ほうれい線がくっきりとして頬が垂れる“ブルドッグ顔”に、目元がくぼみ頬がこけた“ムンク顔”……。
顔の骨の減少は40代から始まる
長引いたマスク生活で、肌の老化を感じる人も多い。弾力を取り戻そうと、化粧品や美容医療に頼りたくなるが、
「顔の“表面”である皮膚だけをどうにかしようとしてもキリがありません。なぜなら“老け顔”の主な原因は、加齢により骨密度が減り、顔面の骨がちぢむことだからです。それにより、骨にのっていた筋肉が下がり、しわやたるみ、へこみの原因になります」
こう話すのは、顔筋トレーニングにも詳しい歯科医の宝田恭子さん。顔の骨粗鬆症(こつそしょうしょう)とは聞き慣れないが、
「骨密度が減るのは頭蓋骨も例外ではありません。フランスの研究で、しわやたるみが多い人は、骨密度が低いという結果も出ています。しかも、骨密度の減少は頭蓋骨から進行します。なんと40代から減り始めるのです」(宝田さん、以下同)
現代人の運動不足や猫背、咀嚼(そしゃく)回数の減少も、顔ちぢみを加速させているという。
「食事のときはひと口につき30回は噛むこと。猫背にならず、背筋を伸ばして奥歯でしっかり噛むことが、顔ちぢみを食い止めるポイントです。これは骨に衝撃を与えることで、骨の形成を促す“骨芽細胞”が活性化するから」
また、“老け顔”の進行を抑える鍵は、顔の骨の中でも“頬骨”にあるという。
「頬骨には口角を引き上げる役割があり、大頬骨筋、小頬骨筋など、表情を動かす筋肉が集中しています。そのため頬骨が縮小すると筋肉もゆるみ、これが“ほうれい線”や“マリオネットライン”へとつながるんです」
頬骨を刺激して強くするエクササイズ“ひふみプッシュ”。
「頬骨についている筋肉を刺激して血流がよくなると、骨の強化につながります。皮膚をこすったり引っ張ったりしないように、プッシュする動きを心がけて」
もうひとつ、おうちで手軽にできるのが、かかと落とし。
「全身の骨に作用する運動なので、顔の骨密度キープにもつながります。75歳の患者さんがかかと落としを1年半続けたところ、骨密度が3%上がった例もありました。ただし、膝を痛めている人、眼科系の手術をした人は主治医に相談してから行ってください」
このほか、食生活で宝田さんがすすめるのは、カルシウムの吸収効果を高めるクエン酸の摂取だ。
「骨密度を高めるため、牛乳150mlにレモン果汁を大さじ2、はちみつ大さじ1を入れたレモンラッシーは私も飲んでいます」
高いお金をかけて肌をケアする前に、老け顔の根本原因、骨に働きかけるエクササイズにトライ!5年後、10年後に大きな差が出るはず。
「頬骨“ひふみ”プッシュ」3分×1日4回
顔にあるほとんどの表情筋が集まる「頬骨」をプッシュするエクササイズ。
「朝、昼、夕方、寝る前の4回行うと効果的。もしきっちりできなくても大丈夫。やめずに続けることが大切です!」(宝田さん)
1.首の筋肉を伸ばし正しい姿勢に
胸の前で手をクロスさせ、顔を上に向ける。口を閉じて首の前の筋肉が伸びるのを意識して。そのまま肩を上げて後ろに回して下ろし、頭を元に戻す。
2.小指が小鼻に当たる位置で押す
両手を握り、第2関節を頬骨の下に当てる。舌を上顎につけ、鼻から息を吸い、「ひー」と言いながら息を吐ききる。
3.頬骨中央まで移動してプッシュ
頬骨中央までこぶしを移動させ、中指と薬指で押す。舌を上顎につけて鼻から息を吸い、「ふー」と言いながら息を吐ききる。
4.表情筋を感じながら刺激する
噛み締めたときに動く位置に移動させ、中指と薬指でプッシュ。舌を上顎につけて鼻から息を吸い、「みー」と言いながら息を吐ききる。
「三拍子かかとトントン」1日30回
かかとを落として衝撃を伝え、骨を鍛える運動。
「1日30回を目安に。テレビを見たり、電子レンジを待つ時間にやるのもいいですね」(宝田さん)
1.足をそろえてまっすぐ立ち、爪先を上げてかかと立ちになる。
2.軽く勢いをつけて爪先を下ろし、爪先立ちになる。
3.軽く衝撃を感じる程度にかかとを落とす。1~3を繰り返す。
(取材・文/仲川僚子 撮影/齋藤周造)