左から篠原涼子、宮沢りえ、後藤久美子、深津絵里

「結婚というものにこだわらず、パートナーと事実婚で子どもをもうけて、その子どもがドラマで女優デビューする。なんてうらやましい人生なのか」(神奈川県 40歳)

 こう思われているのは、後藤久美子。後藤といえば元祖『国民的美少女』で、その愛称である“ゴクミ”は'87年の『新語・流行語大賞』にも選出された。そんな彼女が30年ぶりにドラマ主演を決断した、と一部週刊誌に報じられたのは先月のこと。

 元F1ドライバーのジャン・アレジと不倫、そこから'96年に事実婚へと突き進んだ後藤。生活の拠点を海外に移し、'19年に映画『男はつらいよ お帰り寅さん』で23年ぶりに女優復帰した以外は、芸能活動からは離れていた。

 '90年代を代表する“美少女”も来年で50歳。女優でいえばベテランになる時期で、若いときには出せなかった“味”が見る者を楽しませてくれる世代だ。

 そこで今回、後藤と同世代の女優の生きざまで、誰の人生に共感し、うらやましいと思うかをアンケート調査。対象は後藤を筆頭に、篠原涼子宮沢りえ深津絵里の4人で、全国の40代から60代女性、600人が選んだ女優と、その理由とは? 芸能評論家の宝泉薫氏が、それぞれの魅力を解説しながら斬る!

圧倒的トップは…

 269票を集めて、圧倒的な強さでトップに名前が上がったのが深津絵里

「年齢が50歳に見えないし、いい年の取り方をしていると思う」(京都府 46歳)

「ドラマなどに毎クール出続けているというわけではないけど、出演している作品で目を引く演技をしているのがすごい」(東京都 47歳)

「自分自身というものを持っていて、見ていてカッコいいと思う」(大阪府 52歳)

「ドラマで演じている役がそのままの彼女なのかな、と思えるくらいに自然。あんな生き方してみたい、とうらやましく思ってしまう」(茨城県 53歳)

 と、演技力はもちろん、見た感じの自然さがうらやましいという声の中、彼女が演じている役にも共感できるという意見が多かった。

「僕は彼女がデビューしたてのとき取材したことがあって、当時の印象は“地味”のひと言(笑)。そしてすごく淡々としているんです。自分を売り込もうという欲がない。だからインタビューしていても、話の内容にメリハリがなくて面白くなかった。もしかしたら、売り出し方が事務所も本人も定まっていなかったのかもしれませんね。

 なので、彼女がドラマなどで高評価を受けて売れ出したとき、びっくりしましたね」(宝泉氏、以下同)

「結婚していない」好感度

 またプライベートに関して、

「演技力もすごいと思うけど、何よりプライベートが一切わからないという、神秘的な魅力がある」(北海道 41歳)

 なんてコメントも。この“神秘的”というキーワードについて、宝泉氏はこう話す。

本人は自身のプライベートについて、ほとんど語っていません。実際の深津絵里はどんな素顔なのかが、視聴者はわからないんです。だから演じているキャラクターが、そのまま彼女のイメージに直結しやすい。

 結局、演じているキャラというのも、彼女に演じさせたいと制作サイドが思ってオファーしたものだから、彼女のセルフプロデュース力の賜物でしょう。世間が思っているイメージは、彼女自身が呼び寄せているのだと思います

深津絵里

 プライベートといえば、深津に関しての恋愛報道は、小沢健二、堤真一などの名前が挙がったが噂レベルを除けばかなり少なめ。その中でも'06年に“本命”として報じられたスタイリストとの関係は、今も続いていて、事実婚状態ともささやかれている。

深津さんの場合、結婚していないというのが女性の好感度に影響しているのだと思います。ドラマではすごく内気な女の子とか、相手に尽くす女の子という役を演じて、視聴者は“この子の気持ち、よくわかる”と共感を生むわけです。

