夏の甲子園に「清原」が帰ってきた。高校野球史上最強の打者とも呼ばれた清原和博の次男が慶應義塾高校の選手として、春のセンバツに続いて出場。注目を浴びたのだ。春はレギュラー、今回は控えだが、父はそんな息子について、
「それでも懸命にチームに貢献しようという姿が見られます。親として尊敬の念を抱いています」
と、コメント。この「親として尊敬」という言葉には、自らの不祥事で家族に迷惑をかけてしまったというふがいなさへの反省も関係しているのかもしれない。
元妻にとっても大きな挫折だった逮捕劇
2016年、覚醒剤取締法違反で逮捕。執行猶予つきの有罪判決を受けた。
高校時代には甲子園通算13本塁打という大記録を作り、プロでも1年目から黄金期の西武の4番を打つなど、栄光に包まれた「清原」という名前はイメージダウンを余儀なくされたのである。
その象徴が元妻・亜希の動向だ。2000年に清原夫人となった彼女は、木村亜希から清原亜希に改名。'14年に離婚したあとも、そのまま活動を続けたが、元夫が逮捕された翌月、「亜希」に改名した。
今年5月には『きょうの料理』(NHK Eテレ)に出演。「亜希の母ちゃんめし」と題して、スポーツをやっているという息子たちに作っている料理を披露したが、元夫についての紹介は一切なく、いわば「清原スルー」状態に。ネットでは「この人、清原の元奥さんだよね?」などとざわついてもいた。
ちなみに彼女は15歳のとき、3人組アイドルグループ・セブンティーンクラブでデビュー。14歳の工藤静香も一緒だった。同じように大物有名人と結婚した亜希にとっても、元夫の逮捕は大きな挫折だったといえる。
ただ、彼女が「母ちゃん」キャラで復活しているように、清原もまた、息子のおかげで好感度を少し回復した。
東京六大学の慶應大で野球をやっている長男も含め、息子たちがニュースになるたび、ファンはその父が昔「すごい野球選手」だったことを思い出す。いわば「クスリの清原」である前に「野球の清原」だったというイメージの上書きがちょっとずつ施されるのだ。
“聖地”を守りたいファン心理
そもそも、子どもが立派に成長したうえ、同じ道に進んで頑張っていたりすると、親の評価もなんとなく上がる。歌舞伎の世界などはこれが長年システム化されてきた。
一方、石田純一・いしだ壱成のように父子で似たやらかしをしていると、負の相乗効果がもたらされてしまう。あるいは「KKコンビ」として並び称されてきた桑田真澄のように、次男(Matt)が別の道で目立っているケースでは、父子鷹的なイメージアップはそれほどでもないわけだ。
そして、このささやかな復権には「夏の甲子園」が特殊な空間であることも大きい。娯楽が多様化した今なお全試合が地上波で中継されるという国民的イベントであり、その舞台は「聖地」とまで形容される。そこで彼は、
「甲子園は清原のためにあるのか」
という名実況が飛び出すほど、カリスマ的な活躍をした。不祥事のことはいったん忘れて、かつての功績を称えることで「聖なる空間」を守りたいという心理がファン全体に働くのである。『きょうの料理』での「清原スルー」とは別のもっと深い意味があるともいえる。
もちろん、逮捕された過去は消せないが、これもまた、彼が高校時代、聖地で頑張ったご褒美だろう。幸いなことに、世の中は夏に頑張る元気な男の子に優しいのだ。
ほうせん・かおる アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。