「不調を抱えた3万人以上の患者さんを診てきましたが、その9割が通常より腰のカーブが強い『バナナ腰』でした」
そう教えてくれたのは、腰痛に詳しいYouTuber整体師の「とも先生」。
骨盤が傾くことで「バナナ腰」に!
立位で横から見たとき、骨盤は地面に対して少しだけ前傾しているのが正常な状態。これが前や後ろに傾きすぎていると姿勢を保つために腰が反ってしまう。これをとも先生は「バナナ腰」と呼ぶ。
「女性に多いのですが、骨盤が前に傾いているとお尻が後ろにキュッと突き出た姿勢になり、腰にモンキーバナナのような小さいカーブができて下腹がポッコリしてしまう。
反対に、骨盤が後ろに傾いている場合は、猫背になるので身体全体で反り、一般的に出回っている高地栽培バナナのような大きめのカーブが腰にできます」(とも先生、以下同)
身体は骨盤のアンバランスさをカバーしようと、さまざまな部分に負担がかかる。
「腰や首、肩の痛みはもちろん、血流の悪さから冷えたりむくんだり、代謝が悪くなって太りやすくなったり。若いうちはまだやり過ごせていても、年齢が上がって症状が進むと、坐骨神経痛や脊柱管狭窄(きょうさく)症などを引き起こすことも。
バナナ腰を改善したら治ったという方も多い。だから私は『バナナ腰は万病のもと』とお伝えしています」
骨盤が傾いてバナナ腰になってしまう原因は、現代人の生活スタイルにあるという。
「長時間のデスクワークやスマホを見るときの前かがみの姿勢、ハイヒールによる無理な姿勢、慢性的な運動不足などが影響します。関節の可動域が狭くなったり、筋肉が硬くなったりして、身体のバランスが崩れ、骨盤がゆがんでいく。
特に女性の場合は体幹の筋肉が弱いため、骨盤をまっすぐ立てた姿勢を維持しづらく、よけいにバナナ腰になりやすいんです」
気になる人はチェックリストで自分がバナナ腰なのかを調べてみよう。
簡単なストレッチで不調が劇的改善!
あらゆる不調やお悩みのもとであるバナナ腰だが、自分で簡単に直すことも可能だ。
「ストレッチで腰まわりの筋肉をゆるめるのがポイント。骨盤の傾きを正すのが目的なので、ゆがみ方に関係なく同じストレッチでOKです」
今回はバナナ腰改善に効果のあるストレッチを2種類教えてもらった。どちらもかかる時間は1分ほど。安全にできるストレッチで、時間がない人や運動が苦手な人にもぴったりだ。
治療を受けている人は実践前に必ず医師に相談を。
「これらは硬くなった関節や筋肉をほぐし、骨盤の傾きを正していくものです。身体の使い方は長年のクセが染みついている場合が多く、1度やっただけではバナナ腰は直りません。毎日コツコツ続けることが大切です」
どの時間帯にやってもいいが、「夜、寝る前」などと決めておくと習慣化しやすい。特に寝る前に身体がゆるむと寝つきもよくなるので、おすすめだと話す。
「意気込んで無理に伸ばしたり、時間を長くかけすぎるのはNG。筋肉は伸ばしすぎると切れないように縮もうとする力が働き、逆に硬くなってしまうからです。
“痛気持ちいい”程度で、長くても片側30秒までにとどめて。『年齢のせい』と思っていた痛みや不調も、続けるうちに消えていくでしょう」
お金もかからず道具も不要。今この瞬間からできる「バナナ腰改善ストレッチ」。未来の健康のためにも、さっそく始めてみてほしい。
バナナ腰セルフチェック
次のチェック項目で1つでも当てはまれば、バナナ腰の可能性あり。
□あおむけだと寝にくい
□お尻が垂れ下がってきた
□猫背や巻き肩、ストレートネックである
□下腹が出ている
□やせにくくなってきた
□冷え性・むくみが気になる
□前ももが張って見える
□立ちっぱなしがつらく、座るとラク
意外と簡単!「バナナ腰」改善ストレッチ
お尻の筋肉と股関節をゆるめる“4の字ストレッチ”
バナナ腰の人は股関節の外側の筋肉が硬い場合が多い。股関節周辺をほぐして腰の負担を軽減。
1.脚を曲げて
椅子に腰かけ、4の字を作るように片方の脚の上に反対の脚を乗せる。乗せたほうの脚のひざに手を置き、床方向に押す。
2.おへそから前に身体を倒す
背筋をまっすぐに保ち、股関節から折るようなイメージで上体を前に倒していく。股関節の外側が伸びているのを感じたところで止める。
3.身体を真横に倒す
そのまま、乗せた脚と反対側に身体を傾けて30秒間キープ。脚を組み替えて反対側も同様に行う。
前ももを伸ばし骨盤のゆがみを改善“横向きストレッチ”
前ももの筋肉が硬いと、骨盤が前に引っ張られてバナナ腰に。前ももをやわらかくすることが大事。
1.横向きになり床側の脚を曲げる
床に横向きに寝て床側の腕を枕にする。床側の脚のひざを直角に曲げる。
2.上の脚を持ち後ろに引く
上側の足首を手で持ち、股関節を支点にして後ろに引く。太ももの前が伸びているのを感じながら30秒間キープ。このとき顔を上げず、目線はおへそあたりを見る。反対側も同様に行う。
(取材・文/遊佐信子 イラスト/二階堂ちはる)