「50代からの人生を楽しもう!」を合言葉に、野宮真貴(63)、松本孝美(58)、渡辺満里奈(52)、それぞれ5歳違いの個性豊かな仲良し3人が始めた『大人の女史会』プロジェクト。
更年期は女性にも男性にも誰にでも訪れるが「更年期の本当を知っていれば怖いことではない!」というメッセージを発信していきたいという。気持ちや身体の揺らぎ、ポジティブな年の重ね方、夫婦関係―ありのままを告白。
更年期は幸年期 “上がる”って失礼
女性ならいつかは必ず迎えるのが閉経。
日本人の閉経年齢は平均50歳ごろといわれ、その前後10年間(40~60歳)には、女性ホルモンの減少から身体にさまざまな変化や不調が起きる『更年期』がやってくる。
ところが、“女性ホルモンが枯れるのは想定内。だったら砂漠を緑化するがごとく、植樹して潤せばいい!”と、ポジティブ感フルスロットルの提案をするタレントがいる。それこそが、『大人の女史会』の渡辺満里奈さんだ。
「更年期の原因となる閉経のことを“よく生理が上がる”と言ったりしますけど、まずはこれがよくないなと思いませんか?
“上がる”って、すごろくで言えば“これで終わり”ってことですよね。だからショックを受けたり暗く考える女性が多いのだと思いますが、女性でなくなるわけではないんです。確かに生理は終わるけど、私自身が変わるわけじゃありませんから」
こんなふうに更年期を前向きに捉え、語れるようになったのは、4年前、同じ事務所のモデルの松本孝美さん(58)とともにアーティストの野宮真貴さん(63)のコンサートに行ったことがきっかけだったという。
「ライブを見た後、野宮さんと孝美さん、私とスタッフで赤坂の中華料理店に行ったんです。そこで紹興酒を傾けながら、更年期で骨粗鬆症になりかけた野宮さんがボウリングをしていて骨折したお話(笑)などをお聞きしました。とても明るく楽しく語ってくれたので、ものすっごく盛り上がったんです」
満里奈さん自身も更年期の真っ最中。それまではこれから起こる変化に対してどちらかといえばネガティブなイメージを持っていたが、野宮さんがカラッと更年期を語る様子に驚くとともに、おおいに勇気づけられた。
女性ホルモンこそ枯渇ぎみだが、エネルギーは人一倍持ち合わせていた3人は、お酒の勢いもあって“50代からの人生を楽しもう!”と意気投合。更年期の理解増進と啓発を目的に爆誕したのが、『大人の女史会』だったという。
「会の目的は誰にでもやってくる更年期を“幸年期”に変え、明るく健やかで幸せに乗り越えられるようにすること。“そのための情報発信をしようじゃない”と」
以来、テレビ、雑誌、ブログ等で自身の更年期体験を積極的に披露。更年期に突入もしくは突入しつつある女性たちから、共感の声が多く届いている。
渡辺満里奈、自身の更年期を語る
満里奈さん自身の閉経は、一昨年の51歳のとき。
「もともと生理がひどいほうではなくて、“なんとなく徐々になくなっていった”という感じでした。そのおかげなのか、閉経したことによるショックというものはなかったですね」
とはいえ、睡眠の質の低下やそれが原因の疲労感やイライラ、肌や髪がうるおいを失うなどの、いわゆる『更年期障害』に悩まされた。
「女史会を始めたときに、雑誌の取材のためメンバー3人で婦人科のドクターのお話を聞きに行ったんです。そこで女性ホルモンの量を量ってもらうと、“もうこれ砂漠! カラッカラの砂漠状態よっ!”って。3人そろってそう言われちゃいました(笑)」
女性ホルモンの減少によって起こる更年期障害の症状には個人差がある。満里奈さんの場合、幸いにも身体がいきなりほてりだすホットフラッシュなどの重い症状がなかったので、女性ホルモン補充療法などの治療は受けていない。だが、女性ホルモンのエストロゲンに似た働きをする大豆イソフラボン含有のサプリメントをとるなどの、“緑化活動”は積極的に行っているという。
「そのおかげかなあ。最近は髪や肌のコンディションも安定していますね。
私、今年の11月で53歳なんですが、50代になった直後は“若いころとそんなに変わらないな”と思っていました。ところが52歳になったあたりから、ガクッと体力が落ちて気力がなくなって。そして今、少し持ち直して。こういうアップダウンを繰り返して“老い”がやってくるんだと実感しました(笑)」
「1人で苦しまないで!」周囲にも伝えること
そんな閉経や更年期が、女性に老いを感じさせるきっかけになることは間違いない。だからこそ、理解の仕方次第でそれ以降の人生が明るくもなれば暗いものにもなりえてしまう。
「更年期は、年を重ねれば誰もが通る道。だから隠していたり、身体の状況に対応しないほうがむしろつらくなると思うんです。初めて体験することだから誰にも不安はあると思いますが、体調不良に苦しんでいるのは自分だけじゃないと知ってほしい。“つらいのは私1人”と思い込まないでほしいですね」
