在日三世として東京に生まれ、人気シンガー、クリスタル・ケイ(37)を女手ひとつで育てたシンシア(60)。米軍横須賀基地勤務のアメリカ人と結婚し、29歳で別居。不倫相手との関係はすでに6年ぐらいがたっていた。
不倫男の常套句
「『妻とは別れることになっている』とサトシは言う。それは不倫男の常套句で、私もいつしかそこに期待も疑問も抱かなくなっていました。ところがある夜のこと、サトシが突然やって来て「妻が別れてくれた」と切り出した。
『だから君と結婚したい』と言い、手には婚姻届を持っています。私のほうはようやく夫との裁判が終わり、無事娘の親権を手に入れたところでした。晴れて独身の身とはなったけど、すでに私の中でサトシに対する熱は冷めていた。それでも彼を断ち切れず、ずるずる関係が続いていきました。
サトシはジェラシーがすごかった。暴力もたびたび振るわれています。飲みの席で彼の友人と話をしたら、それが気に入らなかったらしく、帰りがけゴミために思い切り突き飛ばされたこともありました。けれど私もやられてばかりではありません。一度ゴルフのドライバーで殴り返したら、それ以来手を上げてくることはなくなった。
『僕は子どものころ、言うことをきかないと親から躾の意味で殴られた。でも君は殴っても言うことをきかないから殴るのはやめた』というのがサトシの言い分です」
長年、私を苦しめた不倫相手との結末
極真空手で心身を鍛え、“もうこの男とは別れよう”と決めた。ついに長い不倫関係を清算するときがきた。
「サトシは浮気もしょっちゅうでした。ちょうどGPSが出はじめたころ、これを切り札に使おうと考えた。GPSを車のトランクに仕込み、行動を追跡することにした。
サトシは『仕事に行く』と言って私の家を出ると、なぜか車は駅前に立ち寄り、職場とは違う方向へ向かっていきました。どうやら駅で誰かをピックアップしたらしく、そのまま車は東京を離れ、135号線を南下していきます。
そこで私もピンときた。湯河原に彼のご贔屓の宿があり、私も泊まったことがありました。きっと女を連れていくつもりなのでしょう。
彼の後を追い、旅館に乗り込みました。するとフロントから連絡がいったのか、部屋に彼の姿はなく、女性がぽつんと座っていた。サトシはそういう男でした。何やかやと煙に巻いてしまう」
関係を断ち切るには、確たる証拠を手に入れるしかない。浮気の尻尾をつかもうと、興信所に調査を依頼する。
「サトシが女のマンションにいると、興信所から深夜に連絡がありました。今なら現場を押さえられると言われ、興信所の調査員とマンションになだれ込み、そこでサトシを捕まえた。相手は湯河原のときとはまた違う女性でした。サトシに『私たち2人に土下座しろ!』と言い放つと、彼も観念したのか、素直に従っていた。女性は私の存在を知らなかったようです。
『この男はこういう人間だから。あなたも別れて全部放り出してしまいなさい』と彼女に言いました。
それがサトシとの最後でした。その後も電話が何度もかかってきたけれど、もう私は出なかった。結局サトシとは10年間続きました。娘もサトシのことは知っています。
私を苦しめた男という印象があるらしく、別れたときは諸手を挙げて喜んでくれた。
でも今思うと、サトシなどまだ可愛いものでした。そこからどんどん悪い男と付き合うようになっていきました」(次回へ続く)
<取材・文/小野寺悦子>