サザンオールスターズがデビュー45周年を迎えている。
7月から9月にかけては3か月連続で新曲をリリース。また、桑田佳祐の故郷・茅ケ崎(神奈川県)でのライブ開催など、ファンサービスがめじろ押しだ。
が、ファン以外の人にとっては、え、そうなの?という感じだろう。それこそ、サザンはデビュー3年目に半年で5枚のシングルを出し、話題になったが、今回の連続リリースはそうでもない。茅ケ崎ライブについては、ファンではない地元住民から騒音や混雑、ゴミ収集時間の変更などをめぐる不満の声があることも報じられた。
明治神宮外苑再開発に異議
実際、45年もやっていればファンも高齢化するし、勢いもなくなる。
昭和後期から平成にかけてヒット曲を連発したサザンも、令和に入ってからは目立った活躍はなく、若者にとっては過去の人気バンドという印象かもしれない。いや、サザンに新しさを感じてきた世代にとっても、今ではもっぱら懐かしさというか、郷愁をもたらす存在なのではないか。
そんな「郷愁」をいっそう感じさせるニュースが伝わってきた。連続リリースの3作目『Relay~杜の詩』が明治神宮外苑再開発を批判したものだとして物議を醸したのだ。
歌詞のなかには「麗しいオアシス」が「アスファルト・ジャングル」に、とか「未来の都市」が「空を塞いで」といった表現がある。桑田はこの界隈にある青山学院大の出身で、思い出の地の光景が変わるのが寂しくもあるのだろう。
当然、再開発反対派からは喝采の声が湧いたものの、その一方で《明治外苑に懺悔してほしい…桑田佳祐の歌詞が生む「誤解と偏見」~》(みんかぶマガジン)というネット記事も飛び出した。そこには、この地の象徴というべきイチョウ並木が移植されて緑地面積がむしろ増えることなどから日本文化や地球環境にもプラスであることが記され《オアシスを結果的にぶっ壊してしまう妨害活動をやめてほしい》と結ばれている。
「目立ちたがり屋の芸人」
たしかに、令和の都市開発思想は昭和の高度経済成長期のそれとは違う。桑田は自分が生まれ育った時代のような、自然破壊に直結する開発をイメージして、いわば昭和のオジサン感覚でこの曲を作ったのかもしれない。
ただ、その姿勢には別の懐かしさも感じられる。彼はもともと、こういう人なんだよなという懐かしさだ。
1978年『ザ・ベストテン』(TBS系)に初登場した際、
「ただの目立ちたがり屋の芸人でぇーす」
と、自己紹介。
その4年後『NHK紅白歌合戦』では、三波春夫のコスプレで「受信料を払いましょう」と叫び、一部視聴者のひんしゅくを買った。また、'94年にはソロアルバムの中で売れたミュージシャンの現実を戯画化する曲を書き、長渕剛とケンカするハメに。ブレイク時の「芸人」宣言を裏切ることなく、音楽界のビートたけしみたいなパフォーマンスも繰り広げていったわけだ。
しかし、たけしが老いたように桑田も年をとった。若手が大御所をいじったり、同世代のライバルをネタにするのはそれなりに面白いが、今回はそういうものではない。本人が「若い世代にも考えるきっかけになれば」と語っているように、昔はよかった的な郷愁を啓発にすり変えているような構図にも見える。
もちろん、それは誰にでも訪れる変化だ。そこを自覚して自分で皮肉るような曲も、彼には期待してしまうのだが─。
ほうせん・かおる アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。