 でもリアルで芸能界の大物と結婚、もしくは熱愛発覚、なんてことになると、“この子も結局そっち側の人間だったのね”という話になってしまう。報じられているスタイリストがどんな人なのか実像が見えてないことと、事実婚で長い間一緒にいるといわれていることが、いい評価につながっていますよね」

 深津に続いて160票集め、2位になったのは後藤久美子

「好きになった人と経緯はどうあれ一緒になり、好きな場所で優雅に暮らしている印象」(東京都 48歳)

「美しさをこの年までキープし、悠々自適な生活を海外で送れるなんて、うらやましい以外の何物でもない」(大阪府 67歳)

「人気絶頂のときに日本を離れ、好きな人のために海外で暮らすことを選択する勇気がすごいと思います」(大阪府 52歳)

「日本人の常識から逸脱して、若くして婚姻関係なしの出産を選択。その上で美貌を保ったまま順調に年を重ねているところがうらやましい」(山形県 54歳)

ハングリー精神のなさが「異色な人」

 このように、後藤のセレブ生活をうらやむ声が大多数。宝泉氏は「深津と同じで、ガツガツして見えないことが大きい」と、こう続ける。

昔から後藤さんには、ちょっとひねている部分を感じていました。実家も裕福だし、たまたま美形に生まれたから芸能人になったけど、みたいなところがあって。たぶん、芸能界が好きというわけではないんだな、と(笑)」

 芸能界で這い上がっていこうという欲が、よくも悪くも感じられなかったという。

芸能人の中では異色な人だと思います。もともとが“上”にいる人なので、上昇志向がないんですよ。言葉を変えればハングリーではない。'80年代のアイドルの中でも、いちばんガツガツしていなかった人だと思います。

 美少女ブームを起こしたことで、周りはものすごく持ち上げてくれたし、山田洋次監督をはじめ大人たちはすごく可愛がってくれた。だからその恩にちょっと報いたほうがいいかな、くらいの感じで芸能活動をしていたように見えます」

『国民的美少女』のキャッチフレーズでデビューした当時のゴクミ。小学生のモデル時代、りえとは仲がよく、ライバル関係だった

 しかし振り返ってみると、彼女が恋に落ちたとき、相手のアレジは離婚調停の真っただ中。言ってしまえば、不倫の果ての“略奪婚”だ。現在の芸能界で、不倫という言葉はかなり強力なキラーワードとなるのだが、不思議とこの事実は今回のアンケートではスルー状態─。

「F1レーサーと恋に落ちて、スイスで生活なんてシンデレラストーリーを現実にした人だから」(兵庫県 63歳)

「まさに“わが道を行く”で幸せをつかみ、ずっと幸せに暮らしていることは、女性にとって理想の生き方ではないかと思います」(埼玉県 54歳)

 好きな人をゲットしたシンデレラストーリー、なんて言葉も飛び出した。「僕もここまで“無風”なのが不思議なんです」と、宝泉氏は首をかしげつつもこう分析する。

「時代もあるのでしょう。あと、相手がヨーロッパのカーレーサーで、カーレースに興味のない人にはどんな人かわからなかったこともよかったのかも。

 まあ本人を見ていると、批判されたらそれも仕方ない、みたいなところは感じますね。それに芸能界に執着はなく、実家もセレブな家庭だから、媚びてまで芸能界にいる必要が本人にはないんでしょうね

「逆にガツガツしていて周囲に媚びていたのは、宮沢さん」と、宝泉氏が語る宮沢りえは、94票を獲得しての第3位。

「すごく上品で、役者さんとしても一流。お互い愛し合ういい伴侶を得て、ますます美しくなっていると思う」(大阪府 52歳)

「昔はいろいろと苦しんだと思うけど、今はパートナーもお子さまもいて、仕事を余裕を持ってこなしている感じがステキです」(埼玉県 52歳)

「波瀾万丈であったけど、今は再婚して落ち着いている感じがいい」(岡山県 66歳)

波瀾万丈から生まれる“安堵”

