日本が強豪・南アフリカを制し、“世紀の番狂わせ”といわれた'15年大会から8年─。着実に力をつけた“桜の戦士”たちの戦いが佳境を迎えている。
日本は予選プール1戦目のチリには快勝、2戦目のイングランドには12―34で敗れたものの、強豪といわれるチームと互角に戦えるまで成長したことは、世界各国から称賛を受けている。ベスト8入りも夢ではないといわれている彼らだが、そのお金事情はキツいようで……。スポーツ誌ライターが解説する。
日本ラグビー協会からの“日当”
「代表に招集されると、候補選手も含めてその間は所属チームでの活動ができなくなります。代表合宿では連日ハードなフィジカルトレーニングをこなして、それゆえにケガをしてしまう選手も多い。さらに代表選手から外れる可能性まである。そんな彼らに1日で出される手当の金額は1万円なんです。ちなみに先日、日本が敗れたイングランドは1試合当たり約350万円が与えられています」
日本代表のキャプテン・姫野和樹選手も自身初の著書『姫野ノート』でその日当について言及している。
《候補も含めて代表選手として活動すると、日本ラグビー協会側から日数分の“日当”が支給されるのだが、少し前まで、その額は「1日3000円」だった。少しずつ見直され、最近は1万円程度にまで増えたが、それでも、単純にお金だけで考えれば、引越し作業のアルバイトでもしたほうがずっと割りがいい》
南アフリカを下した'15年大会の彼らの日当はなんと3000円だったのだ。
どれだけ有名な選手でも年俸は2億円
前出のスポーツ誌ライターは、
「何十億円と年俸を稼ぐサッカーや野球選手に比べて、ラグビーはどんなに有名な選手でも年俸は2億円いけばいいほうなんです」
と、そもそもの年俸自体が安いスポーツだという。
ラグビー選手たちは常に命の危険にもさらされている。試合中に脳振とうを起こしたり、頸椎損傷で選手生命が絶たれるどころか、日常生活を送ることもままならない元選手も数多く存在する。そんな彼らに1万円は安すぎるのではないだろうか。
「姫野選手も著書で“ラグビーは自己犠牲のメンタリティーであり、文化だ”とおっしゃっていますけど、まさにそうなんです。ラグビーは“ジェントルマンのスポーツ”と世界中で呼ばれています。
人間形成の考えが基本にある。自身の心身を鍛え、相手を重んじる精神からくるスポーツでもあり、チームメート・対戦相手をリスペクトして初めて成り立つスポーツなんです。人格者が多いといわれているスポーツ界隈でも、ラグビー選手の性格の良さは圧倒的です」(前出のライター、以下同)
さらに日本代表の精神は開催国・フランスでも高い評価を得ているという。
「日本代表が着ているユニホームについてラグビーW杯公式Xが《日本チームが敬意を素晴らしい形で見せる 日本がラグビーW杯のホスト国フランスに敬意を表し、試合用ユニホームの前身頃にフランスのシンボルであるフルール・ド・リスを添えた》と紹介したんです。日本人の礼儀正しさ、開催国に対するリスペクトが高く評価され、《日本人を嫌いになることは絶対にない》という現地メディアの報道などもあります」
9月29日未明にはサモア戦が控えている。桜のエンブレムを胸に、誇り高き戦士たちのプレーを応援したい!