「1999年7の月に、恐怖の大王が来る!」。今から50年前に発売された書の言葉に、大人も子どもも震撼させられたものでした。その後も、未確認生物や超能力、心霊情報などは次々に出現。今も心に響いているオカルト・都市伝説を1000人にアンケート。この結果、「信じるも信じないも、あなたしだいです……」。
忘れられないオカルト 1位は
日本のオカルトブームの発端ともいわれる『ノストラダムスの大予言』が発売されてから、今年でちょうど50年! 記念すべき年ということで、大人世代(45歳〜65歳の男女1000人)を対象に、「忘れられないオカルト」を調査。ランキング結果をもとに、オカルト情報誌『ムー』編集長の三上丈晴さんに話を聞いた。
栄えある1位に輝いたのは「こっくりさん」。コインに数人で指を乗せ、降りてきた神様や霊のお告げを聞く……というものだが、1970年代、小中学生を中心に大流行。あまりの盛り上がりに、こっくりさん禁止令を出した学校もあったほど。
「いわゆる実践型のオカルトですね。放課後に友達と集まって『◯◯くんの好きな人は誰ですか?』なんて聞いたり。そんな甘酸っぱい思い出もあっての1位ではないでしょうか」(三上さん、以下同)
アンケートでも「友達とやって本当に動いて怖かった」(46歳・女性)など、経験談が多く寄せられた。なかには「入院した子が出た」といった物騒なエピソードも。
「こっくりさんはもともとヨーロッパ発祥の降霊術です。ほとんどは何事もなく終わりますが、たまに“ガチなやつ”を召喚してしまうケースもあります。何事もなく終えられたみなさんは本当にラッキーですよ」
僅差で2位になったのは「口裂け女」。「お巡りさんに捕まえてもらうようにお願いした」(58歳・女性)、「怖くて夜も眠れなかった」(56歳・女性)と、恐怖の記憶として刷り込まれている人が多数。
「整形手術に失敗して口が裂けたというストーリーは、本当にあるんじゃないかと思わせます。真相としてはそういった事件の記録はありません。岐阜県で噂の原型が生まれたあとメディアによって拡散されたといわれています」
続く3位は「ノストラダムスの大予言」。「1999年7の月に恐怖の大王が来る」という予言に一部の人々は大混乱。「どうせ人類滅亡するならと車を買った」(59歳・男性)、「予言を信じた同僚が仕事を辞めた」(49歳・男性)など、影響が実生活に及んだケースも。
オカルトブームに拍車をかけた本
ブームのきっかけは、言わずと知れた1973年に発売された五島勉の『ノストラダムスの大予言』という本。ただ、ノストラダムスが書いた原文にはどこにも『人類滅亡』という言葉はない。それどころか1999年以降も予言は続く。
「要するに五島勉さんが誇張して書いたものだったのですが、結果的に予言にさまざまな解釈が生まれるようになりました。『あの予言は〜』と一家言持つ人が大量発生し、オカルトブームに拍車がかかったというわけです」
4位は「ユリ・ゲラー」。1974年、日本テレビの番組でスプーン曲げを披露し、視聴者の度肝を抜いた。「自分でもスプーン曲げをやってみた」(60歳・男性)という声が多く集まる一方で「今ではトリックだと気づいている」と超能力に対し懐疑的な意見も。しかし三上さんは「彼は本物」とキッパリ。
「ユリ・ゲラーを日本に連れてきたのは、UFO・超常現象研究家の矢追純一さん。一応彼が仕掛け人ではありますが、ユリ・ゲラー自身の力は本物。超能力で油田を掘り当てて今は大金持ちですよ」
5位にランクインしたのは「徳川埋蔵金」。1990年、バラエティー番組『ギミア・ぶれいく』(TBS系)で、当時人気コピーライターだった糸井重里が中心になって行った埋蔵金発掘プロジェクトは、視聴率20%超えの大人気企画となった。
「自分にもチャンスがあるのではと思ってしまう」(59歳・男性)と、今なお埋蔵金ロマンに夢をはせる人も。ところが三上さんによると「残念ですがもう掘り起こされています」とのこと。
「ただ、世に出ていないだけで埋蔵金をめぐるいざこざはあり、消されたのは1人2人じゃないと思います。関わらないほうが身のためです」
6位は、1980年代に希代の霊能者として人気を博した「宜保愛子」。「嘘くさい霊能者が多い中で、宜保さんだけは本物だと思えた」(52歳・男性)など、宜保さんの霊能力に誰もが夢中になった。
ネッシーはいる!
宜保さんの霊視は、「シャルル・ボネ症候群が関係しているのではといわれています」と三上さん。シャルル・ボネ症候群とは、視力が低下した人が実際には存在しないものが見えるというもの。宜保さんは左目の視力がほとんどなかったという。
「左目に霊視相手の情報を受信し、映像化したものを視ていたのではと思います。実際、霊能者で左目の視力が低いという方は多いです」
7位は「ネッシー」。「インチキだとしてもいてほしい」(51歳・女性)と存在を疑うコメントが多く寄せられたが、三上さんいわく「ネッシーはいる」。
「これまでネッシーは首長竜の生き残りといわれてきましたが、実はウナギの一種らしい。私が聞いた話だと捕獲されていて、アメリカの諜報機関で飼育されているそうです」
8位は「心霊写真」。「大学で心霊研究会に入り、心霊写真を撮影するための旅行をした」(64歳・男性)という熱心なファンも。
「1974年に刊行された『恐怖の心霊写真集』という本が心霊写真ブームのきっかけ。その後続いたテレビの特番の心霊写真特集も人気でした。でもほとんどは作り物。本物はやばいですよ。怨念の強い霊は物質化するので、写真にはっきり写り込みます。見ないほうがいいです」
9位は日本を代表するUMA(「謎の未確認動物」を意味する和製英語の略)「ツチノコ」。「いれば楽しい」(58歳・女性)などのコメントが集まったが、三上さんによると、ネッシー同様、ツチノコもすでに見つかっているという。この事実が大々的に報道されないのには理由がある。
映画化もされた恐怖の女の子
「普通、新種の生き物を見つけたら大学の研究施設で調べますよね。でもUMAの場合、『責任が持てない』と言って断られてしまうんです。下手なことを言って業績に傷をつけたくないですからね。よくある話ですよ」
10位にランクインしたのは「トイレの花子さん」。女子トイレの左から3番目のトイレに現れるというのはあまりにも有名。
この噂が原因で「一人でトイレに行けなかった」(45歳・女性)、「学校のトイレが怖くなった」(61歳・女性)など、トイレにトラウマを抱える人が続出した。トイレの花子さんに関しては、今後その存在が危ぶまれる可能性もあると三上さん。
「都市伝説ができた当時は和式便所の時代ですが、近年、学校のトイレは洋式化しています。洋式トイレにも花子さんは出るのか?という疑問はありますよね。また、ジェンダーレスのトイレが生まれた現代において、“女子トイレ限定”というくくりがいつまで残るのかというのも気になるところです」
令和になり、オカルト&都市伝説もアップデートされるのかも……。
三上丈晴 『月刊ムー』編集長 オカルト雑誌『ムー』の5代目編集長。2021年6月24日より福島市の「国際未確認飛行物体研究所」所長に就任。著書に『オカルト編集王 月刊「ムー」編集長のあやしい仕事術』(学研プラス)がある。