん」は生地を棒状に形成し、数本をらせん状に編み込むように縒(よ)り合わせ、ねじりを加えて1本の麺生地に。食用植物油や澱粉(でんぷん)を塗布し、熟成させながら手作業で引き延ばして乾燥させたもの。

 手延べそうめんは手作業で徐々に細く長くしていくのだが、中には長径が0.3ミリ以下、針穴に数本通るほどの超極細そうめんもあるそうで、その熟練の技に驚くばかりだ。

「流しそうめん」と「そうめん流し」は違うの?

 すっかり夏の風物詩となった「流しそうめん」は、縦半分に割った竹を利用し、水とそうめんを一緒に流して流れてきたそうめんをお箸ですくい食べるもの。

 発祥の地は宮崎県高千穂町で、昭和30年、暑い夏に野外でそうめんをゆで、竹と高千穂峡の冷水を利用して涼を得た光景から思いついたといわれている。

 対して、テーブル上の回転式そうめん流し器を流れるそうめんを食べるのが「そうめん流し」。

 鹿児島県指宿(いぶすき)市の唐船峡で、清涼で豊富な湧き水を利用し、昭和37年から始まったそうだ。当初は竹樋(たけどい)、昭和45年に回転式そうめん流し器の意匠登録が全国第1号に。

 流しそうめんで使用する樋は竹が基本だが、なかなか手に入らない。

「そんなときには牛乳パックやペットボトルでも作ることができます」とアドバイスしてくれるのは、そうめんの山道・代表の本多勇三さん。

 空になった牛乳パックなどを縦半分に切り、好きな長さまでつなげて、そうめんの“通路”に。今年の夏は、子どもや孫たちと一緒に牛乳パックなどで「マイ流しそうめん」を作って、“涼”をとってはいかがだろうか?

「日本ラーメン検定」に挑戦

 あなたも真のラーメニストに!

 さらにラーメンについて調べていると、なんと「日本ラーメン検定」なるものが!全国のラーメン文化や歴史、特有のマナーや楽しいラーメンの豆知識がわかると大人気のこの検定。さっそく、あなたのラーメン愛を試すべく、初級の問題に挑戦!

問題1:ラーメンの麺によく使われる、麺をまとめるための添加物はどれ?

A.化学調味料 B.かん水 C.塩 D.こんにゃく粉

問題2:熊本ラーメンで知られる「マー油」とは何の油?

A.しょうが B.にんにく C.玉ねぎ D.豚肉

問題3:1910年に浅草で開店した日本初のラーメン店とされる店の名前は?

A.来集軒 B.来々軒 C.福来軒 D.進来軒

答えは……

問題1:B、問題2:B、問題3:B。

初級は、日本ラーメンファンクラブHP内で24時間受検可能(無料)。合格すると「ラーメニスト」の称号が得られ、合格者限定グッズの購入権利が得られる特典も! ほかにも中級「ラーメンエリアマスター(全7エリア)」や上級、プロ級(現在準備中)も(いずれも有料)。
ラーメン道を極めたい方、詳細は日本ラーメンファンクラブHP(https://www.nippon-ramen-fc.org/ramen-kentei)まで。

(取材・文/住田幸子)

 

昭和30年代に札幌で実際に使用されていたチャルメラ。西山製麺所蔵

 

上が「雷文」、下が「双喜文」

 

上が「龍」、下が「鳳凰」

 

約70年前に、西山製麺所(当時)が開発した

 

札幌ラーメンでおなじみの黄色い縮れ麺

 

『そうめんの山道』公式サイト:https://www.shimabara-soumen.com/

 

あまり見かけなくなった移動式のラーメン屋台。