机と座椅子のみが置かれる、筆子さんのリセット部屋。

 部屋を見渡せばたくさんのモノに囲まれているのに、満たされない──。

 モノを捨てることで、モノへの執着を断ち切り貯金もできるようになる!

30年かけて身についたモノとの付き合い方

 ミニマリストブロガーとして活躍する筆子さんは、消費を美徳とするバブル期に20代を過ごした。

「特に洋服をたくさん持っていました。通販で雑貨を買うのも好きで、毎月3千〜5千円使っては購入金額に応じてもらえるおまけをお得だと思い込んでいて……さまざまなモノへの執着がありました」(筆子さん、以下同)

 転機は勤めていた会社を辞めた27歳のとき。モノをたくさん持っていても幸せになれないと気づき、いらないモノを捨て始めた。

「今思うと日常への不満を買い物で埋めていたのだと思いますが、あるとき部屋にあふれるものの多さに愕然。シンプルライフにあこがれて“持たない暮らし”を目指すようになりました」

 その後、海外留学、妊娠・出産、子育てといった節目ごとにモノの増減を繰り返し、50歳にしてミニマリストに。持ち物を最小限にすることでモノの管理から解放された。

「家中の不用品を集めてみると、これまでムダなモノを買っていたと気づきます。定期的にチェックすることで、慎重に買い物するようになって支出が減りました。

 持ち物が少ないから似たようなものをうっかり買って後悔することもありませんし、まずは使い切ろうとする意識も働きます。モノを整理するときは8割捨てて、よく使う2割を残すイメージです」

 娘さんのお下がりを活用するので今や洋服代はほぼゼロで、買うのは肌着やくつ下くらいという徹底ぶり!

 子どもが巣立つ50代以降はムダなモノを捨てやすい絶好のタイミング。暮らしを小さくしてムダは何かを見極めるのが貯まる生活への第一歩だ。

筆子さんが捨てて貯まるを実感したこと

1位:家をダウンサイジングできた

 モノを減らして今のスペースの倍はある一軒家から引っ越したら、家賃と光熱費を合わせて月に2万〜3万円浮いた。年間24万円以上が節約できるのはとても大きい。

2位:ストレス買いをしなくなった

 不用品を捨てたらイライラが減ってストレス解消のための買い物がなくなった。捨てることの大変さも身にしみてわかり、今は安易にモノを買う気にならない。

3位:お金について考える時間ができた

 たくさんのモノを管理するのに使っていたムダな時間を、予算を立てたり家計を見直したりする時間にまわせるように。どんぶり勘定から、お金の流れを意識する思考に変わった。

筆子流・捨てワザメソッド“15分で27個捨ててみる”

 まず試してほしいのが短時間集中の捨てワザ。

「主婦向けに家事のハウツーを発信しているアメリカの人気サイトFlyLady.netを参考に、15分間で27個のモノを捨てる方法を実践しました。30秒で1個捨てていく計算なので、迷っている間もなくどんどん捨てられます」

※写真はイメージです

 たくさんのモノを必要?、不要?と判断するのはとても頭を使うし、片づけだすとつい本や手紙を読み返してしまったりと時間がかかりがち。

 制限時間を設けることで疲れ果てることなく、スピーディーに捨てていけるというわけ。ただし、モノに触れる時間は最小限に!

「触っている時間が長いほど愛着が湧いてくるので、サッとつかんでポイッ。迷ったら捨てると決めています」

 “モノが増えたら実践”を習慣にしてリバウンド卒業。

不用品の巣“プライムゾーン”から攻める!

 プライムとは“根本的な”という意味で、プライムゾーンはモノをため込みやすい根本的な原因が潜んでいる場所のこと。

 モノが詰め込まれがちな押し入れ、クローゼット、食器棚、パントリー、洗面台の下、机やドレッサーの引き出しから手をつけると効率的♪

START
→タイマーをセットしてゴミ袋を持つ
→いらないモノをどんどん袋に入れる
→モノに触る時間は最小限にする
→売ることは考えない
→持っている数が多いモノはサクッと選別
→タイムアップ!袋ごとゴミ箱へ!*分別が必要ならこのタイミングで行う。
GOAL

モノを捨てて人生一変、時間と解放感も得た!

 いらないモノを処分することで手に入るのは、お金だけではない。

「まず時間に余裕ができます。ガラクタに囲まれていたときの探しもの、片づけ、掃除に費やしていた時間が大幅に減って暮らしやすいです。そして使っていないものを見るたびに生じる罪悪感や、やるべきことができていない未完了感もなくなりました」

 捨てることを躊躇しない筆子さんにとって思い出の品も聖域ではない。

「写真や手紙、子どもの作品には、過去の楽しかった体験や感情が詰まっているから捨てにくいと思います。

 でも、思い出は心の中にあるし、モノを捨てたからって自分はなくならない。過去にとらわれるより、今を充実させたいという目的がはっきりしているので捨てられました」

 紙ものや立体物は撮影してデジタル画像にして、やみくもに取っておくのではなく厳選して残せば場所を取られない。

「一気にたくさん捨てられなくても少しずつでも減っていればいい。あきらめずに続けるのが大事です」

“捨ててくれない”家族とバランスをとるコツ

「ふたり暮らしの夫はモノを捨てないタイプ。リビングの夫コーナーには私物がいろいろ置かれていますが、手を出さず共有スペースがきれいならいいと割り切っています。ストレスを感じたら自室へ行って気分をリセット!」

 筆子さんの部屋にあるのは、折りたたみ式の机、座椅子、ライト、収納箱が1つだけの徹底ぶり。他人を変えるのは難しいので、自分と相手の境界線を意識してみよう。

机と座椅子のみが置かれる、筆子さんのリセット部屋。

捨てたあとモノを増やさないコツ
□捨てることを習慣化する
 練習を積めば、捨てることがうまくなる。

□SNSはなるべく見ない
 人の暮らしをうらやんだり、逆に手間のかかる収納テクも学ぶ必要なし! 自分と家の身の丈に合ったモノのみを入れる癖をつけて。

□収納グッズは増やさない
 あればモノを詰め込みたくなるし、収納グッズも“モノ”。収納ではなく減らすことが肝心。

□モノの置き場所を決める
 あるべき場所を決めればモノがあふれない。

節約系主婦ミニマリスト・筆子さん(64歳)●ミニマルで快適な暮らしにするための考え方や実践法をブログ「筆子ジャーナル」で発信中。著書に『8割捨てればお金が貯まる』(宝島社)、『買わない暮らし。』(大和出版)など。
節約系主婦ミニマリスト・筆子さん(64歳)●ミニマルで快適な暮らしにするための考え方や実践法をブログ「筆子ジャーナル」で発信中。著書に『8割捨てればお金が貯まる』(宝島社)、『買わない暮らし。』(大和出版)など。

(取材・文/廣瀬亮子)

 

机と座椅子のみが置かれる、筆子さんのリセット部屋。

 

※写真はイメージです

 

節約系主婦ミニマリスト・筆子さん(64歳)●ミニマルで快適な暮らしにするための考え方や実践法をブログ「筆子ジャーナル」で発信中。著書に『8割捨てればお金が貯まる』(宝島社)、『買わない暮らし。』(大和出版)など。

 

※写真はイメージです