8月15日、『全国戦没者追悼式』が日本武道館で行われた。台風7号の影響で規模は縮小されたものの、約1600人の遺族が参列し、310万人に及ぶ戦没者を偲んだ。
式典には天皇、皇后両陛下も出席し、おことばを述べられた。
天皇、皇后両陛下のお言葉
「追悼式でのおことばは、天皇という立場の方が国民を代表して“戦没者を悼み、平和を祈る”ものです。そのため、基本的には昭和天皇や上皇陛下のおことばが踏襲され、天皇によって、また年によって大きく変わることはありません」(皇室解説者の山下晋司さん、以下同)
だが、今年は“とある変化”があったという。
「令和2年から4年まではコロナに言及された箇所で“人々の幸せと平和”とおっしゃっていました。今年はコロナには言及されませんでしたが“平和と人々の幸せ”と“平和”が先でした。ほかの箇所でも“平和と繁栄”“世界の平和と我が国の一層の発展”と“平和”が先です。このことから“第一に平和を”との陛下のお気持ちがうかがえます」
この変更の背景には現下の世界情勢が考えられるという。
「今年2月、天皇誕生日に際し行われた記者会見で、陛下はロシアによるウクライナ侵攻など、各地で起こる戦争や紛争に対し“世界が直面する困難な現実に深い悲しみを覚えます”と述べられました。今回のおことばで陛下が平和を強調されたのは、ウクライナの件など、世界各地で起こる困難な状況を憂えてのことだったのではないでしょうか」(皇室ジャーナリスト)
平和を希求する陛下に寄り添うように、雅子さまもまた、神妙な面持ちで式典に臨まれた。
秋田県の遺族代表として式典に出席した鷹島峯雄さん(82)は両陛下の当日のご様子を次のように振り返る。
「天皇陛下のおことばからは、昭和天皇や上皇さまから平和を願う心を引き継いでいらっしゃることがひしひしと伝わりました。おふたりとも終始真剣な面持ちと丁寧なしぐさでいらっしゃって……」
戦後生まれの遺族代表の強い思い
青森県の遺族代表として出席した菊池正紀さん(73)は、両陛下と同じく戦後生まれだ。
「私の父は戦争からは帰ってくることができました。しかし、戦地で受けた銃痕が脊髄に残り、それが原因で働くこともできず、苦しんで亡くなりました。そんな父の姿を見ていたので、戦争の記憶を忘れたくないと思い、追悼式にはなるべく出席するようにしています。戦争のご経験がない世代であるとはいえ、両陛下には不条理な歴史を風化させないためにも、必ず出席していただきたいと私は考えています。式中のおふたりの表情からは、おことばにもあった“深い反省”の意が強く感じられました」
緊張感のある式典の中で、雅子さまの表情に変化が見られたのが正午から1分間行われる“黙祷”の場面だった。
「雅子さまは、目を少し開いていらっしゃいました。黙祷は目をつむるイメージですが、実際は“声を立てずに祈る行為”を指します。目を開くことはマナー違反になりません。
雅子さまは黙祷の最中、先の大戦での戦没者に想いを馳せるだけでなく、悪化する世界情勢下で苦しむ“今、困難にある人々”にも目を背けることなく祈りを捧げられていたように見えました」(前出・皇室ジャーナリスト)
雅子さまの“半眼の祈り”には、国母として世界平和を望む強い思いが込められていたに違いない─。