「ヤバい女になりたくない」そうおっしゃるあなた。有名人の言動を鋭く分析するライターの仁科友里さんによれば、すべてのオンナはヤバいもの。問題は「よいヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、仁科さんがさまざまなタイプの「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」を分析していきます。
神田うの

第91回 神田うの

 7月30日に神田うのが自身のインスタグラムにアップした写真。夫である実業家の西村拓郎氏と密着したポーズやTシャツを見て「どこかで見たぞ」と既視感を覚えた人も多いことでしょう。それもそのはず、2023年8月10日号「女性セブン」が、西村氏と銀座のクラブ勤務である「うのソックリ長身美女」との不倫疑惑を報じたばかり。うのは、そのホステスさんと思しき女性のファッションを真似してみせたのです。

 うのの真似っこファッションはネットニュースとなり、ヤフーコメントは「本妻の貫禄」「愛人にマウント取る強気なうのちゃん好き」という賞賛であふれたのでした。その昔、うのは『ノンストップ!』(フジテレビ系)のコメンテーターを務めていたとき、視聴者からの過干渉な姑や、夫の不倫疑惑などのお悩み相談に「やられたらやり返せばいいじゃん」と身も蓋もない答え方をしていましたが(やり返せるなら、悩まないと思います)、今回もこの考え方に基づいて、やり返す姿がヤバくらいに痛快だと思う人もいたのでしょう。

挑発的な行動は不安の表れか

 しかし、当方業界きってのひねくれ者。うのは世間サマが思っているよりも繊細で、今回の報道にも傷ついているのではないかとすら思えたのでした。男性が浮気したとき、男性に直接怒りをぶつける人と、相手の女性を憎む人がいます。心理学では、この違いを「自信の有無」や「不安の強さ」と捉えています。相手の女性を挑発するような行動を取ると、はた目には強気な人、プライドの高い人に見えるかもしれませんが、「パートナーが違う女性のもとに行ってしまうのではないか」という不安を回避するための攻撃と言われているのです。

娘が出演するバレエの発表会に訪れた神田うの

 学問的真理がすべての人にあてはまるわけではありませんので、うのが不安が強いのだと断じるつもりはありませんが、彼女が見た目より孤独を抱えている人なのかもしれないと思ったエピソードをご紹介しましょう。

 うのは2012年~‘14年にかけて、雇っていたベビーシッターにブランド品を盗まれていたそう。被害総額は3000万円に及んだそうですが、その顛末を’15年12月13日放送『日曜ファミリア 芸能人つまずきビッグデータ』(フジテレビ系)で告白していました。そのベビーシッターは、うのが一番信頼していた人で、誕生日にはケーキを買う、ご祝儀を渡すなど“家族同然”だと思っていたそうです。お酒を飲みながら、彼女に悩みを聞いてもらったり、夫婦関係や子どものことも話していて、離婚を勧められたこともあったというのだから大分深い話をしていたのでしょう。

深い悩みを打ち明ける相手がベビーシッター

 うのと言えば、華やかな交友関係がウリで、友達もたくさんいるはず。にも関わらず、深い悩みを打ち明けていたのが、ベビーシッターということに驚いたのでした。一般論で考えるなら、シッターはうのに雇われているわけですから、うのの嫌がるようなことは言わないはずです。こういう本音で話し合えない関係を好まない人もいるでしょうが、孤独が強い人にとっては「カネを払っているから優しくしてもらえる、カネを払っていれば、去って行かない」関係のほうが安心できるのかもしれません。「地獄の沙汰も金次第」という諺がありますが、孤独もカネで解決できると思うなら、孤独の強い人ほどより多くの金銭を必要とするでしょう。

以前にも機内での下着姿画像を投稿していた神田うの(公式インスタグラムより)

 大金を得るためには、自分で働くか、お金のある人と結婚することが近道と言えるでしょう。うのは年商2000億円とも言われたヤマノビューティーメイトの山野幹夫氏と破局した際に「彼には自由になるお金がなかった」と発言して話題になったことがありますが、おそらく、うのはすでに女性実業家への転身を見据えていたのだと思います。自分でビジネスを始める際、知名度があることはプラスですが、まとまった資金力がなければビジネスにはならない。事業を手掛ける男性にとっては「妻が神田うの」であることで自社の知名度を上げることができるでしょうし、うのの持つ芸能界人脈もプラスに働くことでしょう。その代わりと言っては何ですが、うのも男性にスポンサー力を求めたということではないでしょうか。

結婚はお互いのメリットを追求する手段

 ご存じのとおり、うのはストッキングやブライダルドレスなど、ビジネスの世界でも成功を収めています。たびたび別居が報じられていることや、西村氏とホステスさんとの不倫報道が時々報じられることもあって、お金もあるんだし、離婚をすればいいのにと言う声もありますが、うのにとって、結婚とは惚れた腫れたの次元の話ではないと思うのです。彼女は結婚をM&A(企業の合併と買収)のように、お互いのメリットを追求する手段だと考えているのではないでしょうか。

よほど自信作のナイトブラのようだ(神田うの公式インスタグラムより)

  夫のビジネスが成功すれば、名経営者夫人として敬意を払われますし、うののビジネスの後ろ盾になってもらえるかもしれません。うののビジネスが成功すれば芸能活動にもプラスになるでしょう。その結果、最愛のお子さんにお金だけでなく、社会的信用とチャンスをより多く与えることができる。日本も諸外国に倣って事実婚が増えていきそうな気配がありますが、事実婚の夫婦には原則として相続権はなく、別途手続きが必要になります。夫の財産をまるまるスムーズに相続したいのなら、結婚をしているほうがトクなのです。

 金銭問題以外で、結婚にメリットがあると感じるのは、不安の強い女性ではないでしょうか。紙一枚の単なる契約であっても、やはり法的な効力は大きいもの。人にどう見られているかが気になるとか、さみしがりの人にとっては、そう簡単に離れらない結婚と言うシステムは意味があるのだと思います。

美川憲一さん

プライベートのビジネス化の極みが“結婚”

 考えてみると、うのは一時テレビに出まくっていたわりに、代表作が何かわからない不思議なタレントです。歌手でも女優でもなく、大人向け女性誌の専属モデルだったわけでもない。バラドルとして芸人と渡り合ってきたかというと、それもまた違う。彼女の主戦場はワイドショーで、美川憲一など濃いご意見番と絡みつつ、自身の恋愛ネタで話題を提供してきたのです。

 つまり、交遊(プライベート)をビジネスに変えて、芸能界を生き残ってきたとも言えるわけで、プライベートのビジネス化の極みが結婚なのではないでしょうか。誰と付き合えば、自分にメリットがあるかを冷静にかぎ分け、強気な言動で芸能界を渡っていきながら、一般人には想像のつかない孤独や不安に打ち震えることもある。この矛盾が神田うのの最大の魅力なのかもしれません。


<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」


夫の不倫疑惑が報じられた相手女性のファッションを真似る神田うの(本人インスタグラムより)

 

夫の不倫疑惑が報じられた相手女性のファッションを真似る神田うの(本人インスタグラムより)

 

神田うのが投稿した機内でのナイトブラショット(公式インスタグラムより)

 

突然ですが占ってもいいですか?フジテレビ5月8日(月)放送分(※TVer公式より)

 

突然ですが占ってもいいですか?フジテレビ5月8日(月)放送分(※TVer公式より)

 

30代の頃(2012年8月)

 

20代の頃(2003年2月)