満里奈さんがすすめるのは、早くから行きつけの婦人科を持つことだという。更年期以前も含むすべての女性が年に1度の定期検診を受けるようにすれば、身体に潜んでいるかもしれない病気をいち早く知る手がかりになるし、更年期真っ最中の女性なら、いざトラブルのときには心強い味方を抱えて立ち向かえる。ちなみにその際には、産婦人科ではなく婦人科を選ぶのがおすすめ。婦人科ならば、まわりが妊婦さんばかりという気まずさも避けられるからだ。
「気持ちの面では更年期のつらさを話して吐き出してしまうのが一番です。つまりはつらさを周りにも共有してもらうことですね」
であれば、同居人の理解はぜひとも得たい。満里奈さんは、パートナーの名倉潤さんにも積極的に体調を伝えている。
「体調がよくないときは“今日は調子がよくないわ”“これ、更年期の症状かもしれない”と話します。すると家事などができない場合にも、“おお、そうなのか”とわかってくれます。私の体調を理解しようとしてくれているのが心強くて」
とことんつらい状態のときに、同居人から“ごはんまだあ?”と言われることほど気に障るものはない。症状自体よりも、パートナーのそうした無神経さのほうがはるかにこたえるとは、よく聞く嘆きだ。
満里奈が疑った、夫・名倉潤の男性更年期障害
もしもあなたがそうした理解が乏しいパートナーをお持ちなら、「ぜひこの記事を見せ、“こういう取り組みがあるんだね”“更年期って女性だけじゃないみたいよ”と話し合うきっかけにしてみてもいいのかも」
2019年に名倉さんはうつ病を公表しているが、最初は男性更年期障害の症状を疑ったと満里奈さん。結果的には違ったが、ずっと一緒にいる人でないと気づけない小さな変化を無視しないことが大切と振り返る。
昨今では男性ホルモンであるテストステロンの減少からさまざまな症状が出る『男性更年期』が知られつつあり、公表する著名人も出始めている。タレントのヒロミさんもその1人。
「松本伊代さんから、ご主人のヒロミさんに男性更年期の症状があったことをお聞きして。身体面では疲れやすくなったり関節の痛みなど。メンタル面では落ち込んだり、ささいなことで怒りやすくなったりが、男性更年期の特徴です。
メンタルの症状は女性の更年期となんら変わりませんから、“オレももしかして更年期?”と、気づきにもなりますし、女性の更年期を理解する手助けになってくれると思うので女性同様、男性の更年期について理解が深まればいいなと」
俗に“同病相哀れむ”という。同じトラブルを抱える人には優しくなれて、共感しやすいのが人間。お互い助け合っていければと満里奈さん。
老いは誰にとっても初体験。50代から60代、70代とその年代になって初めて対面するものがある。
失ったものを数えず、得たものに目を向ける
「年を取ると当然できなくなること、手放さなくてはならないものが増えていきます。私はできなくなったこと、手放すことを嘆くのではなく、今できることと、今あるものを大切にしていきたいと思っています」
出産はできないが、わが子の成長を見るという楽しみまで失ったわけではない。わが子の将来を見るという豊かな楽しみに目を向けたいと語る。
「母は80歳なんですが、よく“こんなこともできなくなった。情けない”と口にするんです。私は“そんなことないよ、できることがまだまだたくさんあるじゃない”と言うんですが、これは年を重ねたからこそ言えるようになったんだと思います。なんでもできた若いころには、そんなふうにはものごとを見られませんでしたから」
年を重ねることは、成長を重ねることそのもの。小じわも増えるが、考え方の幅が広がり、人に優しくなれるようになる。そんな“老いるメリット”に考えが及ぶようになったそう。さらには“できなくなる”ということは失うというネガティブな変化ではない。むしろ無理や無駄を手放せるようになることだとも続ける。
「最近、若いころにはできなかった楽しみ方が増えたように思いますね。以前には流行や人の影響でいろいろなものに手を出しては飽きて投げ出すこともありましたが、次第に自分に本当に必要なものや楽しいことがわかるようになり、掘り下げていけるようになりました。エイジングって意外と悪くないですよ(笑)」
女子でなく、女史と言われる年齢になって初めてわかるものがある。閉経は、これまで積み上げてきたものを楽しむ時間が始まる号砲だと軽やかに笑った。
「経験や思い出、人への優しさなど得るものは、増えているように感じます。今を楽しむ姿勢で、50代以降の人生を輝かせていきたいですね」
取材・文/千羽ひとみ