あのロックバンドが帰ってくる─。
6月25日にデビュー45周年を迎えたサザンオールスターズ。9月27日から10月1日にかけての4日間、神奈川県にある茅ヶ崎公園野球場にて『茅ヶ崎ライブ2023』を開催する。
茅ヶ崎は、ボーカルの桑田佳祐が生まれ育った故郷。'78年に発表したデビュー曲『勝手にシンドバッド』は《砂まじりの茅ヶ崎 人も波も消えて》という歌詞から始まるなど、さまざまな楽曲で茅ヶ崎の風景が歌われており、地元に対する思い入れは強い。
今も変わらぬ“地元愛”
「今でも地元の同級生の家を訪れることがあるみたい。中学時代の友人の家族が亡くなったときでも、お葬式にいらっしゃるそうですよ。サーフィンも好きで、よく茅ヶ崎の海で見かけました。ただ、ファンにバレて人が集まってしまったことがあったようで、最近は別の海に通っているとか。忙しいだろうに、あんな大スターが地元を大切にしてくれているというのは、やっぱりうれしいですね」(茅ヶ崎の住民)
'13年のデビュー35周年に茅ヶ崎で開催されたライブから、10年ぶり3度目の“凱旋”。ファンや地元のボルテージは、すでに最高潮に達している。
「茅ヶ崎はサザンにとって大切な故郷。ファンもそれをわかっているので、茅ヶ崎でライブをやってくれると知ったときは会社を休んででも行こうと。ただ、4日間開催されるとはいえ、アリーナやスタジアムに比べて大きい会場ではありません。それにサザンファンなら誰もが見たいライブですから、チケットは相当な倍率だったと思います。僕は抽選で外れてしまいました………」(ファンの男性)
商店街オリジナルグッズは即完売
茅ヶ崎駅前には『サザン通り商店街』があり、凱旋ライブにちなんだ商品が売られ、“サザン神社”にファンが集うなどの盛り上がりを見せている。聖地巡礼で訪れる人も多く、今回のライブにそれぞれ力が入っているようだ。
「商店街では45周年を祝うオリジナルのうちわとTシャツをそれぞれ1000枚ほど作って販売しましたが、すぐに完売しました。わざわざ遠方から来てくださるファンも多くて“チケットは外れたけど何か記念になるものが欲しくて”という人も。うちわはライブに合わせてさらに入荷する予定ですが、フリマサイトでの高額転売も出ていて、それはやめてほしいですね」(商店街の店主)
サザン神社はファンによる寄せ書きを掲示。通常は3か月に1度の頻度で、畳1畳弱の大きさの用紙を交換しているとのことだが、茅ヶ崎ライブの開催が発表されてからは連日ファンが殺到。毎月新たな用紙に換えては、ファンがサザンとライブへの思いを綴りに訪れているという。
チケットを手に入れられなかったファンのために、9月30日と10月1日の公演は全国230以上の映画館でライブ・ビューイングも開催。サザンが絶大な人気を誇る理由とは、いったい何なのだろうか。
「サザンは“日本語ロック”の先駆者的な存在。デビュー前の日本の音楽界では、日本語ではロックは歌えないというのが通説で、そんな既成概念を『勝手にシンドバッド』で壊したんです。サザンがいたから今のJポップがあるといっても過言ではありません」(音楽誌ライター、以下同)
45周年を迎えても、その人気に陰りすら見えないのは─。
「メンバーひとりひとりの技術の高さもそうですが、やはり桑田さんのカリスマ性にあるでしょう。独特な表現の歌詞を、桑田さんの歌声で聴くとしっくりきてしまう。サザンの楽曲はそれぞれテーマがバラバラで、“ロックは何を歌ってもいい”という自由さも感じます。先駆者でありながら、凝り固まることのないスタイルが、ファンを魅了し続けているのかなと」
批判ではない「風刺の矜持」
サザンといえば恋愛についての楽曲を思い浮かべる人が多いかもしれないが、もちろんそれだけではない。
9月18日にリリースされた新曲『Relay〜杜の詩』は、東京・新宿区の明治神宮外苑の再開発について歌っている。この再開発では神宮球場の改築のほか、高層ビルの建設が予定されており、大規模な樹木伐採と移植が実施されるとのこと。文化人や地域住民を中心に“環境破壊”という声が強まっていた中、その先頭に立っていた1人が、今年3月に亡くなった坂本龍一さんだった。
「坂本さんは小池百合子都知事に手紙を送るなど、計画の見直しのために積極的に活動していました。桑田さんはその思いを知って、幅広い世代が再開発について考えるきっかけにしてほしい、という願いを込めて曲にしたそうです。神宮外苑のすぐ近くには、サザンが長年レコーディングに使用しているスタジオもありますから、いろいろと思うところがあったのでしょう」(スポーツ紙記者)
サザンはこれまでも、社会への“メッセージ”を込めた楽曲を数多く発表してきた。
「ブラック企業やネット社会、沖縄の米軍基地問題、日本政治の混乱など、そのときどきで社会問題となっていた事象がテーマである歌詞も少なくありません。しかし、それらは批判ではなくあくまでも“風刺”。良しあしを断ずるのではなく、尖った表現方法で社会が抱えている違和感を歌にしています」(前出・音楽誌ライター、以下同)
『文藝春秋』'18年10月号のインタビューで、桑田は自身の“風刺の矜持”について、
《世の中のタブーめいたことを、むしろ積極的に扱っていきたいとも思います》
《きつい風刺をさらりとできるくらい、常に自由でなくちゃいけません》
と語っていた。
「見て見ぬフリをしないスタンスは、デビュー当時からブレていません。だからこそ、ファンは安心してサザンを追い続けられるのです」
この先もずっと、四六時中変わらぬサザンでいて!!