化学物質過敏症の人などが柔軟剤の香りで体調を崩すケースが ※画像はイメージです

 まだまだ暑い日が続くこの季節。汗のにおいが気になるからと香水をつけたり、香りのよい柔軟剤を使って洗濯して体臭をごまかそうとする人も多いのでは。実は今、本人にとっては快適な香りでも、職場や学校などで、そのにおいを嗅いだせいで体調を崩してしまう、いわゆる“香害”に苦しむ人が増えている。

小学生も体調不良に

「香害問題が表面化しはじめたのが12、13年くらい前。柔軟剤が世間に浸透し、香りの種類や販売数が増えると、同じくして消費生活センターなどで、香害に関する相談件数も多くなったんです」

 こう教えてくれたのは、千葉大学予防医学センター特任教授で医師の坂部貢さん。はたして、どんな症状を訴える人が多いのか。

「頭痛やめまいが起きたり、目が刺激されて涙が出る、咳き込むなど花粉症と似た症状が多いです。調査によりバラツキはありますが、男女比は3対7くらいで女性のほうが症状を訴える割合が高く、人が集まる職場などで過ごす機会が多い20〜50代の働き盛りの世代に増えています。

 また、学校でみんなが柔軟剤で洗った洋服を着ていたので、いろんな香りが教室で混ざってしまい、そのにおいに体調不良を訴えた小学生の子も。幅広い世代で増えてきている印象です」(坂部さん、以下同)

求められる対策は?

 中には身体が動かなくなったり、痺れを訴える人もいるというから注意が必要だ。では、何が原因で症状が出るのだろうか?

「ひとつは特定のにおいに脳が反応してしまうことが原因です。例えば、本人にとって嫌いな香水や柔軟剤のにおいなど、不快な思いをしたときの香りは脳に刷り込まれやすい。嫌悪感のある香りに感覚が敏感になっているから、そのにおいを嗅ぐと脳が反応して頭痛がしたり吐き気がしたりと体調が悪くなるケースがよくあります」

柔軟剤に含まれる化学物質も“香害”の原因に ※画像はイメージです

 もうひとつは、柔軟剤などに含まれている化学物質が原因となっているそう。

「柔軟剤の香料は、香りを長持ちさせるために“マイクロカプセル”という小さな箱のようなものの中に入っているんです。そのマイクロカプセルの構成成分には強いアレルギーを引き起こす “イソシアネート”という化学物質が含まれていることが多い。柔軟剤はマイクロカプセルが弾けることで香りが広がっていくのですが、同時にカプセルの粒子も拡散してしまう。化学物質過敏症の方や花粉症など、もともとアレルギーがある人は柔軟剤の香りで症状が出る場合が多いと思います」

 今年7月には消費者庁が香害問題に関心を持ってもらおうと啓発ポスターを刷新。この先どういった対策が求められるのか?

「今は治療薬などはないので、香害に苦しんでいる人たちは症状の出てしまうにおいを遠ざけるしかありません。あとは、室内にいるときは換気を十分にして空気の流れをつくってあげることが大事です。今後も香害に悩む人たちは増えていくと思います。消費者庁も、こういう問題があることをもっと広めるべきでしょう」

 症状が出る人も出ない人も、周囲への気遣いが必要とされている─。

2023年7月に消費者庁が刷新した“香害”の啓発ポスター

 

消費者庁、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、環境省の5省庁連合で製作された啓発ポスター

 

香りが原因でさまざまな健康被害が! ※イラストはイメージです イラスト/マスダアキ

 

※写真はイメージです

 

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柔軟剤には「帯電防止剤」という成分が含まれているため、衣類をふんわり仕上げるだけでなく、静電気を発生させにくくもする