『全国高校生の手話によるスピーチコンテスト』(8月27日)に佳子さまが出席された。
佳子さまの挨拶は「歴史的」
「昨年の手話スピーチコンテストの際、私は手話と声を同時に使って挨拶をしていましたが、このあとは手話のみでの挨拶とし、手話通訳の方に読み取り通訳をお願いします」
以降約7分にわたって、声を出さずに手話のみで、
「舞台上でのスピーチは緊張するかもしれませんが、積み重ねてきた練習の成果を発揮できるよう応援しております」と、高校生たちに温かなエールを送られた。
「“この挨拶は歴史的”と、ろう者の間で非常に話題となっています」
とは手話通訳士。どういうことなのだろう?
そもそも、手話は大きくふたつに分けられるという。先天的に聴こえない人が多く使う【日本手話】は語順などの文法が日本語と異なるため、話しながら行うことはできない。一方、【日本語対応手話】は後天的に聴こえなくなった人が主に使い、こちらは日本語に手話を当てはめていくスタイルなので声を出しながらできる。
40代の男性ろう者はこう話す。
「皇族の方が声を出さない手話をされる日が来るなんて……! 佳子さまの手話はとても自然でした。声つきの手話をしていた人が、声なしの手話に変えることは、本当に大変なことです。まるで文法が違いますから、別言語を話すのと同じことなのです」
ただ単に声を出さなければいいという訳ではない
ただ単に声を出さずに行えばいいというわけではなく、 “非手指動作”が不可欠だという。
「日本手話は、手の動きだけではなく、口の形や視線、うなずき、眉上げなど、複数の動きを同時に行います。佳子さまの非手指動作は素晴らしかったです。“非手指動作を使われた初めての皇族”として歴史に名を残されでしょう。ろう者の手話は“表情が豊かだね”と言われることがあるのですが、そこには言語的な文法が含まれているのであり、“表情が豊か”とは別ものなんです。佳子さまの手話には、非手指もしっかり現れていらっしゃいました」
50代の女性ろう者は、目にうっすらと涙を浮かべながら熱弁してくれた。
「英国王室のダイアナ妃は、ずっと声を出さない手話をされていました。だから、イギリスのろうコミュニティの中で彼女の人気はものすごく高いんです。日本人である私はそれを羨ましく思っていましたし、いつか日本の皇族の方が、ろう者が自然に使っている日本手話を使ってくださるといいなと願っていました」
さらに、先の男性ろう者はこう続ける。
「私たちろう者に“声つきの手話をやってくれ”なんて誰も言わないですよね? なのに、聴者が手話をしていると“声をつけながらやって”と言われる風潮はずっとあります。やはり皇族の方は非常に影響力が大きいので、佳子さまが固いご決意のもと、声を出さずに手話をしてくださったことは、日本手話を第一言語としているろう者として、心からうれしく思っています」
手話への正しい認識が、きっともっと広がっていくだろう。