有名人の子育て法は、世間のやり玉に挙がりがちだ。昨今、人の育児に本気で憤り、児童相談所に通報するというケースが相次いでいる。赤の他人である有名人に激しい怒りを燃やす、その原動力は何なのか。実際に児童相談所に通報したことがあるという3人の女性に話を聞いた。
なぜ犯罪行為をブログに垂れ流すのか
「才賀紀左衛門さんは違法に子育てをしている状態なんです。逆になぜ犯罪行為をブログに垂れ流すのか。アメブロさんの見解を問いたい」
才賀紀左衛門を児童相談所に通報したという寺井緑さん(仮名・40代)は、週刊女性の取材にそう明かした。
近年、SNSで自身の子育てを発信するブロガーが増えている。その多くがアメーバブログから発信され、その投稿はヤフーニュースに取り上げられる。
「ヤフーが配信することによってわざわざ見に行っていない一般の人の目にも触れるようになりました。正直なところファン以外にはどうでもいい内容で、それがたびたび目に入ることで潜在的にストレスを感じさせられている気分に陥りやすい」
とは、ネットに詳しいジャーナリストの渋井哲也さん。続けて、
「アメーバブログは炎上で閲覧数を稼ぐやり方を咎めていません。ヤフーニュースなどで目にして反感を持った人たちがそのブログを訪れるようになって炎上するという流れができあがっている」
実際に7月24日時点でのアメーバブログのランキングは、1位えり(才賀紀左衛門の元事実婚相手)、2位だいたひかる、3位才賀紀左衛門、4位桃(あいのり出演者)、5位小原正子(クワバタオハラ)となっており、だいたひかると小原正子以外は有名人とは言い難い顔ぶれだ。
「アメブロは以前から、あいのり出演者の一般人などをニュースにしてPV至上主義といえる方法をとっている。良い悪いは別として、炎上しやすいシステムができあがっているのは事実。
市川團十郎さんもたびたび子育て投稿が炎上していますが、彼は通報まではされていないよう。それはやはり、自分たちとは違う世界の人、という境界線があるからではないか」(渋井さん)
とはいうものの、まったく自分とは無関係の人物に対して、児童相談所に通報するというのはどういう心理なのだろうか。SNSを通じて3人の女性に話を聞いた。
「目にしてしまったからには放っておくことはできない、これに尽きます」
と、通報の理由を明かすのは冒頭の寺井さん。彼女が目にしてしまったこととは?
「Yちゃん(才賀紀左衛門とあびる優の長女)の養育環境がひどすぎる。挙げればきりがないですが、熱があるのに夜中まで連れ回し、寿司を食べさせる。
朝昼夜とまともな生活サイクルができあがっていない、実母の悪口を事実婚の妻とともに吹き込む、常に周囲の大人がもめている、などブログを見ていても、週刊誌報道を見ていても、Yちゃんの心身が健全な状態に保たれているとは思えない。
以前、通っていたスクールが保護者向けに出した手紙を見ましたが、スクール側が個人の名前を出してお便りを出すなんて異例中の異例。それくらいひどい状況なんだなと、同じ教職側の人間として察しがつきました。さらに、親権、監護権もないのに違法にYちゃんを養育している。
周囲の人間もそれを放置しているということは、常識的な人が周囲にいないということ。実際に、事実婚相手は“ママ”とまで呼ばせていたのに、自分に息子が生まれるとさっさと息子だけ連れて出ていって、今では才賀さんの悪口ばかりをブログに投稿しています。無責任きわまりないまるで動物のような行動です」
Yちゃんを思うといたたまれないだけ
こちらの質問にも丁寧に論理的に答えてくれる寺井さん。続けて、
「無関係な有名人を通報するなんて頭のおかしい人、あるいは、ファン感情のこじらせや、嫉妬などと片づける方も多いでしょう。私はYちゃんを思うといたたまれないだけなんです」
続いて週刊女性が取材したのは、こちらも連日ネットニュースを騒がせている元ものまねタレント・おかもとまり。先日は、シングルマザーとして育てる7歳の息子との温泉旅行で、一緒に大浴場に入れなかったことに苦言を呈したブログが炎上したばかりだ。
しかし、虐待と思われる記述は見当たらないが……。なぜおかもとさんを通報したのですか?
