毎週土曜日、東京都庁下で行われている食品配布。猛暑にもかかわらず、毎回600人超が並ぶ大行列となっている。中には女性や子連れの姿も。いったい今、何が起きているのか。並んでいる女性に話を聞くと―。
毎週600人を超える列が
東京都庁下で毎週末行われている食品配布に異変が起きているという。
「以前はホームレスが中心でしたが、ここのところ若い女性が増えているというんです。中には子連れで並ぶ人の姿も」(全国紙記者)
認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやいの発表によれば、直近の8月26日は621人に食料品セットを配布するなど、猛暑にもかかわらず毎週600人を超える列ができているという。8月19日、列に並んだ女性に話を聞いた。今、彼女たちに何が起きているのか─。
都内に住む伊藤智花さん(仮名・49歳)は、シングルマザーで小学生の娘と息子がいる。
「子どもたちが夏休みの間だけ、(食品配布を)いただいています。やっぱり給食の1食がなくなるのは大きいですね。昼間パートに出ているので、子どもだけで食べられるカップ麺や缶詰なんかをいつもストックしているのですが、物価も高いし、そんなときにママ友からこの支援の存在を聞いて並ぶことにしました。
ちょうど公園も近くて子どもたちも待っていられるので、ちょっとしたレジャーのつもりで。食費を少しでも浮かしたいです」
と、明るく話す。伊藤さんの後ろで遊ぶ子どもたちも楽しそうだ。新学期がきたら並ぶのはやめるという。
「給食も再開しますし、学校がある時間はパートに入れますから」
伊藤さんのように前向きに並ぶ人もいれば、そうでない人もいる。住所不定の中島美幸さん(仮名・48歳)は、コロナ禍で職も住居も失った。
「勤めていた飲食店が休業し、それまであった月収の約13万円が一気になくなりました。ギリギリの生活だったので貯金もなく、生活費のために借りていたお金も返せずに夜逃げ同然でアパートを出て、ネットカフェなどを転々としています」
必要な支援を受けられるのでは? と問いかけた記者に中島さんは、
「一度手続きをしようとネットカフェから試みたのですが、もうちんぷんかんぷんで諦めました」
中島さんのような女性は多いという。女性の貧困問題を取材するライターの徳住亜希さんは、
「手続きが煩雑だったり支給条件が厳しかったりして、休業支援金や給付金を受け取れなかったという女性が少なくありません」
女性の貧困は今後も拡大していく
さらにコロナが5類になったことで、支援が終了してしまった制度も。
「コロナ休業支援金・給付金は、'23年5月末で受け付けを終了しています。ただ、仕事を失った人などに国が一定期間、家賃分を支給する住宅確保給付金のほか、独自に家賃補助制度を設けている自治体もあります。最寄りの役所や社会福祉協議会の窓口で相談してみてください」
女性の貧困は今後も拡大していくのでは、と徳住さん。
「実は、日本で最も貧困率が高いのは65歳以上で一人暮らしの高齢女性です。背景として、女性は男性に比べ現役時代に低い賃金しか得られず、老後に低年金になってしまう格差が指摘されています。これを踏まえ考えなければならないのが現在、40代~50代前半となった就職氷河期世代の老後。
氷河期世代の女性は非正規労働者が多く、収入も不安定で未婚率も高い。年金保険料を十分に払えなかったり、貯金ができなかったりする人も少なくありません。老後を迎えるころ貧困に陥るリスクが懸念されています」
早急な対策が必要だ。