天皇、皇后両陛下は『全国豊かな海づくり大会』へのご臨席のため、9月16日から1泊2日の日程で北海道を訪問される。
両陛下そろっての北海道ご訪問は実に24年ぶり
水産業振興のために行われる同大会は、両陛下が特に重きを置かれているといわれる“四大行幸啓”の1つ。今年は、北海道東部に位置し、カキやサンマなどの名産品で知られる港町、厚岸町で開催される。
「両陛下そろっての北海道ご訪問は実に24年ぶりで、即位後初となります。最後に来道された'99年は小樽市を訪れ、『スキー競技会』の開会式に出席されたり、地元の養護老人ホームで高齢者や職員と交流をされたりしました。今回は海づくり大会に出席されるだけでなく、絶滅危惧動物の保護を行う釧路市内の施設なども訪問されます」(皇室ジャーナリスト)
両陛下の久しぶりの来道に、北海道では喜びの声が上がっている。
'96年、当時皇太子ご夫妻だったおふたりが『札幌芸術の森』を視察された際、立ち会った施設職員はこう振り返る。
「野外美術館を散策されていると、まるでおふたりをお迎えするかのようにキタキツネが現れたんです。それをご覧になって笑顔を浮かべていらっしゃったのが印象的で、今でもよく覚えています。
雅子さまは今と変わらず、とても気品があって、優しく凛とした雰囲気でした。今回久しぶりに両陛下おそろいで北海道へお越しになるとのこと、とてもうれしいですね」
そうした期待に応えるかのように、両陛下の気合も十分だという。
「久々の北海道ということに加え、両陛下が道東へ行かれるのは初めてのことです。おふたりとも意欲を高めていらっしゃるのではないでしょうか。北海道といえば、雅子さまは苦い思いをされたこともありますし……」(前出・皇室ジャーナリスト、以下同)
というのも、雅子さまは'17年2月に北海道札幌市で行われた『冬季アジア札幌大会』の開会式を急きょ欠席されたことがあるのだ。
「2月の札幌といえば、マイナス10度を下回るほどの厳しい寒さに見舞われます。そうした環境下で2泊3日という長い期間滞在されることは『適応障害』の療養中である雅子さまのお身体の負担になるとの判断もあり、欠席が決まったようです」
『北海道胆振東部地震』の被災地訪問を期待する声
今回雅子さまが訪問される9月の北海道は、平均気温18度前後と、最も過ごしやすい季節といえる。また、雅子さまは今年6月に1週間インドネシアを訪問されるなど、海外での長期公務もこなされた。
それもあって、厚岸町での公務だけでなく、'18年9月に発生した『北海道胆振東部地震』の被災地訪問を期待する声も上がった。
「地震発生から2か月後、当時在位中だった上皇ご夫妻は、被災者を見舞うため、最大震度7を観測した厚真町を訪問されました。また、秋篠宮ご夫妻も今年7月に同町を訪れています。
さらに、9月6日で地震発生から5年を迎えました。今回両陛下が来道するのはその10日後。“おふたりともまだ被災地を訪れていない”ことと“節目の日と近い”ということで、訪問を望む声が高まっていたようです」
そうした中、象徴天皇制に詳しい名古屋大学大学院の河西秀哉准教授は、雅子さまの被災地訪問についてこう語る。
「雅子さまもまた、今回北海道胆振東部地震の被災地を訪問したいとのお気持ちがおありだったと推察します。東日本大震災の被災地を訪問されたとき、被害に遭われた方に親身になって寄り添われるお姿が話題になりました。
雅子さまは皇室に入られて以降、さまざまなご苦労が続きました。だからこそ、苦しみの種類は違えど、困難を抱えている被災者と、より共感の姿勢で苦しみを分かち合われたのでしょう。そんな雅子さまの被災地に馳せる思いは強いと考えられます」
今回被災地へ足を運ぶ予定がない理由
しかし今回、被災地へ足を運ばれる予定はない。
その理由について心理学に詳しい東京未来大学こども心理学部長の出口保行氏はこう解説する。
「今回、公務のため来臨される厚岸町から、被災地周辺までは300km以上離れています。そのため、被害地域を見舞うとなると、もう1泊する必要が生じます。そうした状況や雅子さまの体調を鑑み、葛藤の末、ストレスになりうる行動は避けるべきと判断したのではないでしょうか」
即位から4年が過ぎた今となっても、2泊3日以上の地方公務は高いハードルとして立ちはだかる。
「雅子さまは15年以上、2泊3日以上の国内公務をこなされていません。'04年に公表され、長期療養を継続されている適応障害が大きな原因だといわれています。泊まりがけの公務が可能となっただけでも回復の兆しといえますが、宿泊日数が増えるほど、やはりストレスは大きくなります。したがって、宿泊を伴う公務ではなるべくコンパクトな日程を組んでいるのでしょう」(出口氏)
一方、雅子さまの被災地来訪を望む声は根強い。
『北海道胆振東部地震』で家が一部倒壊するなどの被害に遭ったという山内香さん(64)は、上皇ご夫妻がお見舞いのため厚真町を訪問されたときのことをこう振り返る。
「私は29年前の阪神・淡路大震災も経験していたので、お二方から“2回も大変でしたね”とお声をかけていただきました。お話ししている間、美智子さまは私の手を優しく握ってくださって……。感動で涙が止まりませんでした。震災に遭って心が参っていたので、おふたりが来てくださったことはとてもうれしかったですし、心が和らぎました」
“いつ来るかわからない地震に備えてほしい”との思いから、震災ガイドを務める山内さんは、雅子さまのご来訪は大きな意味があると話す。
「北海道胆振東部地震から5年がたって、復興の兆しが見えてきたとはいえ、心の傷はなかなか癒えるものではありません。私を含め、いまだにトラウマを抱える人は多くいます。たくさんのご苦労を抱えられてきた雅子さまがいらっしゃることで、多くの人が希望を見いだせると思います。今回でなくても、いつかいらしてほしいですね」
期待に応えるべく、2泊という高い壁を越えられる日は訪れるのだろうか─。