「危険だなと思いました。大浴場で息子さんが同級生の女児と遭遇したらお互いにトラウマになりかねない。それなのに息子かわいさに一緒に入れてと主張するおかもとさんに恐怖を覚えましたね」
と、一気にまくし立てるのは、都内在住の角谷さん(仮名・30代)。自身もシングルマザーで男の子と女の子を子育て中だ。
「シングルマザーということで、こういう変な主張をする人が増えると、他のシングルマザーの足を引っ張っているんです。これ以上シングルマザーが白い目で見られる状況をつくらないでほしい」
子育てがおかしな方向にいっていますよ
と話すが、おかもとまりのどの投稿にそう感じるのか。
「特定の投稿というのはないんです。彼女のブログを見ていると、シングルマザーのご意見番になろうとしているのかなと思って。彼女に代表してほしくないっていう気持ちと、子育てがおかしな方向にいっていますよ、という気持ちを込めて通報しました。私以外にも通報者はいると思いますけどね」
と、具体的な理由は語らずだった。
一方で通報を後悔している女性にも接触することができた。
《今思えば自分の嫉妬だったのかな。辻ちゃんごめんなさい》
という投稿(現在は削除)とともに、児相通報の履歴をX(旧ツイッター)に貼り付けていたプラネタさん(仮名・30代)に話を聞いた。彼女はどういう経緯で辻希美を通報したのか。
「当時、自分も長女が生まれたばかりで社会とのつながりがない中、2ちゃんねる(当時)の既婚女性版のスレッドを授乳中とかに見ていたんですね。そこには辻ちゃんの育児を糾弾するようなスレッドが立っていて、なんとなく眺めていたら辻ちゃんがすごい犯罪者のように思えてきて。
辻ちゃんがウインナーばっかり子どもに食べさせているとか、栄養が偏っていると当時は本気で心配して、区の児相に通報したのが最初です。
職員さんが親身になって聞いてくれて、いいことした気になって。さらに掲示板で“通報した”と報告すると崇め奉られるので、またいい気になってしまっていたんです。辻ちゃんの育児は幼いかもしれないけれど、虐待とは程遠い」
と、10年たって謝罪した。
「2000年に児童虐待防止法ができ、虐待に気づいたら通報することが義務付けられました。ちょうどそのころインターネットが普及し、ヤフーチャットなどで通報についての投稿が増えたように思います」
と前出の渋井さん。児童相談所関係者は、
「通報があれば48時間以内に現場に行くというルールがあります。ユーチューブやインスタグラムの子育て投稿のSNSを見て通報してくる人は、増えている印象です。
実際に訪問すると撮影場所だけすごくきれいで、あとはゴミ屋敷のようなお宅も中にはありました。子どもを守るための通報はどんどんしてほしいですが、緊急性がない場合は児童相談所ではなく、子育て支援センターのほうに通報をお願いしたい」
8月3日、「才賀紀左衛門氏のブログアカウントの停止を求める署名運動が勃発。SNSを通じての逮捕より先に、ブログが消える日も近い?
これで私は通報されました! 通報を告白した芸能・有名人たち
'14年 辻希美(元モーニング娘。)
テレビ番組内で「来たんです」と明かし、子育て支援センター職員に「洋服を全部脱いで子どもの身体に異常がないか見せてもらっていいですか?」と言われたと告白した。その前に次男の夜泣きについて愚痴ともつかぬ投稿を綴っていたことが原因ではと自己分析していた。
'20年 はあちゅう
《また児童虐待通報されました(2回目)》というブログを更新。足を温める機械に息子が入って遊んでいた様子をインスタにアップしたら「危ない」と6件の通報があったことを報告した。
'22年 だいたひかる
ブログ上で、《警察の方が私のブログの記事をコピーしてきて下さり、見せて頂いたら土手ボーイ(息子の愛称)を私が抱っこしているのですが、その息子の体勢が人魚姫みたいに女の子っぽい角度で…体のかたい大人にキツそうに見える体勢!?見る人が見れば虐待に見えたのかも!》