 “リハウスの白鳥麗子”で注目を集め、人気絶頂のときに貴乃花との婚約破棄─。そこからは激ヤセ、結婚、離婚そして森田剛との再婚と、まさに波瀾万丈の人生を送ってきた。

「本人は媚びる気がなかったかもしれないけれど、お母さんの“りえママ”が媚びさせていた部分が大きかったかなと。あの母娘は2人でひとつみたいなところがあって、お母さんのコンプレックスとか、上昇志向が娘のりえさんにも重なり“2人で頑張る”といった感じになっていましたよね。

 でも、お母さんが亡くなったタイミングで“自分はこうしたい、こうなりたい”という意思が宮沢さんの中に出てきたのだと思います」

宮沢りえ

 まさに病んでいた時期の出口が、自分の意思というものが見えてきたころと宝泉氏は分析。そこで世の中の女性から“痛い存在”と思われなかったことがよかったと続ける。

「あれだけの境遇の中にいながら、今は好きな人と一緒に幸せに暮らしているということが、みなさんの共感につながっているのでしょう。

 彼女のような人生を普通の人が送ったら、言い方は悪いですけど壊れてしまいます。うらやましい、という気持ちではなく、幸せになれて本当によかったと安堵した部分が強いのだと思います」

 あんなふうに生きてみたい、ではなく、現状を見て“よかった”と胸をなでおろしたという意味が強いのかもしれない。

「カッコいい」の声が多数も4位なのは…

 そして4位は、77票で篠原涼子

「かなり年上の市村正親さんと結婚し、家庭を守りながら芸能界での仕事を続けたことはカッコいいなと思う」(香川県 47歳)

「心を持った女性で、飾らずに自然体だなと思わせる振る舞いに憧れます」(神奈川県 53歳)

「何かのインタビューで、カッコよく見えるけど実はシャイで、明るく振る舞っていることを知ったとき。また、子育てから料理など家庭内のこともちゃんとこなしている姿を見たら、やっぱりカッコいいなと」(大阪府 42歳)

 篠原のイメージとして、ほとんどの人が言葉にした“カッコいい”というキーワード。宝泉氏は、

彼女のイメージが作られたのは、元夫の市村さんの力が大きいと思います。やはり24歳年上ということで、篠原さんのことを守ってきたと思うし、同時に篠原さんもお互いが傷つかないようにプロデュースし合っているように見えます」

篠原涼子

 しかし、市村との離婚、それにまつわる韓国人タレントとの不倫疑惑でケチがついた。

「相手が若いし、韓国系のタレントで、いかにも篠原さん世代がたどりそうな恋愛ですよね(笑)。彼女の生き方が、全体的にありきたり。市村さんとの出会いも舞台での共演から惹かれたわけだし。

 でも、年の差結婚を父親に猛反対されても、それを押し切って結婚しているわけです。そんな“ゴーイング・マイウェイ”な生き方が、評価は分かれるかもしれないけれど“カッコいい”とされるんでしょう。今回のアンケートでは、彼女の最近の大きな話題がドラマでの好演などプラス要素ではなく、離婚と不倫疑惑だったことが足を引っ張り4番目に落ち着いたのだと思います

 50歳という節目の年に差しかかっている4人の女優たち。これからもそれぞれが思う生き方で、世の中の女性の耳目を集めていくのだろう。


取材・文/蒔田 稔

'90年代、すったもんだを繰り広げた宮沢りえ。ゴルフ場での激やせ姿は当時の週刊誌がこぞって取り上げた

 

宮沢りえ

 

激ヤセと言われていたころの宮沢りえ

 

“りえママ”こと光子さんは、いつもりえの側にいた

 

'93年ドラマ『悪魔のKISS』で常盤貴子、奥山佳恵とともに主演した深津絵里。このときの役も質素でおとなしい朝倉幸子を演じた

 

'95年、21歳でアレジと交際を始めて翌年には渡仏。事実婚を開始した後藤久美子

 

'94年には小室哲哉のプロデュースで『恋しさと せつなさと 心強さと』でヒットを記録した篠原涼子。『紅白』にも出場した