立ち入り禁止エリアに乱入する浦和サポーター(SNSより)

 8月2日に、愛知県のCSアセット港サッカー場にて行われたサッカー天皇杯4回戦。J1の名古屋グランパスと浦和レッズによる一戦で、場外乱闘が勃発した。

十数人規模でピッチに乱入して…やりたい放題

「名古屋グランパスが3対0で勝利を収めましたが、試合終了後にアウェーチームである浦和レッズの一部サポーターが“暴徒化”。数十人規模でピッチに乱入し、会場内の立ち入り禁止エリアに侵入したり、名古屋グランパスのサポーターのもとへ詰め寄るなど、やりたい放題でした。騒動を受け、警察が出動する事態にもなりました」(スポーツ紙記者)

 この様子はすぐさまSNSで拡散され、“浦和レッズサポーターは悪質”“Jリーグから追放すべき”と厳しい声が飛び交った。

「浦和レッズのサポーターがたびたび問題行動を起こしてきたのは、Jリーグでは有名な話。今年4月に行われた名古屋戦でも、立ち入り禁止エリアへの侵入や警備員への暴行が発覚しています。過激な行為を繰り返し、改善される傾向が見られないため、Jリーグの他チームのファンからは“厳しい処分を”という声が常々寄せられていました」(サッカー誌ライター、以下同)

 2日の件を受け、浦和レッズは当事者への処分を発表。当該サポーターの数試合の入場禁止や厳重注意の対応が取られたという。

「ただ、処分に対しては“甘すぎる”という反応が多く見られます。入場禁止の措置はこれまでも取られてきましたが、何度も暴力行為を繰り返しているわけですから。浦和レッズの勝ち点剥奪やJ2への降格処分といった、日本サッカー協会による厳しい処分を望む声が大きくなっています」

 スマホを破壊されたと主張する名古屋グランパスのサポーターも現れ、警察への被害届も検討しているとのこと。

 夏休み期間中ということもあり、子どもたちも観戦に訪れていた中での今回の事件。浦和サポーターは今後、どのような罪に問われる可能性があるのか。弁護士法人ユア・エース 代表の正木絢生弁護士に話を聞いた。

暴行罪に加え、傷害罪に当たる可能性も

「他人に対しての暴力の行使は、刑法208条の暴行罪に当たる可能性が高いです。暴力の行使の具体的な中身が不明なため断言はできませんが、殴る蹴るといった行為があれば当然、暴行罪に該当します。また、この暴行は、集団で行われているため、暴力行為等処罰に関する法律1条の集団的暴行罪に当たる可能性もあります。この犯罪は、『多衆』が『威力ヲ示シ』て暴行等を行った場合に成立する犯罪なのですが、参考資料を拝見する限り、浦和サポーターがいわゆる暴徒化して集団で威勢を示しているように思えます。それに加え、怪我が発生していた場合には、刑法204条の傷害罪に当たる可能性があります」

浦和サポーターによって破壊されたスマホ(SNSより)

 浦和レッズのサポーターは、名古屋グランパス側の横断幕を剥がし、立ち入り禁止エリアにも侵入したとのことだが、これについては、

「横断幕の状態次第ですが、傷が付いていることもあるでしょうし、その場合は器物損壊罪に当たる可能性があります。また、立ち入り禁止エリアへの侵入は、軽犯罪法1条32号違反の犯罪が成立する可能性があります。これは、立入りが禁止されている場所に正当な理由なく入った場合に成立する犯罪です」(正木弁護士、以下同)

 浦和レッズによるサポーターへの処分は甘いとされているが、チームからサポーターへのさらに重い処分とはどのようなものが想定されるのか。

「浦和レッズのサポーターは、浦和レッズのメンバーシップに加入する形。規約を見ますと、会員資格をはく奪する形で今後サポーターになれなくする処分があり得そうです。また、今回の行為でレッズに対して損害が発生していれば、不法行為に基づく損害賠償請求を行うことができます。ただ、仮に損害が発生していたとしても、チームが自分たちのファン、サポーターを訴えるということは倫理的に高いハードルがあるでしょう」

 8月18日には、再び名古屋グランパスとの試合を控える浦和レッズ。選手よりもサポーターの振る舞いに注目が集まっている。

正木絢生代表弁護士
弁護士法人ユア・エース代表。慶應義塾大学法科大学院卒業。第二東京弁護士会所属。bayfm『ゆっきーのCan Can do it!』にレギュラー出演するほか、ニュース・情報番組『news イット!』(フジテレビ系)などメディア出演も多数。相談しやすい身近な弁護士。YouTubeやTikTokの「マサッキー弁護士チャンネル」にて、法律やお金のことをわかりやすく解説、配信中。


 

観客が暴動の様子を撮影していると…(SNSより、以下同)

 

「まわしてんじゃねーよ!」という声とともに画面が大きく揺れる

 

画面全体が赤くなり、その後真っ暗に

 

浦和サポーターによって破壊されたスマホ(SNSより)